「荒野を舞台に、口笛の旋律が深く刻まれたRPG」
と聞くと、ピンとくる方もいるでしょう。
1996年にプレイステーション1で産声を上げた『ワイルドアームズ』は、
“ファンタジーと西部劇の融合”
という斬新なコンセプトを掲げ、なるけみちこ氏が手がける口笛を主体とした哀愁あるBGMが鮮烈な印象を残した作品です。
砂塵舞う荒野を思わせる世界観と、ギミックたっぷりのダンジョンを攻略するパズル的要素、そしてガンマン風の武器“ARM”を扱う独自の戦闘システムが融合した本シリーズは、多くのプレイヤーを虜にしてきました。
しかし、2007年にPSPでリリースされた『ワイルドアームズ クロスファイア(WA XF)』を最後に、据え置き機(コンシューマー)向けの新作は途絶えたまま。
長く続いた沈黙に
「もう続編は出ないのか」
「リメイクの可能性すら封印されているのか」
と落胆するファンも少なくありません。
いっぽうで
「スマホ向け新作」
「PS Plusでの配信」
など、わずかながらも“火が消えていない”動きを垣間見ることもあり、
「やっぱりいつか公式が腰を上げてくれるかも」
と密かに期待している声も根強いのです。
今回は、ワイルドアームズというシリーズをめぐる最新動向を整理しつつ、その魅力や歴史を改めて振り返り、
「続編は本当に出るのか?」
「リメイクの可能性はどこにあるのか?」
というファン最大の関心事を考察していきます。
さらには、シリーズの生みの親が手掛ける“精神的続編”『Armed Fantasia(アームド ファンタジア)』の動向にも触れながら、未来への手がかりを探っていきましょう。
ここでは、細やかな公式情報からファンコミュニティの熱気、そして他のJRPGが続々とリメイクされる最近のゲーム界隈の潮流まで、多角的に取り上げていきます。
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荒野と口笛の衝撃ワイルドアームズの独自性
ワイルドアームズというシリーズ名を聞くと真っ先にイメージされるのが、
“荒野を舞台にしたRPG”
という独特のテーマでしょう。
言い換えれば、“西部劇のエッセンス”と“ファンタジーRPGのお約束”を大胆にミックスし、生まれた世界観こそが本シリーズを特別な存在たらしめてきました。
たとえば初代『ワイルドアームズ』では、アニメ調のオープニングムービーで響き渡る“口笛メロディ”が非常に印象的で、当時の多くのゲーマーが
「なんだ、この耳にこびりつく曲は!」
と衝撃を受けたといいます。
まるで映画のオープニングシーンさながらに、荒野の雰囲気と物語の期待感を高める工夫が詰まっていたわけです。
この“口笛”を活かした音楽を担当するのが、なるけみちこ氏というコンポーザーです。
RPGファンからは
「荒野の哀愁と冒険の高揚感を同時に表現した天才」
とも呼ばれ、ワイルドアームズシリーズに欠かせない存在感を放っています。
そもそも“RPGの曲=オーケストラ調、あるいはゲームらしいチップチューン”という常識をひっくり返し、“口笛”をメインに据えたところから
「えっ、西部劇⁉」
という驚きがあったのは間違いありません。
その新鮮さが大きなフックとなり、当時の若きプレイヤーたちを荒野の世界へ誘ったのです。
また、シリーズを通じて採用される“ARM”という武器や、仕掛け満載のダンジョンギミック、そして作品ごとに変化を加えながらも“荒野”というコンセプトを守り続ける姿勢など、“ワイルドアームズでしか味わえない”という特別感がありました。
初代では3人の主人公が順番に描かれるオムニバス的プロローグを導入していましたし、『ワイルドアームズ 2nd Ignition』(以下WA2)では“英雄”というテーマを軸に、プレイヤーが“ヒーロー”になるとは何なのかを突きつける構成が話題に。
『ワイルドアームズ アドヴァンスド3rd』(WA3)に至っては、セルフシャーディングのグラフィックでマンガのようなビジュアルを目指し、西部劇の風情をよりダイナミックに表現してみせました。
このように、開発元メディア・ビジョンやスタッフ陣は、各ナンバリングタイトルで新しい要素を積極的に取り入れ、ワイルドアームズのイメージを広げようと努力してきたわけです。
だからこそ、“コマンド型RPG”でありながら、しばしば“ツール”を使った謎解きや、“HEX”と呼ばれるシミュレーションRPGに近い戦闘システムなど、シリーズごとに違った手応えを味わえます。
ただ、この“進化の軌跡”が場合によっては従来ファンの戸惑いを生み、
「これはちょっと荒野の雰囲気と違うのでは?」
と感じる人もいたようで、そこが賛否両論を呼ぶ一面でもありました。
けれど、少なくとも“同じようなゲームを繰り返す”のではなく、常に新しい挑戦があったからこそ、ワイルドアームズの存在はJRPG界の中でも独特な立ち位置を保ち続けていたのです。
シリーズが途絶えた理由とスマホ新作の顛末
前述のとおり、ワイルドアームズはPS2時代まではナンバリングを重ね、PSPでも『ワイルドアームズ クロスファイア(WA XF)』をリリースしました。
ところが、この2007年のWA XFを最後に、据え置き機向けの新作は出ていません。
