最終警告
ちょっと待った!
この先はCrysisシリーズの核心、ネタバレのフルコースです。
シリーズ全作(1, Warhead, 2, 3)はもちろん、コミックや小説の結末まで、知りうる限りの情報を時系列でぶちまけます。
キャラクターの生死、衝撃の展開、隠された設定…全部です。
もしあなたが「自分の手でナノスーツの限界を試したい!」「結末は自分の目で確かめる派!」という純粋培養ゲーマーなら、今すぐブラウザバック推奨! でも、「もう全部知りたい!」「考察どんとこい!」という覚悟完了済みの猛者なら…ようこそ。
深淵への扉は開かれました。
さあ、一緒に飛び込みましょう!
ねぇ、覚えてます? あの、PCが悲鳴を上げるほどの超絶グラフィック。
身に纏えば超人になれる夢の(あるいは悪夢の)テクノロジー「ナノスーツ」。
南国の島で出会った、言葉の通じない恐怖。
そして、廃墟と化したニューヨークで響いた、英雄の孤独な戦いの旋律を。
Crysisシリーズは、ただドンパチ撃ち合うだけのFPSじゃなかった。
それは、人類が手にした過ぎた力と、星の海からやってきた古き存在、そして私たち自身の内なる欲望と対峙する、数十年にわたる壮大すぎるSF叙事詩なんです。
プロフェットの背負った宿命、アルカトラズの儚い一瞬、サイコの人間臭い魂の叫び… 思い出すだけで、ちょっと胸が熱くなりますよね。
「Crysisの物語、AからZまで、全部知りたい!」
「時系列がごっちゃで…結局どう繋がってるの?」
「プロフェットって結局どうなった? ノーマッドは生きてるって本当?」
「ナノスーツとかCephとか、設定が難しくて…もっと分かりやすく!」
「ファン考察、大好き! もっとディープな話が聞きたい!」
そんな、Crysis愛に溢れる(あるいはこれから溢れさせたい)あなたのための、これが決定版ストーリー解説。
初代『Crysis』の熱帯雨林サバイバルから、『Warhead』のサイコ兄貴視点、『Crysis 2』のコンクリートジャングルでの絶望と再生、そして『Crysis 3』の緑に覆われた未来での最終決戦まで。
ゲーム本編だけじゃ語りきれない、公式コミックや小説で明かされた「あの時、裏ではこんなことが…」的な補完情報も全部盛り!
キャラクターたちの詳細すぎる運命、ナノスーツとCephの「そこまで説明いる?」ってくらいの詳細設定、CELLという組織の成り立ちと崩壊、そしてファンの間で「ああでもない、こうでもない」と夜通し語り合える未解決の謎と、私なりの(ちょっと斜め上からの?)考察まで無駄なく、熱量マシマシでお届けします。
たぶん、読み終わる頃には通勤電車一周分くらい時間が経ってるかも?(笑)
これは単なる情報の羅列じゃありません。
Crysisという名の壮大な映画を、最初から最後まで、監督コメンタリー付きで観るような体験を目指しました。
あなたの記憶のナノスーツを再起動させ、物語の核心へと再びダイブする準備はいいですか?
それでは、始めましょう。
Crysisサーガの真実、その圧倒的な光と、底なしの闇の中へ。
レッツゴー!
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星のささやき、シベリアの凍土、そしてスーツの鼓動第1章:全ての始まり
今、我々が語ろうとしているCrysisの物語。
その激しい銃声が鳴り響くずっと前、人類がまだ地球の支配者気取りでいられた、あるいはそれ以前の、気の遠くなるような太古の昔に、全ての種は蒔かれていたんです。
そして、20世紀初頭、文明の光がようやく届き始めたシベリアの永久凍土の下で、運命の歯車は、誰にも気づかれずに、ゆっくりと、しかし確実に回り始めていました。
1-1. 6500万年前(推定):星辰より飛来せしもの、「Ceph」 - 招かれざる客か、それとも大家さん?
Crysisシリーズにおける、我々のちっぽけな常識を粉砕してくれる根源的な異星知性体、「Ceph(セフ)」。
あの、なんとも言えない、イカと機械が融合したような(失礼?)デザインの彼ら。
実は「Ceph」という名前も、我々人類(というか開発スタッフさん)が、頭足類(Cephalopod)に似てるからって付けた仮の名前に過ぎません。
彼らが自らを何と呼び、何を考えているのか…それは、物語が終わった今でも、完全には解き明かされていません。
彼らの故郷は、この天の川銀河ですらない、遥か彼方のM33銀河(さんかく座銀河)にあるとされています。
想像もつかない時間をかけて自らの星系を統一し、恒星間航行技術を手に入れた超々古代文明。
彼らは宇宙という広大な庭に「種」を蒔くように、あるいは不動産開発業者のように(?)、様々な惑星に調査船を送り込み、環境を調べ、時には自分たちの都合の良いように星ごと作り変える(テラフォーミング)力を持っていたようです。
なんだか、スケールが大きすぎて、もうよく分かりませんね(笑)。
で、ここからがSF好きにはたまらない話。
公式設定によると、約6500万年前。
そう、あの恐竜たちが我が世の春を謳歌していた白亜紀の終わりに、地球に巨大な何かが衝突(あるいは飛来)し、気候変動を引き起こして大絶滅が起きた…という説がありますよね?
Crysisの世界では、その「何か」が、実はCephの先遣隊の船だったかもしれない、と示唆されているんです。
もしそうだとしたら、我々哺乳類が地球の新たな主役になれたのは、ある意味、彼らのおかげ…ってことになるんでしょうか? なんとも皮肉な話です。
真偽はともかく、確かなのは、太古の昔にCephの一部が地球に到達し、その存在を巧みに隠しながら、地殻の奥深くに潜んで「休眠」に入ったということ。
でも、ただ寝ていたわけじゃない。
彼らは数千万年、数百万年という、気が遠くなるようなスパンで定期的に目覚めては、地球上の生命がどう進化していくのかを、まるで研究者がシャーレを覗き込むように、じっくりと観察し、そのデータをせっせと母星に送信し続けていたらしいのです。
まさに、超長期的なフィールドワーク。
2020年のリンシャン島で大騒動の中心となる、あの火山に偽装された巨大構造物。
あれこそが、約200万年前に設置された、彼らの観測基地兼、おそらくは休眠施設だったんですね。
我々人類は、自分たちが地球の主役だなんて思っていたけれど、実は遥か昔から、この星の本当の「大家さん」に、一挙手一投足を見つめられていたのかもしれません。
なんだか、背筋がゾクッとしませんか?
1-2. 1908年-1919年:ツングースカの謎、そして百年の計の胎動
時は流れて20世紀初頭。
人類が蒸気機関や電気を手に入れ、世界が急速に変わり始めた時代。
1908年、ロシア帝国領、シベリアのツングースカ地方で、後に「ツングースカ大爆発」と呼ばれる謎の現象が発生します。
空中で起こったとされるその爆発は、広島型原爆の数百倍とも言われる凄まじいエネルギーを放出し、広大な森林を薙ぎ倒しました。
原因はいまだに確定していませんが(隕石説が有力ですが)、Crysisの世界では、この事件にもCephが関与していた可能性が濃厚に示唆されています。
彼らの船の事故だったのか、それとも何かの実験だったのか…?
この謎めいた事件から11年後の1919年。
若き日の、後の巨大企業創設者となるジェイコブ・ハーグリーヴは、単なる好奇心からではなく、そこに人類の未来を変える何かがあると直感していました。
彼は、後に科学界の重鎮となる若き日のカール・エルンスト・ラッシュ、そして資金提供者でもあった友人ウォルター・グールドらと共に、危険を顧みず、私財を投じて極秘の調査探検隊を組織。
人跡未踏のシベリアの奥地、ツングースカ爆心地へと足を踏み入れます。
彼らが永久凍土の下から掘り出したものは、当時の地球上のいかなる文明の産物でもない、異質で、有機的で、そして計り知れない潜在エネルギーを秘めた、未知のテクノロジーの破片でした。
そう、Cephの遺物です。
彼らは、伝説や噂ではなく、現実の物として、異星知性体の痕跡に触れてしまったのです。
しかし、この禁断の知識には、大きな代償が伴いました。
探検は想像を絶する困難に見舞われ、多くの隊員が極寒や、あるいは遺物が発する未知の力によって命を落としました。
最終的に、奇跡的に生還できたのは、ハーグリーヴ、ラッシュ、グールドのわずか3名だけでした。
この時、ハーグリーヴが負傷した仲間二人を背負い、超人的な体力と精神力で雪原を踏破したという逸話は、単なる美談ではないのかもしれません。
Cephテクノロジーとの直接的な接触が、彼の肉体に恒久的な変化…強化、あるいは汚染…を引き起こした可能性は、後の彼の異常なまでの長寿を考えると、非常に高いと言えるでしょう。
生還した彼らは、二つの重大な事実を認識しました。
一つは、Cephという存在が単なる過去の遺物ではなく、今なお活動しうる、そして人類にとって潜在的に破滅をもたらしうる脅威であること。
もう一つは、彼らが手にしたCephのテクノロジーが、使い方次第では人類に未曾有の力をもたらしうるということ。
彼らは、この重大すぎる事実を、世界から、そしておそらくは自国の政府からさえも、完全に秘匿することを決意します。
そしてハーグリーヴは、この日から始まる自身の長い、異常に長い人生の全てを、来るべきCephの脅威から人類を守るための、壮大で、冷徹で、そして非情なまでの「百年の計」に捧げることを誓ったのです。
第一次世界大戦後の混乱と復興期、ハーグリーヴは、その類稀なる経営手腕、政治力、そして秘密裏に持ち帰ったCeph技術の断片的な応用によって、軍需産業を中心に巨大企業「Crynet Systems」を一代で築き上げます。
一方、ラッシュ博士はCrynet社の頭脳となり、Cephテクノロジーの解析と、それを人類が利用可能な形へと変換する研究に没頭しました。
彼らはまず、Ceph由来の生体再生技術か何かを利用して、自らの老化プロセスを停止させ、驚異的な延命を実現させます。
そして、その与えられた「長すぎる時間」を使って、彼らは水面下で着々と準備を進めました。
来るべき異星人とのファーストコンタクト(それは友好的なものではないと彼らは確信していました)に備え、人類が対抗するための究極の兵器を開発することを。
その長年にわたる研究開発の集大成、人類の創意工夫と異星の叡智(あるいは悪意?)が融合した結果生まれたものこそ、後の戦場で伝説となる生体強化外骨格、「ナノスーツ (Nanosuit)」だったのです。
2016年。
ついに最初の実用試作モデル、ナノスーツ1.0が完成します。
その比類なき性能を実戦でテストし、運用データを収集するため、米軍特殊作戦コマンド(SOCOM)との極秘共同プロジェクトとして、最高の精鋭部隊である陸軍デルタフォースからトップクラスの兵士たちが選抜され、ナノスーツ運用部隊「ラプターチーム」が結成されました。
指揮官には、数々の戦場を経験してきたローレンス・バーンズ少佐(コードネーム:プロフェット)が任命されます。
しかし、人体と直接融合し、常人を遥かに超える能力を与えるこの革新的すぎる技術は、軍内部や政府関係者の間でさえ、倫理的な懸念、制御不能に陥るリスク、そして何よりその開発の根源にある(であろう)異星技術利用の秘密に対する強い疑念と反発を招いていました。
ナノスーツは、人類を守る盾となるのか、それとも人類自身を破滅に導く剣となるのか?
その答えが出る運命の日は、刻一刻と近づいていました。
2020年、南シナ海の、地図にも載らないような小さな島で、その全てが明らかになるのです。
Crysisサーガ・クロニクル (完全ネタバレ)第2章:戦いの記録
さあ、ここからが本番です。
Crysisサーガの複雑に絡み合った物語を、時系列に沿って、ゲーム、スピンオフ、コミック、小説の情報を統合し、一つの壮大な年代記として紡いでいきましょう。
ネタバレ全開、容赦なしでいきますので、覚悟はいいですか?
これは、ただのゲームのあらすじではありません。
英雄たちの血と涙、テクノロジーの輝きと闇、そして人類の存亡を賭けた戦いの、完全なる記録です。
2-1. 【2020年8月14日 - 17日頃】リンシャン島事件 - Crysis & Crysis Warhead:楽園の地獄変、ファーストコンタクト、そして裏切りの序曲
舞台: 透き通るエメラルドグリーンの海に囲まれ、緑豊かな熱帯雨林が広がる南シナ海の楽園、リンシャン諸島 (Lingshan Islands)。
しかし、その美しい風景とは裏腹に、この島は太古からの秘密と、現代の地政学的な緊張が渦巻く、危険な場所でした。
発端: アメリカの高名な考古学者、デビッド・ローゼンタール博士率いる国際調査チームが、島の中央部で、人類の既知の歴史のどれよりも古い、巨大な異星文明の建造物を発見します。
この世紀の大発見は、しかし、当時、軍事的野心を露わにしていた北朝鮮(KPA)の指導部(キム・ジョンイル政権末期か、あるいはその後継者体制下)の目に留まり、KPA軍が島を武力で占拠。
ローゼンタール博士らは人質となり、外部との連絡を絶たれてしまいます。
米国政府は、公式には人質救出と、KPAによる(と推測された)核開発疑惑の調査を口実に、しかし真の目的には未知のテクノロジー(Ceph由来である可能性が高い)をKPAより先に確保することも含まれ、最新鋭の切り札、ナノスーツ1.0を装備した米軍最高の特殊部隊、「ラプターチーム」の投入を、最高機密裏に決定したのです。
彼らの投入は、最高レベルの機密事項として実行されました。
ラプターチーム - 時代の最先端を征く兵士たち:
- プロフェット (Prophet / ローレンス・バーンズ少佐): チームを率いる冷静沈着なリーダー。豊富な実戦経験と高い判断力を持つが、時に非情とも思える決断を下す。彼の行動が、この事件の行方を大きく左右する。
- ノーマッド (Nomad / ジェイク・ダン二等軍曹): 『Crysis』本編の主人公であり、プレイヤーの分身。デルタフォース出身の実直な兵士。チームのポイントマンとして、未知の脅威に最前線で立ち向かう。
- サイコ (Psycho / マイケル・サイクス軍曹): 『Crysis Warhead』の主人公。元英国SASの猛者。粗暴な言動が目立つが、仲間への情は厚く、その戦闘能力と度胸は本物。
プロフェットとは古い付き合いらしい。
- ジェスター (Jester): チームの偵察と技術サポートを担当。陽気な性格だったが、序盤、ジャングルでCephスカウトに捕獲され、無残な死を遂げる。彼のヘルメットカメラが捉えた最後の映像は、未知の恐怖を予感させる。
- アズテック (Aztec): チームの重火器支援などを担当。屈強な兵士だったが、不運にも降下直後にCephの最初の襲撃を受け、ラプターチーム最初の殉職者となる。彼の死は、任務が想定を遥かに超える危険性を孕んでいることを示していた。
『Crysis』(ノーマッド視点) - 楽園から地獄へ:
- 漆黒の降下、砕け散るチーム:
2020年8月14日未明、ラプターチームはステルス輸送機からの高高度自由降下(HALO)でリンシャン島への隠密潜入を開始。しかし、降下中にレーダーにも映らない正体不明の飛行物体(Cephスカウト)による激しいエネルギー攻撃を受け、チームは空中分解。パラシュートを破壊されたノーマッドは辛うじて海面に叩きつけられるも、プロフェットからの遠隔操作によるスーツの緊急再起動で九死に一生を得る。
仲間との通信は途絶えがちで、不吉な静寂が無線を満たす。
彼は、見知らぬ敵地で、たった一人、任務を開始しなければならなかった。 - ジャングルに響く悲鳴、見えざる敵の影:
夜のジャングルを進むノーマッドは、島の至る所に展開するKPA兵士と交戦しながら、仲間との合流ポイントを目指す。しかし、彼が発見したのは、まるで巨大な爪で引き裂かれたかのような、アズテックとジェスターの無残な亡骸だった。明らかに人間の仕業ではない。
さらに奇妙なことに、彼が交戦するKPA兵士の中にも、同様の不可解な死を遂げている者が多数見受けられた。
彼らもまた、ノーマッドが知らない「何か」と戦っていたのだ。
この島には、KPAとは別の、そして遥かに恐ろしい脅威が潜んでいる。
ノーマッドの全身を、原始的な恐怖が駆け巡った。 - 遺跡の秘密、そして父娘の悲劇:
KPAの基地や検問所を次々と攻略していくノーマッドは、ついに人質の一人を確保する。しかし、そこにいたのはローゼンタール博士ではなかった。彼の娘であり、自身も古代エネルギー源を研究する科学者、ヘレナ・ローゼンタールだった(彼女はCIAの協力者でもあった)。
ヘレナは憔悴しきっていたが、気丈にもノーマッドに語り始める。
父たちが発見した巨大な建造物は、人類の歴史よりも遥かに古い、約200万年前に地球外文明によって造られたものであること。
そして、KPAの野心的な指導者、リー・チャンギョン(京)少将が、その建造物が秘める未知のエネルギーを軍事転用しようと、無謀な実験を行っていることを。
ヘレナは父の安否を気遣うが、その願いは最悪の形で裏切られる。
ノーマッドが遺跡の発掘現場へと急行し、ローゼンタール博士を発見したまさにその時、遺跡が暴走。
制御不能なエネルギーパルスが放出され、博士はノーマッドの目の前で、一瞬にして氷の彫像と化し、粉々に砕け散ってしまう。
同じエネルギー波は、遺跡の力を我が物にしようとしていた京少将と彼の部下たちをも飲み込み、彼らもまた凍結死を遂げた。
ノーマッドとヘレナは、ナノスーツの防御力のおかげでかろうじて生き延びるが、事態はもはや誰にも止められない破局へと向かっていた。 - Cephの覚醒、氷河期の到来:
京少将の愚かな試みは、眠れる獅子を起こしてしまった。島の中央に聳え立つ、一見するとただの火山。しかし、その正体は、地殻変動を利用して巧みにカモフラージュされた、超巨大なCephの母船だったのだ。
地鳴りと共に母船はその活動を再開。
船内に休眠していた無数のCephが目覚め、活動を開始したのだ。
さらに、母船はその上部構造物を展開させると、周囲数キロメートルに及ぶ領域を絶対零度に近い冷気で満たす、巨大なエネルギーフィールド「フリーズスフィア」を展開。
熱帯の島は、瞬く間に氷と吹雪に覆われた極寒の地獄へと変貌した。
それはまるで、新たな氷河期の到来を告げるかのようだった。 - 異星の胎内へ、そしてプロフェットの変容:
この未曾有の事態の中、ノーマッドは一時的にプロフェットと合流する。しかし、プロフェットの様子は明らかにおかしかった。彼はCephに短時間捕獲された際に何らかの重大な影響…あるいは融合…を受けていたのだ。
彼はCephのテクノロジーに異常な関心を示し、「俺は奴らの技術を理解する必要がある」と言い残し、単独でCeph母船の内部へと姿を消してしまう。
ノーマッドは、ヘレナを守りながら氷の世界を脱出するため、そしてプロフェットを追うため、やむを得ず起動したCeph母船の巨大なハッチからその胎内へと足を踏み入れる。
船内は無重力あるいは低重力状態であり、有機的な構造と機械的な構造が融合した異様な空間が広がっていた。
そこで彼は、多数のCeph兵士(機械的な外骨格を纏ったものや、飛行型のドローンなど)と遭遇し、激しい戦闘を繰り広げる。
そして、船の中枢部では、プロフェットがCephのコンソールを操作し、まるで彼らの知識をダウンロードするかのように、その精神を異星のテクノロジーに接続させている姿を目撃する。
ノーマッドは激しい戦闘の末、辛うじて母船から脱出するが、プロフェットの変容に言い知れぬ不安を感じていた。 - 米軍の介入、核攻撃という愚行:
リンシャン島での異常事態を受け、米太平洋軍は空母U.S.S.コンスティチューションを中心とする強力な空母打撃群を派遣。司令官であるモリソン提督は、島全体を覆うフリーズスフィアと、内部で活動する正体不明の敵(Ceph)を、一挙に殲滅するため、戦術核兵器の使用という、最も過激な選択を決断する。ヘレナは、Cephがエネルギーを吸収する特性を持つ可能性を指摘し、核攻撃は逆効果になる危険性を必死に訴えるが、提督は「未知の脅威は力で排除するのみ」と警告を完全に無視。
核ミサイルは発射され、フリーズスフィアの中心部で炸裂した。
しかし、結果はヘレナの危惧通り、いや、それ以上に悲惨だった。
Ceph母船は核爆発の莫大なエネルギーを、まるでご馳走でも食べるかのように吸収し、そのシステムを完全に覚醒させ、より強力な戦闘形態へと移行したのだ。
そして、核攻撃という敵対行為に対し、Cephは明確な報復を開始。
母船から無数の戦闘ユニットが発進し、米海軍が誇る最新鋭の艦隊に対して、一方的な殲滅戦を開始したのである。
人類の最大の武器は、最悪の敵を育ててしまったのだ。 - 沈みゆく鋼鉄の城、英雄最後の抵抗:
空母コンスティチューションに辛うじて帰還したノーマッドとヘレナは、別の任務(Warheadでの活躍)を終えて合流したサイコと再会する。しかし、彼らを待っていたのは、Cephの圧倒的な攻撃によって次々と撃沈されていく友軍艦艇と、炎上し傾き始めた空母という絶望的な光景だった。ノーマッドは、艦内で発生した原子炉の暴走を食い止めながら、格納庫で開発中だった対エイリアン用レールガン、通称「タックキャノン」を入手。
一方、空母の飛行甲板は、巨大なCephの四脚歩行型戦闘兵器(エクソスーツ)によって蹂躙されていた。
ノーマッドは甲板へと上がり、この鋼鉄の巨獣と対峙する。
遮蔽物の少ない甲板上で、回避と攻撃を繰り返す死闘。
ナノスーツの能力とタックキャノンの圧倒的な破壊力を組み合わせ、ノーマッドはついにエクソスーツを行動不能に追い込む。
しかし、息つく間もなく、海面が大きく盛り上がり、そこから戦艦級の超巨大なCeph飛行母艦(先の核エネルギーを吸収し、完全な戦闘形態となったもの)がその禍々しい姿を現す。
母艦はコンスティチューションに対し、主砲クラスのエネルギー攻撃を開始し、艦はもはや沈没寸前だった。
絶望的な状況の中、ヘレナが最後の賭けに出る。
彼女は艦の通信システムをハッキングし、Ceph母艦のエネルギーシールドを一時的に無効化する妨害電波を発信することに成功する。
「今よ、ノーマッド!」。
ノーマッドはタックキャノンのエネルギーを最大充填し、無防備になった母艦のコア目掛けて発射。
直撃を受けたCeph母艦は、凄まじい大爆発を起こし、その巨体を海中に沈めていった。 - 脱出、そして決意のUターン:
Ceph母艦は撃破したものの、その爆発は致命的だった。空母コンスティチューションは完全に機能を停止し、急速に海中へと没していく。艦隊もほぼ壊滅状態。
その阿鼻叫喚の中、サイコが操縦するVTOL機が奇跡的に飛来し、沈みゆく甲板からノーマッドとヘレナを間一髪でピックアップする。
司令部からは、付近にいるであろう数少ない残存艦艇と合流し、戦域から離脱せよとの命令が下る。
しかし、ノーマッドはモニターに映る、未だに不気味なエネルギーを放ち続けるリンシャン島のフリーズスフィアを見つめ、静かに、しかし強い意志を込めて言った。
「いや、戻るんだ」。
彼はこの地獄のような戦いを通して、Cephが決して許してはならない脅威であること、そして同時に、彼らに対抗しうる手段(ナノスーツと、そして人間の意志)が存在することも学んでいた。
そして何より、フリーズスフィアの中でまだ戦い続けているであろう友、プロフェットを見捨てることはできなかった。
「プロフェットを連れ戻す。そして、奴らとの戦いを、ここで終わらせる」。
その決意に、サイコも、ヘレナも、黙って頷いた。
VTOLは、絶望の海を後にし、再び、氷と未知なる脅威が待ち受ける島へと、その機首を向けた。
彼らの本当の戦いは、まだ始まったばかりだったのだ。
ここで、『Crysis』本編の物語は、次なる戦いへの予感を強く残して、幕を下ろす。
『Crysis Warhead』(サイコ視点) - 孤高の戦士の記録:
『Crysis』本編でノーマッドが体験した激戦と並行して、リンシャン島の全く別の場所では、ラプターチームの問題児にして最高の兵士、サイコが、彼自身の、そして人類の未来にとって極めて重要な、しかし孤独な任務に挑んでいた。
『Warhead』は、彼の視点を通して語られる、血と硝煙、そして剥き出しの感情に彩られた、もう一つのリンシャン島事件の真実である。
- 極秘コンテナを追え、その中身は?:
サイコに与えられた特命。それは、KPAの中でも特に冷酷かつ有能で知られる指揮官、リー大佐(京少将とは階級も性格も異なる、現場叩き上げの軍人)が、厳重な警備体制の下で島外(おそらくは北朝鮮本国)へ輸送しようとしている、一つの特殊なコンテナを確保することだった。当初、米軍情報部は核関連物質かと疑っていたが、サイコが追跡する中で、その中身がより異質で危険なもの…Cephから鹵獲された、あるいは彼らが意図的に遺したと思われる、未知の戦闘兵器ユニット(あるいはそのコア部分)であることが判明する。
このコンテナを確保することは、Cephのテクノロジーを解析し、対抗手段を開発する上で、計り知れない価値を持っていた。 - 空からの援護、戦友オニールとの絆:
広大な島でKPAの大部隊を相手にするサイコにとって、強力な味方がいた。それは、同じくこの島に極秘潜入していた米軍のVTOLパイロット、ショーン・オニール(コールサイン:イーグル1)。彼は陽気で腕の立つパイロットであり、かつてラプターチームの選抜テストでサイコと競い合った(そして落ちた)過去を持つらしい。
オニールは、強力な武装を施されたVTOL機を駆り、サイコの要請に応じて的確な航空支援(機銃掃射、ミサイル攻撃、偵察情報の提供など)を行い、何度もサイコの窮地を救う。
二人の軽口を叩き合いながらも互いを信頼し合う関係は、過酷な戦場における数少ない救いとなった。 - 執念 vs 狂気、リー大佐との死闘:
リー大佐は、サイコの追跡を知ると、コンテナを守り抜くため、そして邪魔者であるナノスーツ兵士を排除するため、あらゆる手段を講じてくる。彼は、KPAの中でも特に忠誠心が高く、最新装備(中にはKPAが独自に模倣・開発したと思われる強化スーツを着用することも)で武装した特殊部隊を率いており、さらには島の鉄道網を利用した装甲列車や、秘密裏に開発していた巨大なホバークラフト型戦闘兵器まで投入して、サイコを執拗に追い詰める。島の鬱蒼としたジャングル、KPAが支配する鉱山施設、戦略的に重要な港湾、そしてフリーズスフィアによって凍結した広大な河川などを舞台に、サイコとリー大佐の間には、コンテナを巡る、まさに追いつ追われつの、手に汗握る死闘が繰り広げられる。
それは、任務への執念と、狂気じみた愛国心のぶつかり合いでもあった。 - 戦場のリアル、魂の叫び:
この戦いの中で、サイコは戦争の残酷な現実を改めて突きつけられる。彼を支援するために派遣された友軍のナノスーツチーム「イーグル隊」の兵士たちが、Cephの圧倒的な攻撃や、リー大佐の仕掛けた卑劣な罠によって、次々と目の前で命を落としていく。また、KPAの支配下にあった島の民間人たちが、戦闘の巻き添えになって無残に殺されていく光景も目の当たりにする。
元来、感情の起伏が激しく、正義感も強い彼は、仲間を失う悲しみ、救えなかった命への無力感、そして敵への激しい怒りに、その精神を激しく揺さぶられる。
特に、捕虜にしたKPA兵士から情報を引き出す際に、激情に駆られて過剰な尋問を行い、結果的に相手を溺死させてしまうシーンは、彼が戦場の狂気に呑まれかけ、人間性の危うい境界線上に立っていることを象徴的に描いている。
ナノスーツは彼の肉体を鋼鉄のように守るが、その心までは守りきれないのだ。 - 捕縛と屈辱、そして不屈の魂:
リー大佐の巧妙な策略にはまり、サイコはついに捕らえられてしまう。ナノスーツの機能を特殊な装置によって強制的に停止させられ、彼は無力な状態でリー大佐による屈辱的な尋問と拷問を受けることになる。「そのスーツを脱げ、化け物め!」と罵られながら。
しかし、彼は諦めなかった。
彼の不屈の闘志は、絶望的な状況下でこそ燃え上がる。
そして、ちょうどその時、島の中央部でノーマッドたちが引き金となったフリーズスフィア発生による大混乱が起こる。
この天佑とも言える状況の変化を、サイコは見逃さなかった。
彼は、残された僅かな力を振り絞り、拘束具を破壊。
油断していたKPA兵士たちを素手でなぎ倒し、奇跡的な脱出を果たす。 - 最後の戦い、任務達成、そして友の元へ:
自由を取り戻したサイコは、再びオニールのVTOLと合流し、リー大佐との最終決戦に臨む。凍結した巨大な港湾施設での激闘の末、ついにリー大佐との決着をつける(彼を倒すか、無力化する)。そして、目的のCephコンテナを確保。
オニールのVTOLにコンテナを搭載し、二人はついにリンシャン島からの脱出に成功する。
任務は達成された。
しかし、彼らに休息の時は訪れなかった。
脱出直後、彼のヘルメットに、ヘレナからの悲痛な通信が入る。
「サイコ、応答して!ノーマッドたちが危ない!空母が…!」
サイコは即座にオニールに指示を出す。
「進路変更だ、相棒!デカいお祭り(デカいパーティー)が始まったらしいぜ!くそっ、休む暇もねぇ!」
彼は、確保したばかりの貴重なコンテナと共に、友軍がまさに壊滅しようとしている、より大規模で、より絶望的な戦場へと、迷うことなく機首を向けた。
彼のリンシャン島での戦いは終わったが、彼の戦士としての物語は、まだクライマックスを迎えていなかったのだ。
(そして、彼はこの後、『Crysis』本編の最も重要な局面で、沈没寸前の空母からノーマッドとヘレナを救出するという、決定的な役割を果たすことになる)。
リンシャン島事件、葬られた真実 - 公式コミックが暴いた、英雄たちの悲劇的な結末:
『Crysis』本編のエンディング、ノーマッドたちが希望を胸に(あるいは覚悟を決めて)島へ引き返していく、あの希望とも絶望ともつかないシーン。
しかし、その先に彼らを待ち受けていた運命は、我々がゲームで想像した以上に過酷で、そして残酷なものだった。
公式コミックシリーズ(特にリチャード・モーガン脚本のシリーズ)で詳細に語られたその後の出来事は、英雄たちの物語に、衝撃的な、そして多くの場合、悲劇的な結末をもたらした。
VTOLでフリーズスフィア内部へと再突入したノーマッド、サイコ、ヘレナ。
彼らは激しさを増すCephとの戦闘を切り抜け、ついに内部で孤軍奮闘していたプロフェットとの合流に成功する。
プロフェットは、短時間ながらCeph母船内部で彼らのテクノロジーに深く接触した結果、その一部を理解し、限定的ながらもCephの兵器(MOACなど)を使用したり、彼らのシステムに干渉したりする能力を獲得していた。
彼の変容は、希望であると同時に、不穏な影も感じさせた。
4人は、互いの情報を共有し、協力してCephの追撃をかわしながら、この氷の地獄から完全に脱出するためのルートを必死に探す。
その過程で、彼らはCeph母船が発する強力な時空エネルギーの影響を受け、約18時間もの時間が巻き戻るという、常識では説明不能な現象にも遭遇したと記録されている。
これは、Cephのテクノロジーが単なる物理的なものではなく、時空そのものに干渉しうる、より高次元の存在であることを示唆していたのかもしれない。
幾多の死線を乗り越え、彼らはついに島の海岸線に到達し、脱出のためのポイントを発見する。
疲労困憊の彼らの前に、救難信号に応答したかのように、救援部隊を名乗るヘリコプターと上陸用舟艇が現れた。
ようやく助かった…誰もがそう思った瞬間だった。
しかし、彼らが間近で見たその部隊の装備や徽章は、米軍の正規部隊のものではなかった。
彼らは、黒一色の戦闘服に身を固めた、明らかに特殊な訓練を受けたプロフェッショナルたち…CIAの特殊活動部(SAD)に所属する秘密作戦部隊だったのだ。
そして、彼らがここに来た目的は「救援」ではなかった。
- ハーグリーヴの冷徹なる最終計算:
このCIA部隊は、地球の裏側から、全てを監視し、糸を引いていた黒幕、ジェイコブ・ハーグリーヴの直接的な命令によって動いていた。ハーグリーヴにとって、ラプターチームの投入から、Cephの覚醒、米軍の介入、そして核攻撃に至るまでのリンシャン島での一連の出来事全てが、壮大なスケールで行われた「実験」に他ならなかったのだ。未知の脅威であるCephの戦闘能力、そのテクノロジーの特性、そしてそれに対する人類の最新兵器ナノスーツの有効性と限界値を実地で測定・評価するための。そして今、実験の最終段階として、彼は最も価値のある「サンプル」…生き残ったラプターチームの兵士たち(特にCephと深く接触し、変容し始めているプロフェット)、彼らが着用している最新鋭のナノスーツ(その戦闘データと共に)、そして彼らが収集したであろう全てのCephに関する機密情報を、完全に自身の管理下に回収しようとしていたのだ。
彼らは生きた実験動物であり、用済みとなれば処分される運命にあったのかもしれない。
- 裏切りの銃弾、砕け散った希望:
海岸に降り立ち、プロフェットたちに近づいてきたCIA部隊の指揮官は、労いの言葉をかけるふりをした。しかし次の瞬間、彼は部下に合図を送り、部隊の兵士たちは一斉に、無防備なプロフェットたち4人に向けて自動小銃の引き金を引いた。あまりにも突然の、そして冷酷非情な裏切りだった。
この凶弾により、武器を持たず、油断していたヘレナ・ローゼンタールは、抵抗する間もなくその場で複数の銃弾を受け、若き命を散らしてしまう。
プロフェット、ノーマッド、サイコもまた、予期せぬ攻撃に致命的な重傷を負い、ナノスーツの防御力も限界を超え、次々と制圧され、意識を失い、捕縛されてしまった。 - ノーマッド、英雄の最期(あるいは…):
捕らえられた3人のナノスーツ兵士は、沖合に待機していたCIAの偽装工作船へと移送され、そこで非人道的な尋問(事実上の拷問)を受けることになる。ナノスーツの機能は特殊な装置によって強制的に抑制され、彼らはまさに絶体絶命の窮地に立たされていた。しかしその時、奇跡が起こる。