そもそもPS2後半にリリースされたWA4やWA5が売上的に伸び悩み、ファンの間でも
「面白いんだけど、やや路線変更がファンと噛み合っていない?」
という声もありました。
さらに、JRPG市場自体が海外の大型タイトルに押されがちな環境になっていく中で、SIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)としても本シリーズを
積極的に推し進めるメリットが見いだしにくくなった
という見方があります。
IPを保有するSIEが“このシリーズでいくぞ!”とゴーサインを出さなければ、メディア・ビジョンが作りたくても作れない状況なのです。
ところが「完全に諦めた」というわけでもありませんでした。
2016年前後には、シリーズ20周年を迎えるタイミングで
「ワイルドアームズの火は消えていない」
という発言や
「20周年記念企画があるらしい」
という噂が飛び交い、ファンのボルテージが一気に上がったのです。
そして実際に出てきたのが、スマートフォン向けタイトル『ワイルドアームズ ミリオンメモリーズ』。
シリーズ歴代キャラクターを総登場させたり、なるけみちこ氏による音楽を継承するなど、往年のファンを歓喜させる要素を盛り込みました。
ところが実際のサービス展開においては、大きく集客を伸ばすには至らず、2018年9月のリリースから約1年半でサ終(サービス終了)が決定するという悲しい結果になりました。
ファンの声の大きさは一定あったものの、スマホゲームのビジネスは競争が激化しやすく、事前のプロモーションや運営面の工夫が求められる世界。
そこをうまく乗り越えられなかったというのが実情でしょう。
結局、「スマホ版で復活」という目論見は立ち消えになり、ファンからすれば
「やっぱりワイルドアームズは据え置きでじっくり遊びたいんだ」
「やるなら本格的な新作を!」
という思いがさらに募った面もあります。
一方で、このスマホ新作も完全に無駄だったわけではなく、
「久々にワイルドアームズ関連の公式動きがあった」
という事実によって、コミュニティが再び活性化した時期があったことは事実です。
SNSやフォーラムで
「やっぱり口笛の曲は最高だ」
「過去作をもう一度やり直そう」
という声が高まり、シリーズへの関心が少しでも再燃したことには、確かな意味がありました。
精神的続編『Armed Fantasia』が呼び覚ます期待
さて、シリーズが事実上の休眠状態に入っている中、2022年に“精神的続編”として爆誕したのが『Armed Fantasia: To the End of the Wilderness』(以下Armed Fantasia)です。
これは、ワイルドアームズの生みの親である金子彰史氏が中心となって、新会社WILD BUNCH Productionsを立ち上げて手掛けるプロジェクト。
ワイルドアームズという公式IPを使うことはできませんが、
「荒野と口笛を感じさせる世界観」
「ウェスタンパンクRPG」
「渡り鳥と呼ばれる冒険者が、過酷な世界を横断する」
といったキーワードが並ぶと、ファンならば
「これはまさにワイルドアームズの魂を受け継いでいる!」
と感じざるを得ないでしょう。
しかも注目すべきは、その資金調達方法。Kickstarterでクラウドファンディングを実施した際、同じくPS2時代のJRPG『シャドウハーツ』の精神的続編『Penny Blood』とタッグを組み、
“ダブルキックスターターキャンペーン”
として大々的に盛り上げた結果、両プロジェクト合わせて
約3.8億円
もの資金を集めたのです。
これは近年のJRPG関連クラファンとしては異例の成功であり、
「海外を含むレトロJRPGファンの熱量はこんなにすごいのか!」
と多方面に衝撃を与えました。
その熱狂ぶりは、
「ワイルドアームズ6は出ないの?」
と落胆していたファンにとっても
「やはり荒野RPGを望む人たちが世界中にいるんだ」
と再認識させる、非常にポジティブな材料となりました。
Armed Fantasiaは、あくまでワイルドアームズの“公式続編”ではないため、正式に“ワイルドアームズ6”と銘打つことはできません。
何しろ、IPを握るSIEの許可が必要になりますから。
しかし、主要スタッフが勢ぞろいしている以上、“精神的続編”と呼ぶのにふさわしい内容になるのは間違いないでしょう。
戦闘システムにおいても「クロスオーダータクティクス」という新機軸を採用するとされ、ただの懐古ではなく、現代のユーザーにも響く新しい遊びを追求しているようです。
こうした挑戦的な動きそのものが、
「JRPGはまだまだイケる」
と証明する好機にもなり得ます。
そして、ワイルドアームズファンの多くは
「Armed Fantasiaが成功すれば、その波及効果でSIEがワイルドアームズを正式に復活させる可能性も高まるのではないか」
と期待しているわけです。
特に海外人気を得られるなら、グローバル展開を重視するSIEの経営判断にもプラスに働くかもしれません。
逆に言えば、Armed Fantasiaが不評なら
「やはりこうした荒野RPG路線は時代と合わない」
と見なされ、公式な続編企画がますます遠のくシナリオも考えられるので、ファンとしては