米軍によるリンシャン島への(結果的に無意味だった)核攻撃が引き起こした強力なEMP(電磁パルス)が艦船にも到達し、一時的にナノスーツの機能抑制システムを含む電子機器がダウンしたのだ。
スーツの機能がある程度回復したことを感じ取ったプロフェットとサイコは、この千載一遇のチャンスを逃さなかった。
彼らは残された力を振り絞り、拘束を破り、反撃を開始する。
艦内は混乱に陥るが、数の上では圧倒的に不利であり、しかも彼らは重傷を負っていた。
その時、敵兵がプロフェットとサイコに向けてロケットランチャーを発射。
二人が回避する間もない、絶体絶命の瞬間。
その刹那、ノーマッド(ジェイク・ダン)は、最後の力を振り絞り、自らの身を投げ出して二人の前に立ちはだかり、盾となった。
ロケット弾はノーマッドのナノスーツに直撃し、大爆発を起こした。
彼の姿は爆炎の中に消え、その生死を確認することはできなかった…
これが、公式コミックで描かれたノーマッドの最期であり、彼の自己犠牲的な行動がなければ、プロフェットとサイコが生きてあの場を脱出することは絶対に不可能だっただろう。
彼の名は、英雄として、しかし同時に公式記録上は「戦闘中行方不明(MIA)」あるいは「戦死(KIA)」として処理されることになった。
(だが、我々は知っている。彼の物語は、まだ終わっていないのかもしれない…)。 - 二人だけの逃亡、始まる孤独な戦い:
ノーマッドが命懸けで作ってくれた僅かな時間と隙。プロフェットとサイコは、深い悲しみと怒りを胸に、満身創痍の状態ながらも、ついにCIA艦船からの脱出に成功する。彼らは、自分たちが信じ、命を懸けて戦ってきたはずの国や組織に、無慈悲に裏切られ、捨て駒として利用されていたという残酷な真実を突きつけられた。
そして、その全ての背後で糸を引いていたのが、かつての上官であり、ナノスーツの創造主でもあるジェイコブ・ハーグリーヴであるという事実を知り、言いようのない怒りと、深い絶望を感じていた。
しかし、彼らは立ち止まるわけにはいかなかった。
死んでいった仲間たちのために。
ヘレナの、そしてノーマッドの犠牲を無駄にしないために。
そして何よりも、まだ地球上に潜み、人類を脅かし続けるであろうCephとの戦いに、そしてハーグリーヴの歪んだ野望に、決着をつけるために。
彼らは生き延び、戦い続けなければならなかった。
こうして、2020年夏のリンシャン島事件は、世界に対しては「原因不明の異常現象と、それに伴う北朝鮮軍の暴走に対し、米軍が限定的な核兵器使用を含む断固たる措置を講じ、事態を収拾・封鎖した」という、極めて曖昧で不透明な形で公式に幕引きが図られた。
英雄たちの本当の活躍と、その悲劇的な結末は、国家最高レベルの機密として闇に葬られた。
そして、生き残った二人の英雄、プロフェットとサイコは、もはや国家にも組織にも属さない、孤独な逃亡者となった。
彼らは、かつての味方であったはずの米軍やCIAからも、「危険な機密情報を持ち逃げした裏切り者」として追われる身となりながら、世界がまだ気づいていない二つの巨大な脅威…地球外からの侵略者Cephと、人類の内なる敵ハーグリーヴ…と戦うため、地下に潜り、雌伏の時を過ごすことになる。
3年後のニューヨークで、再び彼らが歴史の表舞台に姿を現すその日まで。
2-2. 【2020年~2023年】水面下の攻防:潜伏、進化、そして迫りくる嵐の予兆 - Crysis コミック & 小説『Escalation』より
リンシャン島での壮絶な事件が(表向きは)収束してから、ニューヨークで再び地獄の釜が開くまでの約三年間。
世界は、偽りの平穏を取り戻したかのように見えた。
しかし、その静寂の下では、人類の未来を左右するであろう、静かだが決定的な変化が進行していた。
それは、絶望へのカウントダウンであると同時に、次なる戦いへの準備期間でもあった。
- プロフェットとサイコ、影として世界を駆ける:
CIAの追手から逃れたプロフェットとサイコ。彼らはもはや、正規の軍隊や組織に属さない、孤独な戦士となっていた。しかし、彼らは戦いをやめなかった。
公式記録上は存在しない人間として、彼らは世界各地を転々としながら、リンシャン島以外にも存在するであろうCephの活動の痕跡…説明不能なエネルギー反応を示す地域、太古の地層から発見される異質なアーティファクト、原因不明の集団失踪事件…などを秘密裏に調査し続けていた(公式小説『Crysis: Escalation』に収録されている短編、「Chance」や「Core」などで、彼らのそうした断片的な活動や苦悩が垣間見える)。
特にプロフェットは、リンシャン島でのCephとの直接的な接触と、ナノスーツとの日益しに深まる共生関係を通じて、常人には理解不能なレベルでCephのテクノロジーと彼らの思考パターン(ハイヴマインドの微弱な波動)を理解し始めていた。
彼は、Cephによる本格的な地球侵略が避けられない未来であることを確信し、その対策を模索していた。
その過程で、彼はCrynet社が開発を進めているであろうナノスーツの次世代機(後の2.0)の情報にも何らかの形でアクセスし、その設計に(おそらくは非公式な形で)影響を与え、特に対Ceph戦を意識した機能強化…例えば、Cephエネルギーの吸収・分析能力や、ハイヴマインドへの干渉能力など…を盛り込ませようとしていた可能性が高い。
しかし、彼のその常軌を逸したCephへの執着と、時に目的のためなら手段を選ばない非情な判断は、より人間的な感情や倫理観を持つサイコとの間に、次第に埋めがたい溝を生んでいく。
コミック版では、最終的に二人が互いの道を歩むことを選び、袂を分かつ様子が描かれている。
サイコは、プロフェットの終わりなき、そして勝ち目の見えない戦いから距離を置き、自分自身の人間としての生き方を取り戻そうとする。
しかし、皮肉にもこの選択が、彼を後にCELLの非道な罠へと誘い込むことになるのだった。 - CELL、怪物への変貌、そしてナノスーツ2.0の完成:
一方、世界の表舞台では、ジェイコブ・ハーグリーヴ率いるCrynet Systems社とその軍事部門CELLが、破竹の勢いでその影響力を拡大していた。リンシャン島事件から(非合法なルートも含めて)回収されたCephのテクノロジーサンプル(サイコが命懸けで持ち帰ったコンテナの中身も、おそらく彼らの手に渡っただろう)や、ラプターチーム(特にプロフェットとノーマッド)のナノスーツから抽出された膨大な戦闘データは、Crynet社の研究開発部門にとって、まさに錬金術の秘法にも等しい価値を持っていた。彼らはこれらの情報を独占し、Cephテクノロジーのリバースエンジニアリングと応用研究を驚異的な速度で進展させた。
そして、その技術的優位性と、ハーグリーヴの持つ莫大な財力・政治力を背景に、CELLは世界各国の軍隊や政府機関との契約を次々と獲得し、最新鋭の兵器と高度に訓練された兵士を擁する、世界最大かつ最強の民間軍事企業(PMC)へと変貌を遂げていく。
そして2023年が近づく頃、Crynet社はついに、ナノスーツ1.0の運用データと、新たに得られたCeph技術の知見を融合させ、その完成形とも言える次世代モデル、「ナノスーツ2.0」をロールアウトさせる。
それは、より洗練され、より強力で、そしてより着用者との融合度が高いスーツだった。
表向きは、来るべきCephとの大規模戦闘に備えるための究極の兵装とされたが、ハーグリーヴの真の狙いは、この究極のテクノロジーを用いて、世界のエネルギーと情報を支配し、究極的には人類そのものを管理する体制を築くこと、そして彼自身が老いと死を超越した存在へと進化することにあったのかもしれない。
ナノスーツ2.0は、人類の希望であると同時に、独裁者の野望を実現するための、最も危険な鍵でもあったのだ。 - 世界に満ちる不穏な空気、無視された警告:
リンシャン島での事件は極秘裏に処理されたが、同様の不可解な現象は、もはや隠しきれるものではなくなっていた。世界各地で、原因不明の大規模な地殻変動、異常気象、謎の古代遺跡の発見、そして正体不明の飛行物体(UFO)の目撃情報などが相次いで報告され始める。「太古の地球にはエイリアンが存在し、彼らが再び活動を開始したのではないか?」そんなSFのような仮説が、インターネットの片隅や、一部のオルタナティブメディアを通じて、真実味を帯びて語られるようになり、人々の間に漠然とした、しかし根強い不安感を植え付けていった。
プロフェットもまた、自身の持つ情報や予測を、断片的ながらも様々なルートを通じて世界に警告しようと試みていた。
しかし、各国政府や支配的なメディアは、社会秩序の維持を優先してか、あるいはCELLのような巨大企業の経済的・政治的影響力を恐れてか、これらの情報を意図的に無視、あるいは矮小化し続けた。
世界は、すぐそこまで迫っている破滅的な危機に対して、見て見ぬふりをしていたのだ。
あるいは、あまりにも巨大すぎる脅威を前に、思考停止に陥っていたのかもしれない。
この三年間は、まさに嵐の前の、不気味なほどの静けさだった。
プロフェットの孤独な叫びは雑音にかき消され、CELLはその牙を研ぎ澄まし、そしてCephは、人類に最終的な絶望をもたらすための、次なる一手…ニューヨーク侵攻…の準備を、水面下で着々と、そして確実に進めていた。
人類の運命の針が、再び大きく振れる日は、もう目前まで迫っていた。
2-3. 【2023年8月23日 - 27日頃】ニューヨーク陥落 - Crysis 2 & 小説『Legion』『Escalation』:摩天楼は燃えているか? スーツを受け継ぐ者、そして融合する魂
舞台: リンシャン島の悪夢から3年の月日が流れた。
世界の誰もが、あの事件は過去のものだと思い始めていた頃、次なる悲劇の舞台となったのは、皮肉にも人類文明の頂点を象徴する場所、アメリカ合衆国ニューヨーク市だった。
2023年の夏、この眠らないはずの巨大都市はかつてない三重の脅威に見舞われ、文字通りの地獄絵図と化していた。
第一の脅威は、突如として市内に蔓延し始めた致死性の伝染病「マンハッタンウイルス」。
感染者は皮膚組織が急速に溶解し、苦悶の末に死に至るという、バイオハザード映画さながらの恐怖が街を覆った。
第二の脅威は、地中から、空から、突如として無数に出現した異形のエイリアン「Ceph」の地上戦闘部隊。
彼らは重火器で武装し、明らかに組織的な連携をもって、街のインフラを破壊し、人々を無差別に殺戮し始めた。
それはもはや偵察や小競り合いではなく、本格的な侵略戦争の始まりだった。
そして第三の脅威は、この未曾有の混乱に乗じて市内に大規模展開し、治安維持を大義名分に事実上の軍政を開始した民間軍事企業「CELL」。
彼らは最新鋭の装備で武装し、時にCeph以上の脅威として市民や米軍の残存部隊にすら銃口を向けた。
彼らの真の目的は、混乱の収拾ではなく、この状況を利用した何か別のことにあるように見えた。
ニューヨークは、Cephの侵略、致死性ウイルスの蔓延、そしてCELLによる支配。
この三つの絶望によって完全に包囲され、世界から切り離された巨大な坩堝の中で、急速に崩壊しつつあった。
新たな主人公、絶望からの誕生: この地獄の真っ只中に、一人の若き兵士が、否応なく物語の中心へと引きずり込まれる。
彼のコードネームはアルカトラズ (Alcatraz)。
本名はジェームズ・ロドリゲス。
彼は、混乱するニューヨーク市内から重要人物(ネイサン・グールド博士)を救出するという極秘任務を受け、米海兵隊の精鋭部隊、フォース・リーコン「チーム・アラバマ」の一員として、潜水艦によるマンハッタン島への隠密上陸を試みていた。
しかし、彼らの作戦は開始直後に頓挫する。
マンハッタン島に近づいた潜水艦が、水中活動能力を持つCephユニットの奇襲攻撃を受け、大破・轟沈してしまったのだ。
チームの仲間たちのほとんどは即死、あるいは溺死。
アルカトラズ自身も肺に浸水し、全身に致命的なダメージを負い、意識を失いかけたまま、ハドソン川の汚れた岸壁に奇跡的に打ち上げられる。
彼の兵士としての物語は、始まる前に終わったかに見えた。
しかし、それは同時に、全く新しい、そして想像を絶する運命の始まりでもあったのだ。
物語の展開 - 死の淵で託されたもの、摩天楼での孤独な死闘:
- 運命のバトンタッチ、ナノスーツ2.0の継承:
朦朧とするアルカトラズの意識が捉えたのは、黒く輝く異形の戦闘スーツを纏った人影だった。それは、数年前のリンシャン島事件の後、消息を絶っていたはずの伝説の兵士、プロフェット。しかし、再会した英雄の姿は、アルカトラズ同様、死の淵にあった。
彼もまたCephがニューヨークに撒き散らしたマンハッタンウイルスに深く感染し、ナノスーツの生命維持機能をもってしても、もはや限界が近づいていたのだ。
「時間がない…お前しかいない…これを着ろ…」。
プロフェットは最後の力を振り絞り、瀕死のアルカトラズに、自身が長年改良を重ねてきたであろう最新型のナノスーツ2.0を、半ば強制的に装着させる。
「俺の代わりに…任務を継げ…奴らを…止めろ…」。
それがプロフェットの最後の言葉だった。
彼は、自らの意志で、そしておそらくはアルカトラズの(そして人類の)未来を信じて、スーツのヘルメットに内蔵された拳銃で自らの頭部を撃ち抜き、その壮絶な生涯に幕を下ろした。
プロフェットは死んだ。
しかし、彼の意志と、彼が生み出した究極のスーツは生きていた。
ナノスーツ2.0は、新たな着用者アルカトラズの生命危機を感知すると、即座にその驚異的な自己修復・生命維持システムを作動。
破壊された肺組織を修復し、失われた血液を補い、彼の生命活動を強制的に再起動させた。
彼は、文字通り死の淵から引き戻された。
しかし、彼が目覚めた時、彼はもはやただの海兵隊員ではなかった。
彼は、理解を超える状況の中、人類最後の希望となりうる究極の兵器と、そして死んだ英雄が遺した重すぎる使命を、同時にその身に背負うことになったのだ。 - 目覚めれば戦場、そして二重の追跡:
アルカトラズが意識を取り戻した場所は、砲弾が飛び交い、ビルが崩れ落ちる、まさに地獄の戦場だった。周囲には、異形の姿をしたCephの兵士たちが闊歩し、人間を襲っている。そして、それとは別に、ハイテク装備で武装したCELLの兵士たちが、Cephと戦いつつも、明らかに「何か」を探している様子だった。
彼は、自分が誰で、なぜこの奇妙なスーツを着ているのか、そして何をすべきなのか、全く分からないまま、ただ生き残るためだけに、本能的にスーツの力(それはまだ彼には未知数だった)を頼りに戦い始めなければならなかった。
そして彼はすぐに、二つの異なる、しかしどちらも致命的な敵から追われる身であることを理解する。
一つは、人類そのものを根絶やしにしようとしているかのような、容赦のない攻撃を仕掛けてくるエイリアン、Ceph。
もう一つは、なぜか自分(の着ているスーツ)を執拗に追いかけ、捕獲、あるいは破壊しようとしてくる民間軍事企業CELL。
CELLの兵士たちは、無線で「プロフェットを発見!」「ターゲット捕捉!」と叫んでいた。
彼らは、アルカトラズを、死んだはずのプロフェット本人だと完全に誤認していたのだ。
アルカトラズは、この未知のスーツの力を手探りで引き出しながら、CephとCELL、この二つの脅威が渦巻く崩壊したニューヨークで、孤独なサバイバルを開始しなければならなかった。 - 導きの糸、そして協力者たちとの邂逅:
右も左も分からず、ただ目の前の脅威と戦うしかなかったアルカトラズに、やがて一条の光が差し込む。スーツのヘルメットに、外部からの通信が入ったのだ。声の主はネイサン・グールド博士と名乗った。
彼はかつてCrynet社に所属し、ナノスーツ開発の初期段階に関わっていた科学者だったが、ハーグリーヴの計画の危険性に気づき、会社を離れて独自に調査を進めていた人物だった。
彼こそが、アルカトラズが救出するはずだった重要人物だったのだ。
グールド博士もまた、最初は通信の相手をプロフェットだと信じており(プロフェットとは以前から何らかの接触があったようだ)、彼を安全な場所へと誘導しつつ、ナノスーツの機能解析や、Ceph、マンハッタンウイルスの正体解明に協力する。
さらに、アルカトラズは戦いの中で、思わぬ助けを得ることになる。
CELL部隊の中にいた一人の女性将校、タラ・ストリックランド中尉。
彼女は実はCIAから送り込まれた潜入エージェントであり、リンシャン島事件で叔父であるモリソン提督が犠牲になったことから、その真相を探るため、そしてCELLとハーグリーヴの危険な野望を阻止するため、二重スパイとして活動していたのだ。
彼女は後に、アルカトラズがプロフェットではないことに気づきつつも、彼の持つ潜在能力と正義感を信じ、CELLに反旗を翻して、決定的な局面でアルカトラズを救出することになる。
そして、忘れてはならないのが、このニューヨークの悲劇全体の、影の演出家とも言うべき存在、ジェイコブ・ハーグリーヴ。
彼は冷凍睡眠ポッドの中から、ナノスーツを通じてアルカトラズの状況を常に監視し、時に謎めいた指示や情報を与えてくる。
彼の目的は、一見するとCephの脅威から人類を救うことにあるように見える。
しかし、その言動の端々には、ナノスーツそのものへの異常な執着と、アルカトラズ(というよりスーツの着用者)を自らの壮大な計画の駒として利用しようとする、冷たい計算が垣間見える。
彼の真意は、物語が終盤に差し掛かるまで、厚いベールに包まれている。 - 死の胞子、ウイルスの正体と希望の鍵:
ニューヨークを文字通り「溶かして」いたマンハッタンウイルス。それは自然発生したものでも、人間の手によるものでもなかった。グールド博士とアルカトラズの調査、そしてナノスーツによるサンプル分析によって、その恐るべき正体が明らかになる。
ウイルスは、Cephが人類を効率的に排除するために設計・散布した、極めて強力な生物兵器だったのである。
感染すると、人間の細胞組織は自己融解を起こし、最終的には液状化して死に至る。
そして、この死の胞子は、市内の至る所に、まるで巨大なキノコのように地中から突き出てきたCephの建造物、「スパイア」から、大気中に継続的に散布されていたのだ。
通常兵器ではスパイアを破壊することも、ウイルスを無力化することも困難だった。
しかし、絶望の中に唯一の希望があった。
それは、アルカトラズが身に纏うナノスーツ2.0だった。
Ceph由来のテクノロジーを基盤とするこのスーツは、Cephの胞子に対して特異な反応を示した。
スーツは胞子を吸収・分析し、その遺伝子情報やタンパク質構造を解読することで、抗体をスーツ内部で生成したり、さらには吸収した胞子のエネルギーを利用して、周囲のCephユニットを一時的に無力化する特殊なエネルギーパルスを放出したりする能力を獲得していったのだ。
ナノスーツは、単なる戦闘用の鎧ではない。
それは、この生物学的危機を乗り越えるための、移動する研究室であり、そして究極の対抗兵器でもあったのである。 - 個人的な憎悪、ロックハートの執念:
CELLの現場指揮官ドミニク・ロックハートは、アルカトラズ(彼がプロフェットだと信じている)に対する個人的な憎悪を剥き出しにして、執拗な追跡を続ける。彼の行動は、単なる任務遂行を超えた、個人的な感情に突き動かされていた。彼には、数年前に自身の甥が、Crynet社が行ったナノスーツの初期プロトタイプの非公式な人体実験の被験者となり、スーツの暴走(あるいは拒絶反応)によって命を落としたという、痛ましい過去があったのだ。
彼はその悲劇の責任を、ナノスーツ計画を推進したプロフェット(とハーグリーヴ)にあると一方的に断じ、復讐の機会を狙っていた。
そのため、上官であるハーグリーヴからの「生け捕り」命令も公然と無視し、アルカトラズを発見次第、抹殺しようとあらゆる手段を講じてくる。
彼の個人的な憎悪と、CELLという組織の持つ強大な軍事力が組み合わさった時、それはアルカトラズにとって、Cephの脅威に匹敵する、あるいはそれ以上に厄介で危険な障害となった。 - 進化するスーツ、薄れる自己:
アルカトラズは、ニューヨークという死の坩堝の中で、否応なくナノスーツ2.0との一体化を深めていく。彼は、激しい戦闘と生存への渇望の中で、スーツが持つ驚異的な潜在能力…敵の弾丸を弾き返すアーマー、闇に溶け込むクローク、ビルからビルへと飛び移るパワー、そして戦況を一変させる戦術バイザーとハッキング能力…を次々と解放し、まるで生まれながらのナノスーツ兵士であるかのように、それを使いこなしていく。さらに、彼は倒したCephから「ナノカタリスト」と呼ばれる特殊な生体エネルギーを吸収し、それをスーツの神経回路に注ぎ込むことで、基本性能(ステルス持続時間、アーマー強度、エネルギー回復速度など)を恒久的にアップグレードさせる方法をも習得する。
彼は日に日に、人間を超えた存在へと進化しつつあった。
しかし、その進化は、彼が「ジェームズ・ロドリゲス」という一人の人間であることから、静かに、しかし確実に遠ざかっていくことを意味していた。
スーツは、彼の負傷した肉体を維持するために、彼の細胞を絶えず分解し、ナノマシンで置換・再構成し続けていた。
彼はもはや、このスーツなしでは一瞬たりとも生きていけない。
スーツは第二の皮膚どころか、彼自身の肉体そのものになりつつあった。
そして、より深刻な変化は、彼の精神にも起きていた。
スーツ内部に保存されていたプロフェットの人格データが、彼の思考や記憶に侵入し、混濁し始めていたのだ。
時折聞こえるプロフェットの声、フラッシュバックする見知らぬリンシャン島の光景。
彼は自問する。
「俺は誰なんだ? アルカトラズなのか? それとも、プロフェットになりつつあるのか?」。
人間としての自己同一性の境界線は、急速に溶解し始めていた。 - ハーグリーヴの真意、裏切り、そして告白:
物語はクライマックスへと向かう。それまで陰からアルカトラズを導くように見えたジェイコブ・ハーグリーヴが、ついにその真の目的を露わにする。彼は、Cephの侵攻を止めるための決定的な鍵が、自身が潜むルーズベルト島にある研究施設「プリズム」にあるとアルカトラズに告げ、彼を巧みにそこへと誘導する。
しかし、それは罠だった。
ハーグリーヴの最終目的は、Cephへの対抗ではなく、数々の戦闘データとCephエネルギーを吸収して究極的に進化したナノスーツ2.0そのものを、アルカトラズから奪い取り、それを老いさらばえた自らの肉体に代わって装着することにあったのだ。
それによって彼は、病と死を超越し、永遠の生命と、神にも等しい力を手に入れ、新たな世界の支配者となることを夢見ていた。
プリズムに到着したアルカトラズは麻酔ガスで捕らえられ、スーツの強制剥離が試みられる。
しかし、ハーグリーヴの計算違いだったのは、ナノスーツとアルカトラズの融合が、彼の想像を遥かに超えて深く進行していたことだった。
スーツは、アルカトラズの生命を守るため、そしておそらくはプロフェットの遺志を継ぐため、外部からの強制的な剥離に対して激しく抵抗する。
その絶体絶命の危機を救ったのは、ハーグリーヴの非道な計画に最終的に見切りをつけ、反旗を翻したタラ・ストリックランドだった。
彼女の決死の介入により、アルカトラズは拘束を解かれ、ハーグリーヴの野望は寸でのところで阻止される。
追い詰められ、もはや打つ手がなくなったハーグリーヴは、冷凍睡眠ポッドの中から、アルカトラズ(あるいは彼と融合しつつあるプロフェットの意識)に対し、全てを語り始める。
1919年のツングースカでの運命的な発見、Cephという存在への畏怖と対抗心、ナノスーツ開発に捧げた百数十年の執念、そして自らが描いた歪んだ理想の未来…。
それは、一人の天才が狂気に至るまでの、長大な告白だった。 - 託された最後の希望、カウンターエムローチメント:
全てを語り終えたハーグリーヴ。彼は、自らの計画が潰えたことを悟り、そしておそらくは自らの限界も悟ったのだろう。彼は、最後に残された選択をする。
それは、アルカトラズに、人類の未来を託すことだった。
彼は、ナノスーツに対し、Cephの中枢システムと完全に同期し、干渉するための最後のアップグレードプログラムを遠隔で実行する。
そして、ニューヨーク侵攻の元凶であり、今やセントラルパークの地下からその巨大な姿を完全に現したCephの母船(リソシップ)兼ウイルス散布中枢である「メインスパイア」を破壊するための、究極にして最後の手段をアルカトラズに授ける。
それが、「カウンターエムローチメント」作戦だった。
ナノスーツが蓄積した全エネルギー(それはCeph由来のエネルギーを含む)を、メインスパイアのエネルギーコアに指向性のパルスとして逆流させ、内部から連鎖的な自己崩壊を引き起こすという、理論上は可能だが、実行には計り知れないリスクを伴う、まさに諸刃の剣。
成功すれば、ニューヨーク市内の全Cephユニットを一掃し、マンハッタンウイルスを完全に浄化できる。
しかし、失敗すれば、あるいは成功したとしても、実行者であるナノスーツ着用者の生命が保証されるものではなかった。
ハーグリーヴは、アルカトラズに未来を託すと、自らは研究施設「プリズム」のメインリアクターをオーバーロードさせ、自爆シーケンスを起動。
炎と爆発の中に、その百数十年に及ぶ波乱の生涯を自ら終えた。
それは、彼の最後の贖罪であり、次世代への遺言だったのかもしれない。 - ニューヨーク解放、しかし英雄は…:
ハーグリーヴから重すぎるバトンを受け取ったアルカトラズは、最後の決戦の地、セントラルパークへと向かう。そこは既に、人類とCephの最終防衛ラインとなっていた。米海兵隊の残存部隊を指揮するバークレー大佐や、アルカトラズの潜水艦から奇跡的に生還していた元同僚のチーノたちが、必死の覚悟で市民の最終避難ルートを確保しながら、メインスパイアから無限に湧き出してくるCephの大群と、絶望的な消耗戦を繰り広げていた。
グールド博士やストリックランドの通信によるナビゲーションと戦術支援を受け、アルカトラズはCephの防衛線を切り裂き、メインスパイアへと突き進む。
その行く手を阻む最後の障害は、CELLの最後の抵抗、そして復讐の化身と化したロックハート司令官だった。
アルカトラズは、ナノスーツの力を最大限に発揮し、ロックハートとの宿命の対決にも勝利。
ついに、メインスパイアの最深部、エネルギーコアへと到達する。
もはや迷いはなかった。
彼は、プロフェットから、ハーグリーヴから、そして戦場で散っていった仲間たちから託された全てを背負い、ナノスーツの全エネルギーを解放するコマンドを実行した。
凄まじい光の奔流がスーツから放たれ、メインスパイアのコアへと叩き込まれる。
連鎖反応が始まり、巨大なCeph母船は内部から崩壊を開始。
その崩壊エネルギーは、ハイヴマインドネットワークを通じてニューヨーク市内の全Cephユニットに伝播し、彼らを一斉に機能停止へと追い込んだ。
空を覆っていた禍々しい胞子の霧も急速に消え去り、マンハッタンウイルスは浄化された。
街に、そして世界に、希望の光が差し込んだ瞬間だった。
ニューヨークは、救われたのだ。
しかし、その勝利の代償として、英雄は全てを失った。
ナノスーツの全エネルギーを放出した反動は、アルカトラズの肉体と精神を完全に焼き切り、彼は深い、そしておそらくは二度と目覚めることのないであろう昏睡状態へと陥ってしまったのだった…。 - エピローグ - 魂は融合し、伝説は再生する:"They call me Prophet.":
アルカトラズの意識は、深い闇へと沈んでいく。しかし、その闇の中で、彼は別の意識の存在を感じる。それは、ナノスーツという名の揺りかごの中に、データとして保存されていた、ローレンス・“プロフェット”・バーンズの強靭な精神と、その膨大な記憶だった。
二つの魂は、もはや区別なく混ざり合い、融合し、一つの新しい存在へと昇華しようとしていた。
スーツは、失われかけた生命の灯を必死に繋ぎ止め、そしてプロフェットのデータを基盤として、アルカトラズの肉体を再構築していく。
それはもはやアルカトラズではなく、かといって完全に元のプロフェットでもない、何か新しい存在への変容だった。
その時、静寂を破るように、外部からの通信が入る。
それは、ハーグリーヴ亡き後、事態の収拾と、ナノスーツの安否を確認しようとしていた、カール・ラッシュ博士の声だった。
「応答せよ…そこにいるのは…誰だ? …プロフェットなのか?」。
長い沈黙の後、ゆっくりと光学センサーが再起動し、世界を再び捉えたスーツの主…融合し、再生した存在…は、静かに、しかし揺るぎない確信を秘めた声で、こう答えた。
「奴らは俺をプロフェットと呼ぶ (They call me Prophet.)」。
ここに、一人の兵士の物語は終わり、伝説の英雄の物語が、新たな肉体を得て再び始まる。
Crysis 2は、喪失と再生、継承と融合、そしてテクノロジーと魂の関係性という、深遠でSF的なテーマを、衝撃的なラストシーンと共に我々に突きつけ、幕を閉じる。
小説『Crysis: Escalation』が明かす、アルカトラズ最後の言葉:
この衝撃的なエンディングの裏側で、ジェームズ・“アルカトラズ”・ロドリゲスという一人の人間が、どのようにしてその最期を迎えたのか。
公式小説『Crysis: Escalation』は、その切なくも感動的な瞬間を補完している。
カウンターエムローチメントの後、奇跡的に一時的な意識を取り戻したアルカトラズ。
彼は、ナノスーツという媒介を通じて、故郷に残してきたであろう家族へ(おそらく精神的な交感によって)最後の別れを告げる、束の間の猶予を与えられた。
そして、彼は自覚する。
自身の肉体がもはや自分の意志だけでは動かせないこと、スーツが自分を生かし続けていること、そしてプロフェットの強大な意志が、スーツを通じて自分自身を導き、一つの目的へと向かわせようとしていることを。
彼は、抵抗することもできたのかもしれない。
しかし、彼は自らの運命を受け入れ、そして人類の未来を、プロフェットという存在に託すことを選択する。
「俺の名前は…アルカトラズだった。
もし、この声が誰かに届いているなら…俺のことを忘れないでほしい (My name *was* Alcatraz. If you can hear me... don't forget me.)」。
それが、ジェームズ・ロドリゲスとしての最後の言葉だった。
彼の個人的な意識は、プロフェットというより大きな目的と意志の中に、自らの役割を終えたかのように、静かに溶け込み、消えていった。
こうして、Crysis 3で我々が再び出会う「プロフェット」は、アルカトラズの若き肉体、彼の戦闘経験、そしておそらくはその純粋な魂の一部を受け継ぎながらも、ローレンス・バーンズの揺るぎない人格、豊富な知識と経験、そしてCeph殲滅という至上命題への執念を完全に宿した、真の意味でハイブリッドな、そして唯一無二の英雄として、再生を遂げることになったのである。
彼の存在そのものが、人間とテクノロジーの融合の、究極的な到達点を示していたのかもしれない。
2-4. 【2024年~2046年】暗黒の二十年:世界最終戦争、CELLの支配、そして英雄たちの受難 - 小説『Escalation』と断片情報が語る失われた時代
ニューヨークでの壮絶な戦いは、人類にとって束の間の勝利でしかなかった。
それは、これから始まる、より巨大で、より絶望的な、全地球規模の戦いのほんの序章に過ぎなかったのだ。
そして、人類が外部の脅威と戦っているその裏で、内部からは、より陰湿で、より息苦しい支配者が台頭してくる。
公式小説『Crysis: Escalation』や、ゲーム『Crysis 3』内で発見できるデータログなどで断片的に語られる、Crysis 2とCrysis 3の間をつなぐこの約二十年間は、人類の歴史において、最も暗く、最も屈辱に満ちた「失われた時代」として記憶される(あるいは、意図的に忘れ去られようとしている)だろう。
- 世界最終戦争 - Ceph、地球全土への侵攻 (2024年頃~2025年頃):
ニューヨーク事件が狼煙だったかのように、あるいは元々計画されていたのか。それまで世界各地で潜伏、あるいは小規模な活動に留まっていたCephの勢力が、突如として、連携の取れた形で全地球規模での総攻撃を開始した。
ロンドン、パリ、モスクワ、北京、東京、リオデジャネイロ…主要大陸の主要都市は軒並みCephの攻撃目標となり、次々と占領され、あるいは徹底的に破壊されていった。
それはもはや局地的な紛争やテロではなく、人類文明そのものを根絶やしにしようとするかのような、文字通りの「世界最終戦争 (Global War)」であった。人類が誇る通常兵器…戦車も、戦闘機も、軍艦も…Cephの高度なバイオメカニクス兵器、エネルギー兵器、そして圧倒的な物量の前には、多くの場合、なすすべもなかった。
各国の正規軍は次々と戦線を突破され、指揮系統は寸断され、政府機能は麻痺状態に陥った。
文明社会は、まさに崩壊の瀬戸際に立たされていた。 - CELL、混乱に乗じて権力を掌握:
この未曾有の世界的危機の中、急速にその存在感を増し、そして最終的には世界の運命を左右するほどの力を持つに至ったのが、民間軍事企業CELLだった。彼らは、ニューヨークでの「Ceph撃退」という戦果(その実態はともかく)を巧みなプロパガンダで最大限に利用し、「混乱の中で唯一機能する、人類最後の希望」としてのイメージを世界中に浸透させた。そして、創設母体であるCrynet Systemsが保有する最先端技術(もちろん、Ceph由来のテクノロジーも含まれる)と、戦争特需によって得た莫大な資金力を背景に、弱体化し指揮系統も混乱した各国の正規軍を、保護や支援を名目に次々と吸収・統合していく。
最終的にCELLは、地球上のほぼ全ての軍事力をその傘下に収め、事実上の「地球統一軍」を形成。
対Ceph戦争の全権を掌握し、その影響力は軍事のみならず、政治、経済、情報、科学技術のあらゆる領域に及ぶ、超巨大複合企業体へと変貌を遂げた。