「絶対に成功してほしい!」
と熱い思いで支援している方も多いのが現状です。
かつての『アルターコード:F』と昨今のリメイクブームリメイクの可能性
ワイルドアームズは、すでに一度“リメイク”が行われた例があります。
それが2003年にPS2向けに発売された『ワイルドアームズ アルターコード:F』です。
これは初代ワイルドアームズをフル3D化し、新規キャラやイベントシーンを追加するなど大幅な手入れを加えたものでした。
しかし、ユーザーからは
「初代の雰囲気がある部分と大きく変わりすぎた部分が混在していて、やや遊びにくい」
といった評価が出たり、ゲームバランスやテンポ面が難点だったと指摘されるなど、賛否が割れた作品となりました。
結果的にはセールス的にも大当たりとはならず、その後のシリーズの命運を左右したとも言われるわけです。
ただ、2020年代は“レトロRPGのリメイクブーム”真っ只中。
スクウェア・エニックスが『ファイナルファンタジーVII リメイク』や『ライブアライブ』を成功させ、アトラスが『ペルソナ3 リロード』を発表するなど、90年代~2000年代初期のJRPGを最新の技術やデザインで再構築する動きが盛んです。
ファンにとっては、過去に遊んだ名作がリメイクされるのは嬉しいニュースですし、新規ユーザーにも
「これは過去の名作らしいので買ってみよう」
と取り込むチャンスになります。
こうした潮流の中で、ワイルドアームズもリメイクの候補として挙がらないわけがありません。
そもそも初代はPS1世代の作品で、2Dと3Dが混在した時代ならではのビジュアルです。
そこを現代のテクノロジーで丁寧にリファインして、倍速機能やUIの改善、ボイス実装などを施すだけでも、かなり魅力的な“再デビュー”が可能でしょう。
さらにはアルターコード:Fのときに批判されがちだった部分を、今のノウハウでうまく最適化できれば、ファンからも好意的に受け止められるかもしれません。
プレイヤーが
「やっぱり初代の荒野と口笛は最高だなあ」
としみじみ味わえる環境を整えれば、改めて
「このIPまだまだイケるじゃん」
と認識される可能性は大いにあるのです。
とはいえ、フルリメイクはコストもリスクも高め。そこで“HDリマスター”という手も考えられます。
PS1やPS2のオリジナルをそのまま高解像度化し、ロード短縮や操作感の向上を図る程度なら、比較的少ない開発資源で実現できます。
スクウェア・エニックスがいろいろなRPGの“リマスター”を短いスパンで出しているように、過去作を現世代のハードで遊べる環境を整えるだけでも、ファンにとっては大きな恩恵です。
PS Plusのクラシックカタログに一部タイトルが配信されている今こそ、公式が本腰を入れれば、ワイルドアームズHDコレクションやリマスター版として再度世に出すことは十分に考えられるでしょう。
SIEのIP戦略と“可能性”の行方
ワイルドアームズの版権はソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が保有しています。
定期的に商標を更新している様子も確認されていることから、
「少なくとも放置しているわけではない」
という見方もあります。
ただ、SIEがここ数年で力を入れているのは、海外のAAA級タイトルやアクションアドベンチャーの大作がメインという印象が強く、
JRPGシリーズを復活させる優先度は高くないのでは?
という憶測が絶えません。
特にグローバル市場を見据えると、フォトリアル系アクションやFPS、TPSなどが売れ筋になりがちで、かつてのPS1~PS2時代に量産された“中堅RPG”を改めて掘り返すメリットはあるのか……
という疑問もあるかもしれません。
しかし、ここに来ていくつかの報道や噂が
「SIEが古いIP復活を検討している」
「PS1時代のマイナーIPが2~3タイトル動いているらしい」
と指摘しており、一部海外メディアではレジェンドオブドラグーンやサルゲッチュ、ワイルドアームズなどが候補に挙げられています。
実現するかは別として、“可能性”が消えたとはいえないわけです。
もし“国内外のJRPGファンが納得するレベルのリメイクなら売れる”とSIEが判断すれば、一気にゴーサインが出るかもしれません。
今はJRPG自体が見直されつつある時代で、スクエニ以外のメーカーも過去RPGの復刻やリメイクに成功した事例があります。
SIEにとっても決して無視できない市場と言えるはずです。
SNSやPS Plusでの盛り上がりファンコミュニティの熱量
実際、ワイルドアームズの話題はSNSでも定期的に持ち上がります。
とくにPS Plusのクラシックカタログでシリーズ作品が遊べるようになった際には、
「まだこんな楽しいゲームが眠っていたのか」
と新規プレイヤーが驚いたり、懐かしんで再プレイするベテランが思い出を語ったりと、盛り上がりを見せました。
海外向けのフォーラムやRedditでも
「ワイルドアームズはもっと評価されるべき」
「この荒野感は独特で、他のJRPGとは違う魅力がある」
といった意見が根強く、KickstarterでArmed Fantasiaを支援する海外ファンの声がこれに呼応する形で