彼らは、混乱の中から生まれた怪物だった。 - 絶望の淵での抵抗、そして反撃の狼煙:
戦争は熾烈を極めた。人類は絶望的な状況に追い込まれ、一部の地域や国家指導者は、最後の手段として核兵器の使用に踏み切った。しかし、Cephもまた、惑星規模の破壊力を持つ兵器(反物質兵器やマイクロブラックホール兵器など、彼らの母星系では既に使用されていたのかもしれない)の使用を仄めかし、世界は相互確証破壊(MAD)ならぬ、一方的な破滅の恐怖に常に晒されていた。
ロンドンでは、英国海軍がテムズ川に展開した艦隊もろとも都市中心部を焼き払い、Cephの進軍を阻止するという、悲壮極まる焦土作戦が実行された記録も残っている。
しかし、人類はただ滅びを待っていたわけではなかった。
CELLは、その強大な研究開発力を駆使し、鹵獲したCephのテクノロジーを解析・応用。
対Ceph用として特異的な効果を持つとされる生物兵器「ナノスポア」などを開発し、戦線に投入した。
これが一定の効果を上げ、人類はようやくCephの進撃を食い止め、限定的ながらも反撃に転じるための足掛かりを掴み始める。 - ツングースカ決戦 - アルファCeph捕獲という名の勝利 (2025年頃):
長く続いた消耗戦の末、戦局を決定づける情報がもたらされる。人類の情報網(おそらくはCELLの情報部門)が、地球上に展開する全てのCephユニットを統括し、ハイヴマインドネットワークの中枢となっていると思われる存在、「アルファCeph」の潜伏場所を特定したのだ。その場所は、ロシア・シベリアの奥地、ツングースカ。
奇しくも、そこは1919年にハーグリーヴとラッシュがCeph技術を初めて発見し、全ての物語が始まった因縁の地だった。
CELLは、これが戦争を終結させる唯一の機会であると判断。
持てる全ての戦力…吸収した各国の残存兵力、最新鋭の兵器、そしておそらくはプロトタイプのナノスーツ兵士なども含め…をこの一点に集中させ、アルファCeph捕獲作戦「オペレーション・マジェスティック」を決行した。
作戦は想像を絶する激戦となった。
アルファCephは、物理的な戦闘力だけでなく、強力な精神攻撃や環境操作能力をも駆使して抵抗した。
しかし、CELL(そして人類)の物量と執念が、最終的にはそれを上回った。
激しい犠牲を払いながらも、CELLはついにアルファCephの捕獲に成功する。
ハイヴマインドの頂点を失ったことで、地球上の他の全てのCephユニットは即座にネットワークからの指示を失い、あたかも糸の切れた操り人形のように、その場で活動を停止した。
約1年以上にも及んだとされる、人類史上最も壊滅的な世界最終戦争は、天文学的な数の犠牲者と、荒廃した地球という傷跡を残して、人類側の「辛勝」という形で、一応の終結を迎えた。 - 「ナノドーム」建設とCELLによる新世界秩序の確立:
Cephとの戦争を終結させた英雄として、CELLの名声と権力は、もはや揺るぎないものとなっていた。彼らは直ちに、戦後復興と「残存Cephの管理」を大義名分として、「ナノドーム計画」を全世界規模で推進し始める。Cephが活動していた主要都市や、彼らが遺した重要施設が存在する地域を、自己修復機能を持つ半永久的な巨大エネルギーシールド(ナノドーム)で次々と封鎖・隔離していく。
その公式な目的は、「Ceph由来の汚染物質や危険なテクノロジーをドーム内に封じ込め、外部への影響を防ぎつつ、時間をかけて内部環境を浄化・再生させる」というものだった。
しかし、その裏にはCELLの真の狙いがあった。
第一に、ドーム内部に残された膨大なCephテクノロジー(兵器、生体サンプル、情報データなど)を、他国や他の組織に一切渡すことなく、完全に独占し、解析・利用すること。
第二に、そしてこれが最も重要だったのだが、捕獲したアルファCeph自身を、リバティドーム(ニューヨーク)の地下深くに建造した特殊な抑制・エネルギー抽出装置(後のシステムX)に接続し、無尽蔵かつクリーンな究極のエネルギー源として利用することだった。
CELLはこの「アルファCeph電池」によって、地球上のエネルギー供給を完全に掌握。
エネルギーを人質にとる形で、戦争で疲弊し弱体化した国家や企業を次々とその経済的・政治的支配下に組み込んでいった。
そして、彼らが設定した法外なエネルギー料金を支払えない、あるいは彼らの支配体制に異を唱える国家や個人を「負債奴隷 (Debtor)」として認定し、強制労働に従事させたり、市民権を剥奪したりする、冷酷非情な企業独裁体制(コーポレート・ステート)を確立したのだ。
地球はCephの直接的な脅威からは解放された。
しかし、その代わりに、人類自身の欲望とテクノロジーが生み出した、より巧妙で、より息苦しい、CELLという名の巨大な檻の中に、自らを閉じ込めてしまったのである。
自由と民主主義は過去のものとなり、世界はCELLによって完全に管理・支配される暗黒の時代へと突入した。 - 英雄たちの受難 - プロフェット封印、サイコ剥奪、抵抗者たちの末路:
このCELLによる支配体制の確立と維持の過程で、かつて人類のために戦った英雄たちもまた、悲劇的な運命を辿ることになった。世界戦争の最中、プロフェット(アルカトラズの肉体と融合し、ナノスーツ2.0を纏う彼)とサイコは、CELLの指揮系統に入ることを良しとせず、多くの場合、独立した遊撃部隊として各地でCephと戦い、多くの戦果を上げていた。しかし、その強大な個人の力と、CELLの支配を受け付けない独立性は、統一的な世界支配を目指すCELLにとっては、危険で邪魔な存在でしかなかった。
そして運命のツングースカ決戦。
アルファCeph捕獲という共通の目標のために一時的にCELLと共闘していた彼らだったが、作戦が最終局面を迎えたまさにその時、CELLのエリート部隊による周到に準備されたEMP(電磁パルス)兵器を用いた奇襲攻撃を受ける。
ナノスーツの機能を完全に無力化された二人は、抵抗する術もなく捕縛されてしまう。
プロフェットは、その特異な存在(ナノスーツとの完全な融合状態)が、CELLの科学者たちにとって計り知れない研究対象であると同時に、制御不能な脅威であると判断され、シベリア奥地の極秘研究施設…通称「クレードル」…に移送される。
そこで彼は、特殊なEMP抑制フィールドを発生させるカプセルの中に封印され、意識のないまま、20年以上にわたる強制的な「眠り」につかされることになった。
一方、サイコは、他の捕らえられた(CELLに非協力的だった、あるいは反抗的だった)ナノスーツ兵士たちと共に、CELLの最も暗い秘密の一つである、非人道的な生体実験施設へと送られた。
そこで彼は、ナノスーツを強制的に身体から引き剥がされる「スキニング(剥奪)」と呼ばれる処置を受けた。
それは、単にスーツを脱がせるというものではない。
ナノスーツと着用者の神経・生体組織は深く結合しているため、それを無理やり引き剥がすことは、想像を絶する肉体的苦痛と、深刻な精神的トラウマをもたらす、まさに拷問であった。
サイコはこの地獄を生き延びたが、スーツと共に彼の超人的な力も、そしておそらくは彼の魂の一部も奪われ、全身に消えない傷跡を刻まれた、ただの傷ついた人間として、絶望の淵に突き落とされた。
この残虐行為の裏には、Crysis 2で死亡したロックハート司令官の甥であり、自らもナノスーツを纏うCELLの幹部となっていた「シルバーバック」など、個人的な復讐心や歪んだ選民思想を持つ者たちの存在があったとも噂されている。
そして、CELLの圧政に抵抗しようとした他の多くの人々…かつてニューヨークで戦ったネイサン・グールド博士や海兵隊員チーノ、スーツを失ってもなお戦おうとした元兵士たち、CELLの不正を告発しようとしたジャーナリストや政治家(タラ・ストリックランドのような)…彼らの多くもまた、CELLの容赦ない弾圧の前に倒れていった。
逮捕、投獄、強制労働、そして暗殺。
抵抗の灯は、次々と吹き消されていった。 - ノーマッド生存の影、最後のミステリー:
しかし、そんな絶望的な暗黒時代にも、一つの不確かだが無視できない情報が、CELLの機密データベースの片隅に、まるで亡霊のように記録され続けていた。それは、リンシャン島事件で公式には戦死(KIA)または戦闘中行方不明(MIA)とされたはずのラプターチームのメンバー、ノーマッド(ジェイク・ダン)が、実は依然として生存しており、CELLの最重要追跡対象の一人としてリストアップされていたというものだ。さらに驚くべきことに、2047年にプロフェットが目覚める少し前、CELLのエリートナノスーツ兵(おそらくは前述の「シルバーバック」)が、長年の追跡の末に、ついにこのノーマッドを発見、あるいは接触に成功したことを示唆する通信ログが存在するという。
もしこれが真実ならば、ノーマッドはリンシャン島での「死」の後、どのようにして生き延び、この20年以上もの間、CELLの執拗な追跡を逃れ続けてきたのか?
そして、シルバーバックに発見された後、彼の身に一体何が起こったのか?
彼はプロフェットのように捕らえられ、封印されたのか? それともサイコのようにスキニングされたのか? あるいは、再び姿をくらましたのか?
その答えは、Crysis 3の物語の中でも明らかにされることはなく、今なおシリーズ最大の謎の一つとして、ファンの想像力を掻き立て続けている。
こうして、人類は自らの手でCephとの戦争に(辛うじて)勝利したが、その代償として、CELLという名の巨大な檻の中に自らを閉じ込めてしまった。
自由は失われ、希望は踏みにじられ、かつての英雄たちは封印され、あるいは蹂躙され、忘れ去られようとしていた。
地球は、20年以上にわたる長く、暗く、そして寒い冬の時代を迎えることになったのである。
しかし、どんなに深い闇も、永遠には続かない。
シベリアの永久凍土の下で眠る英雄が、そして彼と一体化したナノスーツが、目覚めの時を、反撃の時を、静かに、しかし確実に待っていたのだ。
2-5. 【2047年11月】リバティドーム解放戦争 - Crysis 3:最後の預言者、宿命の帰還、そして夜明けへの戦い
舞台: CELLによる鉄壁の企業独裁体制が確立されてから20年以上が経過した西暦2047年。
かつて自由と繁栄の象徴だったニューヨークシティの残骸は、直径2キロメートルにも及ぶ巨大な自己修復型ナノテクノロジー・エネルギーシールド、「リバティドーム」によって外界から完全に封鎖・隔離されていた。
CELLはこのドームを、捕獲したアルファCephから無尽蔵のクリーンエネルギーを抽出し、世界に供給するための巨大プラント「システムX」の中枢であり、同時に「Ceph残存生物の危険な生態系を管理・研究するための隔離施設」であると公表し、その恩恵(と称する支配)を世界に振りかざしていた。
その宣言は半分は真実であり、半分は欺瞞だった。
ドーム内部は、20年以上の歳月と、ドーム自体が作り出す特殊な環境制御(おそらくはCeph由来のテラフォーミング技術の応用)の結果、もはや人間の都市ではなくなっていた。
崩壊した摩天楼は巨大な樹木や蔦に覆われ、高温多湿の亜熱帯気候となり、かつての道路は河川や湿地帯に、公園は鬱蒼とした草原や渓谷へと変貌していた。
そこは、まるで人類文明が滅び去った後の地球を描いたSF映画のような、あるいは異星のジャングルのような、美しくも危険な「都市ジャングル (Urban Rainforest)」へと姿を変えていたのだ。
CELLはこの特異な環境を「7つの秘境 (Seven Wonders)」と名付け、エリアごとに管理していたが、そこには野生化した(あるいは遺伝子操作されたか、Cephの影響で変異した)危険な生物たちと、そしてもちろん、ドームの秩序(と秘密)を守るためのCELLの最新鋭武装兵士や、自律型の監視・戦闘ドローンが徘徊する、文字通りの無法地帯となっていた。
主人公、永劫の眠りからの帰還: この緑に覆われた牢獄に、そしてCELLが支配する暗黒の世界に、反撃の狼煙が上がろうとしていた。
シベリアの極寒の地下施設…「クレードル」…で、20年以上もの間、特殊なEMP抑制カプセルの中に封印され、強制的な眠りについていた伝説のナノスーツ兵士、プロフェットが、ついにその目を開いたのだ。
彼を解放したのは、かつての戦友であり、今はCELLへの復讐を誓うレジスタンスの戦士となっていた、サイコとその仲間たちだった。
永い眠りの間に、プロフェットの肉体(それは元々アルカトラズのものだった)と精神、そして彼と一体化したナノスーツ2.0は、さらなる融合と進化を遂げていた。
スーツはCephテクノロジーとの共鳴を深め、もはや単なる兵器ではなく、彼の意志そのものを反映する、ある種の有機的な存在へと変貌していた。
彼は、眠りの中で、Cephのハイヴマインドの残響や、アルファCephの存在、そして人類に迫る最後の危機を予見していたのかもしれない。
彼は、この歪んだ世界に終止符を打ち、全ての戦いを終わらせるために、最後の預言者(Prophet)として、宿命の戦場へと帰還したのだ。
物語の展開 - 支配への反旗、宇宙的脅威との最終対決、そして人間性の再生:
- 傷だらけの再会、揺れる戦友の心:
プロフェットを長い眠りから解放し、リバティドームへと導いたのは、かつての戦友、サイコ(マイケル・サイクス)だった。しかし、20年以上の歳月と、CELLによる非道な仕打ちは、彼を大きく変えていた。ナノスーツを剥奪され(スキニング)、その肉体と精神に深い傷を負った彼は、もはやかつての自信に満ちた猛々しい兵士ではなかった。
彼はプロフェットの帰還を心から喜びつつも、今や超人的な力を持つプロフェット(と、彼自身がかつて纏っていたナノスーツ)に対し、憧憬、嫉妬、怒り、そして自身の無力感からくる複雑な感情を隠せないでいた。
「俺はもう、お前のようには戦えない…」。
彼の苦悩は深い。
彼らを支援し、レジスタンス活動の拠点を提供していたのは、有能な女性科学者であり、組織のリーダーでもあるクレア・フォンタネッリ。
彼女はかつてCELLの研究員であり、その際にサイコをスキニング施設から救い出した恩人でもあった。
そして、二人は恋人同士でもあったが、クレアもまた、誰にも言えない過去の秘密を抱えていた。
プロフェットは、友の苦悩と、絶望的な状況の中でも抵抗を続ける人々の姿を目の当たりにし、CELLによる支配を終わらせ、そして未だ人類を脅かすCephの根源を断ち切ることを、改めて鋼の意志で誓う。 - 支配の心臓「システムX」への潜入:
レジスタンスの当面の戦略目標は、リバティドームの中心部に位置し、CELLのエネルギー独占と世界支配の文字通りの心臓部となっている巨大エネルギー施設「システムX」を破壊することだった。プロフェットは、その異常に進化したナノスーツのセンサー能力と、彼だけが感じ取れるCephハイヴマインドの微弱な波動から、システムXが単なる発電施設ではないこと、そしてその最深部のエネルギーコアに、途方もなく強大で、悪意に満ちた意識…捕獲されたはずのアルファCeph…が、生きたまま封じ込められていることを直感する。システムXは、アルファCephからエネルギーを無尽蔵に搾取するための装置であると同時に、その計り知れない力が再び解放されないように抑え込むための、巨大なエネルギーの檻でもあったのだ。
CELLは、人類を滅ぼしかけた最悪の脅威を、自らの繁栄と支配の礎として利用するという、あまりにも危険で冒涜的な行為を行っていた。
この事実は、CELLの最高幹部と、システムXの開発に直接関わったごく一部の科学者(その中には、皮肉にもクレアも含まれていた)だけが知る、最高レベルの機密事項だった。 - 百年の盟友、その裏切りと、愛する者の死:
レジスタンスの活動には、意外な、そして伝説的な人物が影から協力していた。かつてジェイコブ・ハーグリーヴと共にナノスーツを開発したもう一人の創造主、カール・エルンスト・ラッシュ博士。彼もまたCeph由来の技術によって1世紀以上の時を生きており、CELLの内部情報やCephに関する深い知識を提供し、プロフェットたちをシステムX破壊へと導くかに見えた。
しかし、それは全て、アルファCephによって仕組まれた巧妙極まりない罠だった。
ラッシュ博士は、長い年月の間に(あるいはシステムXの研究に深く関わる中で)、アルファCephの強力で狡猾な精神支配を受け、完全にその意志の傀儡と化していたのだ。
彼の真の目的は、プロフェットたちを利用してシステムXの安全装置を解除させ、アルファCephをこの世に再び解き放つことにあった。
その邪悪な企みが明らかになった時、ラッシュ(の精神を乗っ取ったアルファCeph)は、プロフェットに対して強力なサイキック・エネルギー攻撃を仕掛ける。
プロフェットはナノスーツの防御力で辛うじてその直撃を耐えるが、その攻撃の余波は、近くにいたクレアを無情にも捉え、彼女に致命傷を負わせてしまう。
薄れゆく意識の中、クレアは嗚咽しながら、愛するサイコに衝撃的な最後の告白をする。
彼女自身が、過去にCELLの研究員として、サイコを含む多くのナノスーツ兵士たちをスキニングする非人道的な実験に(内心では苦悩しながらも、命令に従って)関与してしまっていたことを。
「本当に…ごめんなさい、マイケル…愛してる…」。
罪悪感と後悔、そしてサイコへの変わらぬ愛を胸に、彼女はサイコの腕の中で静かに息を引き取った。
愛する人を失い、そして裏切りの事実に打ちのめされたサイコは、絶叫し、怒りに駆られてラッシュを撃つ。
撃たれたラッシュは、アルファCephの支配から解放されたのか、最期の瞬間に一瞬だけ人間の意識を取り戻し、プロフェットに「奴を…アルファを…止めなければ…」と懇願するように言い残し、アルファCephを道連れにしようとしたのか、あるいは単に力尽きたのか、その百数十年にも及んだ波乱の生涯を閉じた。
ハーグリーヴとラッシュ、ナノスーツを生み出した二人の天才は、いずれも自らが求めた力によって破滅するという、SF史に残るであろう皮肉な運命を辿ったのだった。 - 解き放たれた終末の獣、アルファCeph覚醒、そして最終戦争の開始:
仲間たちの死と裏切りという深い悲しみを乗り越え、プロフェットはシステムXの中枢へと到達する。アルファCephを解放することが、どれほどのリスクを伴うか。それを誰よりも理解していながらも、CELLによる歪んだ支配を終わらせ、そしてCephという根源的な脅威と最終的な決着をつけるためには、もはやこの道しかないと判断した彼は、システムXの機能を完全に停止させる決断を下す。その瞬間、リバティドーム全体が、いや、地球そのものが悲鳴を上げるかのように激しく振動し、ニューヨークの地下深くから、禍々しい紫色のエネルギーが天を衝くように噴出する。
システムXというエネルギーの檻から解き放たれたアルファCephが、その完全な力と悪意をもって、ついにこの世界に覚醒したのだ。
アルファCephは即座に、その真の目的を遂行するために行動を開始。
それは、ニューヨークの地下深くに、数百万年もの間隠されていた、Cephの超巨大な戦略級兵器…惑星間を繋ぐ巨大なワームホール発生装置…を起動させることだった。
その目的は、地球と、Cephの母星系(あるいは侵略艦隊が集結している拠点星系)とを直接連結する恒久的なゲートを開き、そこからCephの主力艦隊を無制限に呼び寄せ、最終的には地球全土の環境をCephに適したものへと強制的に作り変える(=現在地球上に存在する全ての生命体を根絶やしにする)ことにあった。
ワームホール発生装置が起動シーケンスを開始すると同時に、アルファCephの覚醒に呼応して、世界中で活動を停止していたはずのCephの残存ユニット(リバティドームの内外を問わず、地中や海底に潜んでいたものも含めて)が一斉に再活性化。
人類にとって、これが本当の、そしておそらくは最後の戦いの始まりを告げる、終末の号砲となった。
- 友の魂を背負って、英雄、限界を超える:
眼前に迫る宇宙的スケールの脅威と、足元から次々と湧き出してくる活性化した無数のCeph。絶望的な戦況の中、プロフェットと共にここまで戦い抜いてきたサイコが、最後の、そして最も英雄的な選択をする。彼は、愛するクレアを失い、自らはスーツを持たない無力さを痛いほど感じていた。しかし、プロフェットが彼に言った言葉、「スーツがあろうがなかろうが、お前は最高の兵士(ソルジャー)だ」が、彼の心に最後の火を灯した。
彼は、プロフェットがアルファCephとの決戦に、そしてワームホール発生装置の破壊に集中できるよう、追撃してくるCELLの残存部隊や、活性化し数を増していくCephの大群を、たった一人で引き受け、陽動することを決意する。
それは生還を期さない、文字通りの捨て身の作戦だった。
「行ってこい、プロフ!お前ならやれるはずだ!俺たちのために、ケリをつけろ!」。
それが、プロフェットが聞いた、友マイケル・“サイコ”・サイクスの、魂からの最後の言葉だった。
友の犠牲と覚悟を、プロフェットはその全身全霊で受け止めた。
もはや迷いも、恐れもなかった。
彼は、人類が、いや、この星に生きる全ての生命が生き残るために、自らに課せられていた最後の枷を外すことを決意する。
ナノスーツに組み込まれていた最終安全プロトコル…性能と安定性を維持するために、そしておそらくは着用者の人間性を保つために設けられていたリミッターを、自らの強靭な意志の力で強制的に解除したのだ。
その瞬間、ナノスーツは設計限界を超えたエネルギー奔流に包まれ、プロフェットの肉体と精神と完全にシンクロ。
もはやそれは単なる「装備」ではなく、彼の意志そのものを具現化する存在へと昇華した。
スーツの外殻は形状を変化させ、内部のエネルギーコアは恒星のように眩い輝きを放ち始め、そして彼の精神は、軌道上に存在するCELLの巨大エネルギー衛星「アークエンジェル」の制御システムにさえ深くリンクし、それを自らの手足のように、意のままに操るほどの、まさに神懸かり的な力を手に入れた。
彼は、人間と、機械と、そしてCephのテクノロジーすらも超越した、究極の戦士へと覚醒したのだ。
- 神々の戦い - アルファCeph、そして宇宙からの侵略艦隊との最終対決:
覚醒したプロフェットは、時空を歪ませながらワームホールを開き、地球を破滅させようとする元凶、アルファCeph本体との最終決戦に臨む。アルファCephは、もはや物理的な実体を持たない純粋なエネルギーと悪意の集合体のような存在であり、空間を歪め、無数のCeph下位ユニットを召喚し、プロフェットの精神に直接干渉しようとするなど、圧倒的な力で抵抗する。しかし、リミッターを解除し、その真の力を解放したプロフェットもまた、もはや常識の範疇にはなかった。彼は、ナノスーツの全能力…超高速機動、絶対的な防御力、破壊的な攻撃力…を駆使し、さらに軌道上のアークエンジェル衛星からの超高出力エネルギービーム(それはアルファCeph自身のエネルギーを転用したものでもあった)を、ピンポイントで、かつ連続的に誘導・照射させることで、アルファCephを徐々に、しかし確実に追い詰めていく。
それは、二つの超越的な存在による、惑星の運命を賭けた壮絶な死闘だった。
そしてついに、プロフェットは渾身の一撃、アークエンジェルの最大出力ビームとナノスーツのエネルギーを融合させた究極の攻撃によって、アルファCephを完全に消滅させることに成功する。
ハイヴマインドの頂点を失ったことで、地球上で活動していた全てのCephユニットは連鎖的に機能を停止し、その構造を維持できずに崩壊していった。
- 最後の脅威 - 侵略母艦、ワームホールごと消滅:
アルファCephは倒した。地球上のCephの脅威は去った。しかし、戦いはまだ終わっていなかった。アルファCephが死の間際に起動を完了させていたワームホールは、既に不安定ながらも完全に開ききっており、その歪んだ時空の裂け目の向こう側から、絶望的なまでに巨大な、都市ほどの大きさもあるCephの主力侵略母艦が、その禍々しい威容を現しつつあったのだ。
母艦からは、無数の後続艦艇が出撃準備を整えているのが見えた。
地球にとっては、まさに最後の審判の時だった。
母艦から放たれた強力な重力トラクタービームが、アルファCephを倒したばかりのプロフェットを捉える。
彼は抵抗する間もなく大気圏外、漆黒の宇宙空間へと引きずり出されてしまう。
眼前に迫る絶望的なまでの巨大さを持つ敵母艦、そしてワームホールから溢れ出そうとしている無限とも思える敵の増援。
今度こそ万事休すかと思われた、その瞬間。
プロフェットには、まだ最後の切り札が残されていた。
それは、皮肉にもCELLが地球軌道上に建造し、アルファCephから搾取したエネルギーを貯蔵・中継していた戦略兵器衛星「アークエンジェル」。
プロフェットは、リミッター解除によって獲得したナノスーツの持つ驚異的な遠隔ハッキング能力と、衛星の兵器制御システムへの完全なアクセス権限を最大限に駆使し、アークエンジェルが蓄積していた全てのエネルギー(それはアルファCeph自身のエネルギーでもあった)を、一筋の巨大な、惑星を穿つほどの光の槍として解き放つよう命令した。
ターゲットは、眼前のCeph母艦、ただ一点。
アークエンジェルから放たれた、人類(とCeph)のエネルギーの全てを込めた渾身の一撃は、母艦の分厚い装甲も、エネルギーシールドも、まるで紙のように貫通し、その中枢動力炉を直撃。
連鎖的に誘発された超新星爆発にも似た大爆発が、静寂の宇宙空間で発生した。
巨大な母艦は、不安定なワームホール構造物そのものを巻き込みながら、文字通り宇宙の塵へと砕け散った。
異次元からの侵略の門は、完全に、そしておそらくは永遠に閉ざされたのだ。
Cephによる地球侵略の脅威は、ここに最終的に、そして完全に潰えたのである。
プロフェットは、たった一人で、星々からの侵略者を打ち破ったのである。
- エピローグ - 英雄の帰還、そして人間性の夜明け:
Ceph母艦の壮絶な爆発に巻き込まれ、プロフェットは燃え尽きながら地球へと落下していく。しかし、彼は死ななかった。リミッター解除されたナノスーツの究極的な防御能力と自己修復機能、そしておそらくは爆発の際に吸収したであろう莫大な(もしかしたら生命創造に匹敵するほどの)エネルギー、そして何よりも、全てを終わらせ、生き延びるという彼の超人的な意志が、再び奇跡を起こしたのだ。彼が意識を取り戻したのは、波の音が聞こえる、穏やかな砂浜の上だった。
見渡す景色は、熱帯の緑と青い海…それは、全ての始まりの地、そして多くの悲劇が生まれた場所…リンシャン島を強く想起させた(あるいは、ナノスーツが彼の深層心理にある原風景を、一種の仮想現実として投影していたのかもしれない)。
そして、彼の身体には、さらなる驚くべき奇跡、あるいは究極の進化と呼ぶべき変化が起きていた。
アークエンジェルから注がれ、Ceph母艦の爆発で変質した莫大なエネルギーは、ナノスーツという媒介を通じて、彼の肉体を原子レベルで再構成し、失われていたはずの、ローレンス・バーンズとしての人間本来の有機的な姿を、完璧に復元していたのだ。
ナノスーツそのものが消滅したわけではなかった。
それは透明化し、彼の皮膚組織と完全に同化し、もはや彼自身の一部となっていたが、彼はもはやスーツに支配された存在ではなかった。
彼は、スーツの力を制御し、自らの意志で人間として存在する道を選び取ったのだ。
彼は静かに立ち上がり、波打ち際へと歩み寄る。
そして、軍服のポケットから、かつての戦友たちの名…リンシャン島で散ったアズテックとジェスター、そしてニューヨークで愛と命を捧げたクレア…が刻まれた、古びた認識票(ドッグタグ)を取り出すと、万感の思い、感謝と、鎮魂の祈りを込めて、それを穏やかな海へと、そっと投げ捨てた。
それは、過去の戦いの記憶、失われた仲間たちの魂、そして「プロフェット」という名の重すぎる宿命との、静かで、しかし決定的な決別を意味していたのかもしれない。
「思い出すんだ。俺が誰なのかを…俺が、これを成し遂げた理由を…我々は、世界を救ったんだ。それを、決して忘れるな。」
彼は、自分自身に、そしてあるいは遠い空で見守ってくれているであろう戦友たちに語りかけるように呟くと、決意を込めてこう付け加えた。「これからは、ローレンス・バーンズと名乗ろう」。
生身の姿を取り戻した彼は、しかし次の瞬間、ナノスーツの最後の機能、あるいは彼自身の新たな能力となったのか、ステルス迷彩を起動させると、その姿を周囲の風景の中に完全に溶け込ませる。
そして、静かに、しかし未来へと向かう確かな意志を感じさせる足取りで、緑深いジャングルの奥深くへと、彼は消えていった。
英雄プロフェットの戦いは終わった。
しかし、一人の人間、ローレンス・バーンズとしての人生は、ここから、静かに、そしておそらくは誰も知らない場所で、再び始まるのかもしれない。
- ポストクレジットシーン - サイコ、最後のけじめ:
物語は、まだ完全には終わらない。エンドクレジットが全て流れた後、短いながらも強烈な余韻を残すシーンが挿入される。場所は、CELLの崩壊後、旧体制の責任を問われ、生き残った元CELLの幹部たちが拘束・収監されていると思われる、厳重な警備体制が敷かれた地下施設。闇の中、監視カメラの死角を縫うように、一人の男が音もなく侵入する。
その男は、死んだはずの英雄、サイコ(マイケル・サイクス)だった。
彼は、おそらくレジスタンスのネットワークか何かを利用してこの場所を突き止め、単独で潜入したのだろう。
彼は、施設の警備兵を最小限の動きで、しかし確実に排除していく。
そして、恐怖に顔を引きつらせ、見苦しい命乞いをする元幹部たちが閉じ込められている独房エリアへと到達する。
彼は、彼らを冷徹な、しかしその奥に深い悲しみと怒りを湛えた目で見据えると、静かに、しかし迷うことなく、手にしたサイレンサー付きの銃の引き金に指をかける…。
クレアを死に追いやり、自らを、そして多くの仲間たちを筆舌に尽くしがたい苦痛に陥れたCELLという組織とその責任者たちに対する、彼なりの最後の「けじめ」。
それは、もはや法による正義の裁きではなかった。
戦場を生き抜き、全てを奪われた男が行う、私的な、しかし彼にとっては必要な復讐の儀式だったのかもしれない。
この銃声(それは我々には聞こえないが)をもって、Crysis三部作に連なる全ての因縁に、完全なる終止符が打たれたと言えるだろう。
Crysis三部作の物語は、かくして、壮大にして感動的な、そして多くの問いを残す形で幕を閉じた。
それは、一人の英雄が、人類を二つの巨大な脅威(地球外からの侵略者Cephと、人類自身の内なる敵CELL)から解放し、その過程で自己の存在意義を問い続け、最終的には人間性を取り戻す(あるいは超越・再定義する)という、類稀なるスケールで描かれたSF叙事詩であった。
しかし、広大なCrysisユニバースには、そして英雄ローレンス・バーンズの未来には、まだ語られざる物語が、無限の可能性と共に眠っているのかもしれない。
Crysisユニバースを形作る三本の柱第3章:世界の骨格
Crysisの物語が、なぜこれほどまでに我々の心を掴むのか。
それは、ただ派手なアクションや美しいグラフィックだけでなく、その世界観を支える設定が、練り込まれていて、示唆に富んでいるからに他なりません。
ここでは、物語の根幹をなす三つの重要な要素、「ナノスーツ」「Ceph」「CELL」について、その本質と、物語の中で果たした役割、そして我々がそこから読み取れるかもしれない意味を、ちょっと深掘りしてみたいと思います。
お付き合いいただけますか?
3-1. ナノスーツ (Nanosuit) - 人類を進化させた究極の鎧、あるいは悪魔の契約?
Crysisと言えば、まず思い浮かぶのがこれですよね。
あの、着るだけで超人になれちゃう夢のような(そして時に悪夢のような)戦闘服、「ナノスーツ」。
単なるハイテク装備という枠を超えて、物語のテーマそのものを象徴する、まさに主役級の存在でした。
- その出自、禁断の果実:
表向きは、米軍の次世代兵士計画の一環として、巨大軍需企業Crynet Systems(ハーグリーヴとラッシュが創設)が開発した、最先端の軍事用強化外骨格。でも、その心臓部、驚異的な性能の源泉は、実は地球のテクノロジーではありませんでした。それは、1919年にハーグリーヴたちがシベリアのツングースカで発見した、Ceph由来の異星テクノロジーを、何十年もかけて解析し、模倣し、そして人類の身体に適合するように再設計したものだったんです。まさに、プロメテウスが天界から盗んだ火のように、人類に計り知れない力をもたらすと同時に、制御不能な危険性をも秘めた、禁断のテクノロジーだったわけですね。
- もはや魔法? その驚異的な機能:
ナノスーツができることって、冷静に考えると「それ、もう魔法じゃん!」ってレベルですよね。- 着るんじゃない、融合するんだ: 微細なナノマシンの集合体でできていて、着用者の皮膚や神経系と直接結合。思考するだけでスーツが反応する、まさに「第二の皮膚」。でも、脱ぎたくても簡単には脱げない、ちょっと怖い関係でもあります。
- 自己修復&自己進化: スーツ自体がダメージを自己修復するだけでなく、周囲の環境やエネルギー、倒した敵(特にCeph)の情報を取り込んで、どんどん性能がアップしていく。まるで生き物みたいに。RPGのレベルアップシステムをリアルにした感じ?
- 戦場のカメレオン、モードシフト: 状況に合わせて、「カッチカチやぞ!」な防御力のアーマーモード、「怪力&高速移動!」のパワーモード(初代ではストレングス/スピードに分かれてましたね)、そして「え、どこ行った?」な光学迷彩のクロークモードに瞬時に変身! これを使いこなすのが、Crysisの醍醐味でした。
- 見えすぎちゃって困る? 戦術バイザー: 敵の位置、弱点、武器の種類、周囲の地形、ハッキング可能なオブジェクト…もう、戦場が丸見え。Crysis 3では、敵の思考パターンまで予測するような描写も。やりすぎでは? と思いつつも、これがなきゃ生き残れない!
- 死なない(かもしれない)体: 酸素供給、温度調整、放射線防護はもちろん、致命傷を受けてもスーツが自動で治療を開始。場合によっては、着用者の組織を分解してでも生命維持を優先する…って、それはそれで怖いんですが。まさに究極のサバイバルツール。
- 進化の軌跡、そして失われる人間性:
ナノスーツはシリーズを通して進化しましたが、それは必ずしも良いことばかりではありませんでした。- Nanosuit 1.0 (初代/Warhead): まだ「着る兵器」感が強い。モード切り替えも手動で、エネルギー管理もシビア。でも、この不便さが逆に戦略性を生んでいた気もします。
- Nanosuit 2.0 (2/3): より洗練され、強力に。モードは統合され、アップグレードも可能に。でも、ここからが問題。
着用者との融合が劇的に進み、スーツなしでは生きていけなくなる。
そして、着用者の記憶や人格までもデータとしてバックアップし始める…って、それ、もうバックアップじゃないですよね? 魂のコピー?
- Nanosuit 3 (3終盤): プロフェットがリミッターを解除した最終形態。もはや物理法則すら超越しかねない力を発揮。着用者の意志と完全に一体化し、肉体さえも再構成する。
これは進化なのか? それとも、人間という種の終わりなのか?
- 物語が問いかけるもの:
ナノスーツは、単なるゲームのギミックではありません。それは、「テクノロジーは人類をどこへ連れて行くのか?」という、私たち自身の未来にも関わる普遍的な問いを突きつけます。力は魅力です。でも、その力と引き換えに、私たちは何を失うのか?
人間であることの意味とは?
ナノスーツの進化と、それを纏った者たちの運命は、その答えを探す旅そのものだったと言えるでしょう。
3-2. Ceph (セフ) - 宇宙からの深淵、理解を超えた隣人?
人類の存亡を脅かした、謎めいた異星からの侵略者「Ceph」。
イカのような、機械のような、なんとも形容しがたい、しかし一度見たら忘れられない強烈なインパクトを持つ彼ら。
彼らは一体何者で、何を目的として地球に来たのでしょうか?
物語を通して、その断片は見えてきましたが、全体像は未だに深い霧の中です。
- 遥か彼方からの訪問者:
彼らの故郷は、この天の川銀河ですらない、遠い遠いM33銀河。数億年という、我々の想像を絶する時間をかけて進化し、星々を渡る技術を手に入れた超古代文明。地球に来たのは、恐竜時代というのですから、我々人類にとっては「大先輩」どころか、神話に出てくる「古きもの」のような存在かもしれません。 - 有機と無機の融合体:
彼らのテクノロジーは、我々が知る機械工学とは一線を画す、「バイオメカニクス」に基づいています。まるで生きているかのように自己修復し、環境に適応して進化する兵器や外骨格(エクソスーツ)。彼ら自身の本体は、地球の環境(特に重力や大気)には脆いらしく、多くの場合、これらの機械的な「殻」を纏って活動します。リンシャン島内部でノーマッドが見た半透明の浮遊生物が、彼らの素の姿に近いのかも?
- その目的、永遠の謎?:
彼らがなぜ地球に執着したのか、その真の目的は、結局のところ「諸説あり」としか言えません。- 侵略者説: 一番分かりやすい解釈。地球の資源か、あるいは地球そのものを新たなコロニー(彼らの言うハイヴワールド)にするために、計画的に侵略してきた。リンシャン島での偵察、ニューヨークでの地上戦力投入、そして最終的なワームホールによる主力艦隊召喚…という流れは、この説を裏付けているように見えます。
- 庭師・管理者説: もっとスケールの大きな話。彼らは太古から地球の生命進化を見守る「庭師」のような存在で、人類が環境破壊や急速な技術発展によって、星全体のバランスを崩す「害虫」と見なされたため、「駆除」あるいは「調整」に乗り出したのではないか、という説(主に小説『Legion』やハーグリーヴの考察)。
- あるいは、もっと別の…? もしかしたら、彼らの行動原理は、我々人間の持つ「侵略」や「管理」といった概念では捉えきれない、もっと異質なものだったのかもしれません。例えば、彼らは個体としての意識を持たず、ただ宇宙的な規模で情報やエネルギーを収集・拡散する、一種の情報生命体だったとか? あるいは、人類との接触そのものが、彼らにとっても予期せぬ「進化」のきっかけだったとか? 想像は尽きません。
- 繋がる意識、ハイヴマインド:
Cephの個々のユニットは、まるで蜂や蟻のように、より高次のネットワーク化された集合意識「ハイヴマインド (Hive Mind)」によって統制されています。これにより、彼らは驚くほど効率的で、連携の取れた組織的な戦闘行動を可能にしていました。プロフェットがナノスーツを通じてこのハイヴマインドにアクセスできたことは、彼らにとっては最大の誤算だったでしょうね。 - 頂点に立つもの、アルファCeph:
地球に展開したCephハイヴマインドの、いわば女王蜂、あるいはサーバーコンピューターのような存在が「アルファCeph」でした。Crysis 3のラスボスですね。物理的な戦闘力はもちろん、強力な精神支配能力や、周囲の環境を自在に操る力まで持つ、まさに規格外の存在。彼(それ?)を倒したことで、地球上のCephネットワークは完全に沈黙しました。
でも、彼がCeph全体の頂点だったのか、それとも地球方面軍の司令官に過ぎなかったのかは、実はよく分かっていません。
- 人類を超越したテクノロジー:
彼らの科学技術は、まさに「オーバーテクノロジー」の塊。強力なエネルギー兵器、物質の転送、重力制御、環境改変(リンシャン島の氷漬け!)、生物兵器(マンハッタンウイルス - 人間の組織を液化させる胞子兵器)、そして精神支配やテレパシー能力まで、その力は計り知れない。皮肉にも、人類が彼らに対抗するために用いたナノスーツの根幹技術は、彼ら自身のテクノロジーの模倣から生まれたものだったという事実が、その凄まじさを物語っています。
Cephは、我々人類にとって、圧倒的な力を持つ「未知なる他者」でした。
彼らとの戦いは、人類に存亡の危機をもたらしましたが、同時に、我々が持つ可能性(ナノスーツに代表される技術力と、人間の持つ不屈の意志)を引き出し、進化(あるいは変容)を促す触媒となったのかもしれません。
彼らの存在は、Crysisの物語に、宇宙的なスケールと、人間中心主義的な視点だけでは解き明かせない、深遠な謎を与え続けています。
3-3. CELL (Crynet Enforcement & Local Logistics) - 人間の顔をした怪物、テクノロジーの暴走
Cephという外部からの脅威と並び、あるいはそれ以上に、人類社会を内側から蝕み、プレイヤーの前に立ちはだかった存在。
それが、巨大企業複合体「CELL」です。
彼らは、ナノスーツという究極の力を手にした人間がいかに容易に堕落し、他者を支配しようとするか、その普遍的な危険性を、SFという舞台で見事に描き出した、もう一つの「怪物」でした。
- 始まりは護り手、しかし…:
CELLは元々、ナノスーツを開発したCrynet Systems社の、いわば企業内特殊部隊として設立されました。その目的は、Crynet社が保有する高度な技術資産(特にナノスーツ関連)を、産業スパイやテロリスト、あるいは敵対国家から防衛・管理すること。設立当初は、高度な訓練を受け、最新鋭の装備(時には非公式なプロトタイプ兵器も)を運用する、エリート中のエリート集団だったはずです。しかし、創設者ハーグリーヴの野心と、Ceph技術の掌握により、その目的は徐々に変質していく。
- 混乱は蜜の味? 権力への階段 (Crysis 2):
Ceph侵攻によるニューヨークの混乱は、CELLにとって権力拡大の絶好の機会となりました。治安維持を名目に軍事力を展開し、情報統制を行い、そして最大の目標であるナノスーツ(とプロフェット)の確保に執念を燃やした。彼らにとって、人類の危機は、自らの力を証明し、影響力を拡大するための、またとないビジネスチャンスでもあったのです。 - 世界を覆う企業帝国、支配と搾取 (Crysis 3):
Cephとの世界戦争を「勝利」に導いた(というプロパガンダを流布した)ことで、CELLは絶対的な権力と正当性を手にする。捕獲したアルファCephをエネルギー源とする「システムX」によって世界のエネルギー供給を完全に独占し、事実上の世界政府として君臨。逆らう者には容赦ない弾圧を加え、エネルギー負債者を奴隷として使役する、冷酷な企業独裁体制を築き上げた。ナノスーツ兵士からスーツを剥ぎ取る非人道的な「スキニング」は、彼らの倫理観の完全な崩壊を象徴していた。
- 驕れる者久しからず、必然の崩壊:
しかし、その絶対的な支配も永遠ではなかった。プロフェットの帰還とレジスタンスの決死の抵抗、そして最終的には自らが利用していたアルファCephの解放によって、CELLの支配体制はその根幹から揺らぎ、指導者層は失脚・拘束され、組織は完全に崩壊した。「力は腐敗する。絶対的な力は絶対に腐敗する」という言葉がありますが、CELLの物語は、まさにその言葉をSFの世界で証明してみせたと言えるでしょう。
- 物語が示すもの:
CELLは、Crysisの物語において、Cephとは異なる、しかし同様に重要な「敵」だった。彼らは、我々人類自身の内にある、権力への渇望、他者を支配しようとする欲望、そしてテクノロジーを妄信し暴走させてしまう危険性、そういった「内なる敵」を象徴しています。Cephがいなくなっても、人間自身の問題が解決されなければ、結局は同じような悲劇が繰り返されるのではないか?
CELLの台頭と崩壊は、そんな重い問いを、我々自身に投げかけているのです。
ナノスーツ、Ceph、CELL。
この三つの要素が複雑に絡み合い、互いに影響を与え合うことで、Crysisの物語は、単なるSFアクションの枠を超えた、深みと広がりを持つ、忘れられない体験を我々に提供してくれたのです。
Crysisサーガを駆け抜けた者たちの肖像と運命第4章:魂の肖像
Crysisの壮大な物語を彩ったのは、魅力的な(そして時には憎らしい)登場人物たちです。
彼らの選択、葛藤、愛、裏切り、そして避けられない運命が、このサーガに血肉を与え、我々の心を揺さぶりました。
ここでは、物語の中心となった主要なキャラクターたちにスポットライトを当て、彼らがどのような役割を果たし、どのような結末を迎えたのか、その魂の肖像を深く描き出します。
まるで、同窓会名簿をめくるような気持ちで…ちょっと違うか(笑)。
- プロフェット (Prophet / ローレンス・バーンズ少佐):
- 役割と変遷: Crysisサーガ全体の真の主役であり、最も過酷な運命を背負った悲劇的英雄。当初はラプターチームを率いる冷静沈着なリーダーだったが、リンシャン島でのCephとの接触が彼の全てを変えた。Cephの脅威を誰よりも深く理解し、その殲滅に全てを捧げる孤高の戦士へと変貌。
Crysis 2ではウイルスに侵され、自らの死を悟ると、後継者アルカトラズにナノスーツと「預言者(プロフェット)」の名、そして未来を託して散る…かに見えた。
しかし、彼の強靭な意志と膨大な経験は、ナノスーツという器の中にデータとして保存され、アルカトラズの肉体と融合。
Crysis 3で奇跡的な復活を遂げ、人類最後の希望として再び立ち上がる。
- 運命の終着点: ナノスーツと完全に一体化し、その限界を超えた力を解放してアルファCephを打倒、地球を宇宙的脅威から救うという究極の使命を果たす。その代償として人間性を失いかけたかに見えたが、最終決戦の後、アークエンジェルのエネルギーによって奇跡的に人間としての肉体を取り戻す(あるいは、スーツとの共生関係が新たなステージに進んだのかもしれない)。過去の戦いで失われた仲間たちのドッグタグを海に投げ捨て、「ローレンス・バーンズ」として生きることを選択。
静かに、しかし確かな意志を持って、彼は新たな人生(あるいは、人知れぬ守護者としての役割?)へと歩み去っていきました。
彼の物語は、自己犠牲、進化、贖罪、そして人間とは何かという問いそのものであった。
- 役割と変遷: Crysisサーガ全体の真の主役であり、最も過酷な運命を背負った悲劇的英雄。当初はラプターチームを率いる冷静沈着なリーダーだったが、リンシャン島でのCephとの接触が彼の全てを変えた。Cephの脅威を誰よりも深く理解し、その殲滅に全てを捧げる孤高の戦士へと変貌。
- ノーマッド (Nomad / ジェイク・ダン二等軍曹):
- 役割: 我々プレイヤーが最初に感情移入した、『Crysis』本編の主人公。特別な能力があるわけではない(ナノスーツは着てますが!)、しかし極限状況下でも冷静沈着に任務を遂行しようとする、まさにプロフェッショナルな特殊部隊員。彼の視点を通して、我々はリンシャン島の恐怖と驚異を体験しました。
- 消えた英雄、残された謎: リンシャン島事件の悲劇的な結末(コミック版)において、彼はプロフェットとサイコをCIAの凶弾から守るため、自らの命を犠牲にした…とされています。公式記録上はMIA(戦闘中行方不明)またはKIA(戦死)扱い。多くのファンは、彼の死を悼みました。
しかし、物語はそう単純ではなかった。
Crysis 3の時代(2047年)になっても、CELL内部で「ノーマッドは生存しており、追跡対象である」という極秘情報が存在し、さらにCELLのエリートナノスーツ兵「シルバーバック」が彼を発見したという記録まで残されているのです。
これは一体どういうことなのか?
彼は本当に死んだのか? もし生きているなら、あの爆発からどうやって生き延び、この数十年間、どこで何をしていたのか? CELLに捕まった後、彼はどうなったのか?
その後の消息は一切不明であり、Crysisサーガにおける最大のミステリーの一つとなっている。
- サイコ (Psycho / マイケル・サイクス軍曹):
- 役割: スピンオフ『Crysis Warhead』で主役を務めた、プロフェットの最も人間臭い戦友。元SAS仕込みのタフさと戦闘スキル、そしてどんな状況でも軽口を忘れないユーモア(と毒舌)の持ち主。しかし、その荒々しい態度の裏には、仲間への深い情と、確かな正義感が隠されています。
- 奪われた力、それでも戦う理由: リンシャン島を生き延びた彼を待っていたのは、さらなる地獄でした。Cephとの世界戦争中にCELLに捕縛され、ナノスーツを強制的に剥ぎ取られる「スキニング」という非道な処置。それは彼の肉体に消えない傷跡を残し、何よりも彼の戦士としての誇りと魂を深く傷つけました。
Crysis 3でプロフェットと再会した彼は、超人的な力を持つ友と、力を失った自分自身とのギャップに苦しみ、ナノスーツへの複雑な感情(羨望、憎悪、劣等感)に苛まれます。
最愛の女性クレアの死は、彼をさらなる絶望の淵へと突き落としました。
- 魂の叫び、そして最後の仕事: しかし、マイケル・“サイコ”・サイクスは、ただでは死なない男でした。彼は、プロフェットの言葉に、そして自身の内に残る兵士としての魂に突き動かされ、最後の戦いに挑みます。スーツがなくとも、知恵と勇気、そして仲間への想いを武器に、プロフェットがアルファCephに集中できるよう、決死の覚悟で敵の大群を引き受け、その命を燃え尽きさせました。
「俺はまだ戦える!」という彼の最後の叫びは、多くのプレイヤーの胸を打ちました。
そして、物語の真の終わり、ポストクレジットシーンで描かれたのは、彼なりの「けじめ」でした。
自らを、そしてクレアを苦しめたCELLの残党に対し、彼は静かに、しかし確実に、復讐の引き金を引いたのです。
弱さも脆さも抱えながら、それでも最後まで自分らしく戦い抜いた、忘れられないキャラクターです。
- アルカトラズ (Alcatraz / ジェームズ・ロドリゲス二等兵):
- 役割: 『Crysis 2』の主人公。ごく普通の、しかし有能な海兵隊員だったが、死の淵でプロフェットからナノスーツ2.0を託され、図らずもニューヨーク、ひいては人類の未来をその肩に背負うことになる。
- スーツに呑まれた魂、悲劇的な継承者: ナノスーツによって命を救われるが、それは同時に彼自身の存在がスーツという器に吸収され、プロフェットのデータと融合していく、不可逆的なプロセスの始まりでした。彼は英雄的な戦いぶりでニューヨークをCephの魔の手から解放します。しかし、その勝利のために彼が支払った代償は、彼自身の「個」としての存在そのものでした。
カウンターエムローチメントを実行し、その役目を終えた後、彼の意識は完全にプロフェットの人格に上書きされる形で消滅してしまいました(公式小説『Escalation』)。
彼は自らの意志で未来を託した英雄なのか、それとも究極のテクノロジーに魂を喰われた犠牲者なのか…
彼の存在は、シリーズを通して最も悲劇的で、そして深く考えさせられるものでした。彼の短い、しかし鮮烈な輝きがあったからこそ、プロフェットは再生できたのです。
- ヘレナ・ローゼンタール:
- 役割: 『Crysis』におけるヒロインであり、物語の鍵となる情報を持つ聡明な科学者。考古学者の父の遺志を継ぎ、Cephの謎に迫ろうとします。ノーマッドにとっては、守るべき存在であり、心の支えでもありました。
- 裏切りに散った若き才能: リンシャン島事件の混乱をノーマッドたちと共に生き延び、脱出まであと一歩のところまで辿り着く。しかし、公式コミック版で描かれたCIA部隊による突然の裏切りによって、その若き命を無残にも奪われてしまう。シリーズ序盤の希望を象徴する存在だったが、その死は物語に暗い影を落とした。
- ジェイコブ・ハーグリーヴ:
- 役割: Crynet Systems創設者、ナノスーツの父。しかし、その顔は表向きのもの。真の姿は、1919年のツングースカ探検で異星のテクノロジーに触れ、その脅威に備え、同時にその力を利用して世界を支配し、自らは永遠の生命を得ようと、1世紀以上にわたって暗躍してきた、恐るべきマキャベリスト。
重度の身体障害のため、冷凍睡眠ポッドの中で生命を維持していた。
- 百年の執念、自爆という名の終幕: Cephへの対抗という大義を掲げつつも、その真の目的は、ナノスーツによる人類社会の管理、そして自身の永遠の生命にあった。Crysis 2ではアルカトラズ(ナノスーツ)を駒として利用しようとするが、計画は破綻。最後は、まるで自らの罪を清算するかのように、アルカトラズにCeph打倒の最終手段を託し、研究施設「プリズム」と共に自爆して果てました。
彼の存在なくして人類の対抗手段はなかったが、彼の歪んだ理想が多くの悲劇を生んだこともまた、否定できない事実である。
- 役割: Crynet Systems創設者、ナノスーツの父。しかし、その顔は表向きのもの。真の姿は、1919年のツングースカ探検で異星のテクノロジーに触れ、その脅威に備え、同時にその力を利用して世界を支配し、自らは永遠の生命を得ようと、1世紀以上にわたって暗躍してきた、恐るべきマキャベリスト。
- カール・エルンスト・ラッシュ博士:
- 役割: ハーグリーヴの長年の盟友であり、ナノスーツ共同開発者。彼もまたCeph技術によって驚異的な長寿を得ていた天才科学者。ハーグリーヴが影の存在だったのに対し、ラッシュは時折、表舞台にも姿を見せていました。
- 理想の果ての堕落、そして贖罪?: Crysis 2のラストでプロフェット(アルカトラズ)に意味深な通信を送り、Crysis 3では当初レジスタンスの協力者として現れる。しかし、彼は既にアルファCephの強力な精神支配下にあり、その手先として動いていた。純粋な科学的探求心が、禁断の知識と力への誘惑に負け、最終的には異星の存在に魂を売り渡してしまったのでしょうか。
最期はサイコに撃たれ、一瞬だけ正気を取り戻し、プロフェットに後事を託すようにして死亡。
理想を追求した科学者が、禁断の力によって破滅する悲劇を体現した。
- クレア・フォンタネッリ:
- 役割: Crysis 3におけるレジスタンスのリーダーであり、優れた科学者。サイコとは元恋人同士であり、彼をスキニング施設から救い出した恩人でもある。プロフェットにとって、数少ない信頼できる協力者の一人でした。
- 愛と罪、そして叶わなかった想い: CELL打倒のために命懸けで戦う彼女でしたが、実は過去にCELLの研究員として、サイコたちが受けたスキニング計画に(不本意ながらも)関与していたという、重い秘密を抱えていました。その罪悪感と、サイコへの変わらぬ愛情の間で苦悩しながらも、未来のために戦おうとします。しかし、その想いは、ラッシュ(アルファCeph)の裏切りによって無残にも打ち砕かれ、致命傷を負い、最期は愛するサイコの腕の中で息を引き取ります。
彼女の存在と死は、サイコの心を深く抉り、物語に人間的な悲劇の色を濃く添えました。
- ドミニク・ロックハート司令官:
- 役割: Crysis 2におけるCELLの現場最高指揮官。ナノスーツ計画そのものへの強い反発心と、個人的な悲劇(甥の死)からくる復讐心に突き動かされ、プロフェット(と誤認したアルカトラズ)を異常なまでに執拗に追跡する、いわば「憎まれ役」。
- 憎悪の連鎖は続くのか?: 彼の執念は、ニューヨークでの最終決戦において、アルカトラズとの直接対決という形で頂点に達しますが、最新型ナノスーツの圧倒的な力の前に敗れ去り、その生涯を終えます。しかし、彼の物語はそれで終わりではなかったのかもしれません。Crysis 3の時代になっても、彼の血縁者(甥とされ、同じくナノスーツを纏うCELLのエリート兵士「シルバーバック」)が存在し、ノーマッドを追跡していたという情報があります。
ロックハート家のナノスーツへの憎悪は、世代を超えて受け継がれ、新たな悲劇を生む火種として、まだ燻っているのかもしれません。
彼ら以外にも、多くの兵士、科学者、市民が、このCrysisサーガの中で生き、戦い、そして散っていきました。
彼ら一人ひとりの物語が、この壮大な歴史を形作っているのです。
未解決の謎、深淵なる考察、そして『Crysis 4』への道標第5章:地平線の向こう側
Crysis三部作は、プロフェットの英雄的な戦いによって一つの大きな物語の円環を閉じました。
しかし、あの広大で、時に不可解で、そして無限の可能性を感じさせるCrysisユニバースには、まだ多くの謎が残され、我々ファンの尽きることのない好奇心と想像力を刺激し続けています。
それはまるで、クリア後のマップに隠されたシークレットエリアのよう。
そして、開発が正式にアナウンスされた(ただし2025年4月現在、その後の進捗には不透明な部分もあるが)『Crysis 4』の存在は、これらの謎が解き明かされるのか、あるいは全く新しい地平線が切り開かれるのか、我々の期待を否応なく膨らませます。
さあ、コーヒーでも飲みながら、ちょっとディープな考察の世界に足を踏み入れてみませんか?
- Ceph:本当の脅威は去ったのか? それとも、まだカーテンの裏に…?
- アルファCephは倒され、地球侵略艦隊もワームホールごと消滅しました。めでたしめでたし…で、本当にいいんでしょうか?
そもそも、アルファCephって、Ceph文明全体のトップだったんでしょうか?
それとも、地球攻略方面軍の司令官クラスに過ぎなかったのでは?
彼らの母星系、あるいは他の銀河に広がるであろうCeph文明本体は、この「地球での失敗」をどう受け止めているのか。もっと強力な個体、あるいは全く異なる戦略で、第二、第三の侵略を計画している可能性は?
あのワームホールの向こう側に見えた無数の艦隊は、一体どれほどの規模だったのか?
考えると夜も眠れなくなりそうです。 - そして、Cephの根源的な目的。「庭師」なのか「侵略者」なのか、どちらもしっくりくる部分と、そうでない部分がありますよね。もしかしたら、彼らの思考原理は、我々人間の二元論的な考え方(敵か味方か、善か悪か)では到底理解できない、もっと異質なものなのかもしれません。
例えば、彼らは宇宙という巨大な情報ネットワークにおける「ノード」のような存在で、エネルギーや情報を収集・伝達すること自体が目的なのかもしれない。
あるいは、人類(特にナノスーツと融合したプロフェット)との接触そのものが、彼らにとっても予期せぬ「進化」や「変化」をもたらし、新たな目的意識が生まれた…なんて可能性も? SF的な想像はどこまでも広がります。
- アルファCephは倒され、地球侵略艦隊もワームホールごと消滅しました。めでたしめでたし…で、本当にいいんでしょうか?
- プロフェット(ローレンス・バーンズ):英雄のその後、彼は何者になったのか?
- Crysis 3のラスト、彼は奇跡的に人間としての肉体を取り戻しました。でも、あれは本当に「元通り」になったんでしょうか?
ナノスーツとの完全な融合と、アークエンジェルの超エネルギーによる再構成を経た彼は、もはや我々が知るホモ・サピエンスとは異なる、新しい段階の生命体…ポストヒューマン…へと進化してしまったのではないでしょうか?
ステルス迷彩が使えたということは、ナノスーツの力(少なくとも一部)が依然として彼と共にあることを示唆しています。彼はその力を、今後どのように使うつもりなのか? 人知れず世界の守護者となるのか、それとも…? - 彼が「ローレンス・バーンズ」と名乗ったことの意味も深いですよね。過去の自分を取り戻したのか、それとも「プロフェット」という重荷から解放され、新たな自己を定義しようとしているのか。彼が手にした、おそらくは神にも近い力は、彼をさらなる孤独へと導くのか、それとも彼が守った世界と再び繋がりを持つことを許すのか。
一部の過激な(?)ファン考察では、彼自身が新たなハイヴマインドの核となりうる可能性や、あるいはCephの影響から完全には自由ではないのではないか、といった大胆な考察も存在する。
考えすぎでしょうか? でも、それくらい彼の存在は、特別で、そして危ういものになったのかもしれません。
- Crysis 3のラスト、彼は奇跡的に人間としての肉体を取り戻しました。でも、あれは本当に「元通り」になったんでしょうか?
- ノーマッド:生ける伝説か、消えた幻影か?
- CELLの内部文書に残された「ノーマッド生存」の記録。これはCrysisサーガ最大の謎の一つであり、ファンの間で最も議論を呼ぶトピックの一つだ。リンシャン島での彼の英雄的な「死」は偽りだったのか?
もし生きているとしたら、彼はどのようにしてあの爆発を生き延び、そしてCELLの目をかいくぐり、20年以上もの間、潜伏し続けてきたのか? その目的は何だったのか? - そして、CELLのエリート兵「シルバーバック」に発見された後、彼はどうなったのか?
捕らえられ、プロフェットのように封印されたのか? それともサイコのようにスキニングされたのか? それとも、再び追跡を振り切ったのか? あるいは、シルバーバックと何らかの取引をした…?
考えられるシナリオは無数にあります。 - もし彼が『Crysis 4』で再登場するとしたら、それは物語にどのような化学反応をもたらすでしょうか?
プロフェット(ローレンス・バーンズ)との再会は? 彼はかつての友の変貌をどう受け止めるのか? 味方となるのか、それとも対立するのか? あるいは、全く新しい第三勢力として登場するのか?
ノーマッドの存在は、シリーズの未来を占う上で、あまりにも魅力的で、そして危険なジョーカーと言えるでしょう。
- CELLの内部文書に残された「ノーマッド生存」の記録。これはCrysisサーガ最大の謎の一つであり、ファンの間で最も議論を呼ぶトピックの一つだ。リンシャン島での彼の英雄的な「死」は偽りだったのか?
- テクノロジーの遺産、あるいは呪い:
- 地球上には、リンシャン島やニューヨーク以外にも、我々がまだ知らないCephの遺跡や、彼らが遺した(あるいは意図的に設置した)テクノロジーが、世界のどこかに眠っている可能性は非常に高いです(コミック版でも示唆されている)。それらが自然災害や、あるいは人間の愚かな行動によって再び活性化し、新たな脅威となるリスクはないのでしょうか?
- そして、崩壊したCELL。しかし、彼らが長年にわたって蓄積し、研究してきた膨大なCeph技術やナノスーツ関連の設計データ、生体サンプル、そしてそれらを扱える知識を持った研究者たちは、一体どうなったのでしょう?
それらが闇市場に流れ、テロ組織や、新たな野心を持つ国家、あるいは第二、第三のCELLのような企業の手に渡ってしまったとしたら…?
ナノスーツ技術の拡散は、新たな軍拡競争や、より恐ろしい悲劇を生み出す火種となりかねません。テクノロジーは、一度生まれてしまうと、もはや消し去ることはできないのですから。
- そして、『Crysis 4』という名の地平線へ…
- 物語はどこから始まるのか? Crysis 3の結末から直接続くのか、それとも時間を大きく隔てた未来を描くのか?
- 主人公は誰になるのか? 再びプロフェット(ローレンス・バーンズ)か? 生存が噂されるノーマッドか? それとも、全く新しい世代の、異なるタイプのナノスーツ(あるいは対抗技術?)を操るキャラクターが登場するのか?
- 敵は誰になるのか? 再び現れるCephか? テクノロジーを悪用する人間か? あるいは、ナノスーツ技術そのものが暴走し、新たな脅威となるのか? あるいは、これら全てが絡み合った、より複雑な構図になるのか?
- 2022年に開発が発表されたものの、その後、開発体制の変更や人員削減の報道もあり、2025年4月現在、『Crysis 4』の具体的な内容やリリース時期については依然として不透明な状況が続いている。しかし、その存在が示唆されている以上、ファンは希望を捨てずに待っている。果たしてCrytekは、我々が築き上げてきた期待と考察の、さらに斜め上を行くような、新時代のCrysisを見せてくれるのでしょうか?
これらの未解決の謎と、それらを巡る活発な考察(海外のRedditフォーラム /r/crysis やファンWiki、YouTubeチャンネルなどで今も盛んに行われている)こそが、Crysisという作品世界がいかに豊かで、刺激的であるかの証拠です。
それは、我々プレイヤー自身が物語の共著者となり、その空白を想像力で埋め、未来を議論することを許してくれる、稀有なゲームサーガなのです。
Crysisサーガが我々の魂に遺したもの第6章:終幕の残響、そして未来への問い
Crysisシリーズ。
それは、最先端のグラフィック技術で我々の視覚を驚かせ、ナノスーツというガジェットで自由な戦闘体験を提供した、単なるエンターテイメントではなかった。
三部作を通して我々が目撃し、体験してきた物語は、深く、重層的で、そしてSFというジャンルが持つ最高の魅力…つまり、我々自身の現在と未来を映し出す鏡…に満ちていました。
時系列という名の糸を丹念にたどり、我々はその壮大にして、時に残酷なタペストリーの全貌を解き明かしてきました。
- Crysis / Warhead: 全ての始まり。南国の楽園が一瞬にして地獄へと変わる様を目の当たりにし、未知なる脅威「Ceph」の覚醒と、人類の新たな力「ナノスーツ」の誕生、そしてその裏に潜む陰謀の序章を体験しました。
- Crysis 2: 戦いの舞台は人類文明の中心、ニューヨークへ。新たな主人公アルカトラズの視点を通して描かれた、都市崩壊のスペクタクル、ナノスーツの劇的な進化とそれがもたらす代償、そしてプロフェットとの運命的な魂の融合という、シリーズの方向性を決定づける衝撃的な転換点を目撃しました。
- Crysis 3: 20年以上の時を経て再生したプロフェットが、人類を内側から支配するCELLと、宇宙的脅威の根源であるアルファCephという二つの巨大な「悪」に最後の戦いを挑む。ナノスーツの限界を超えた力が解放され、多くの犠牲と引き換えに世界が救済される、感動的でありながらも、多くの問いを残す、三部作の終着点に立ち会いました。
この一連の物語が我々の心に深く刻み込んだもの。
それは、単なるエイリアンとの派手な戦争の記憶だけではありません。
- テクノロジーという名のパンドラの箱:
ナノスーツは、人類に神にも等しい力を与え、絶望的な戦況を覆す希望の象徴となった。しかし同時に、それは着用者の人間性を曖昧にし、CELLのような組織によって、他者を支配し、搾取し、非人道的な行為を行うための、恐るべき道具ともなった。我々は、日々加速度的に進化していくテクノロジーと、今後どのように向き合っていくべきなのか?
その力は我々をより自由にするのか、それとも見えざる鎖で縛り付けるのか?
Crysisは、この現代社会が直面する根源的なジレンマを、SFというフィルターを通して、痛烈に描き出しています。まるで、スマホなしでは生きられない私たち自身を映しているかのように…。
- 「わたし」はどこにいるのか? 人間であることの不確かさ:
プロフェットとアルカトラズの融合は、肉体と精神、記憶と自己同一性の関係性を根底から揺さぶります。「自分」とは、脳の中にある意識なのか、それとも肉体を含む経験の総体なのか?
サイコがスーツを剥奪されてもなお「彼」であり続けた強さとは何だったのか?
ハーグリーヴやラッシュが追い求めた不老不死は、果たして人間としての幸福をもたらしたのでしょうか?
Crysisは、SFが得意とする「人間とは何か?」という哲学的な問いを、様々なキャラクターの運命を通して、我々に繰り返し問いかけます。答えは、簡単には出ませんよね。 - 英雄の条件、そして犠牲の重み:
プロフェット、ノーマッド、サイコ、アルカトラズ、クレア…
彼らは皆、完璧な超人ではありませんでした。欠点もあれば、過ちも犯しました。しかし、彼らはそれぞれの形で、人類のため、仲間のため、あるいは自らが信じる正義のために、想像を絶する困難に立ち向かい、大きな代償を払い、時にはその命すらも捧げました。彼らの生き様、そして死に様は、真の英雄とは、特別な能力を持つことではなく、困難な状況下でいかなる選択をするか、その意志の力にあるのではないか、と教えてくれます。
そして、その選択に伴う犠牲の重みを、決して忘れてはならない、とも。
Crysis三部作は、プロフェットが人類を二つの巨大な脅威から解放し、そして彼自身もまた(おそらくは新たな次元で)人間として再生するという、一つの大きな円環を描いて幕を閉じた。
CELLによる支配は終わり、Cephの脅威も(ひとまずは)去った。
しかし、物語が投げかけた問いは、決して消え去ってはいません。
むしろ、AIやバイオテクノロジーが現実のものとなりつつある2025年の今、その問いはより切実な響きを持って、我々に迫ってきているように感じられます。
残された数々の謎、進化の果てにあるナノスーツの(そして人類の)未来、そして開発の続報が待たれる『Crysis 4』の存在は、この壮大なサーガが、まだ我々に語りかけるべき多くの物語を、そして突きつけるべき多くの問いを秘めていることを、強く示唆しています。
この記事が、Crysisという名の忘れられない体験を、あなたの記憶の中で再燃させ、新たな視点や発見をもたらし、そして来るべき未来への想像力をかき立てるための一助となれたなら、ライター冥利に尽きます。
さあ、もう一度、あの驚異的なグラフィックと、ナノスーツの万能感を、そして英雄たちの熱いドラマを、あなたの手で体験してみませんか?
そして、共に待ちましょう。
Crysisが再び我々を、未知なる戦場へと、そしてテクノロジーと人間の未来を巡る、新たな思索の旅へと誘う、その日を。
Maximum Game! そして、最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました!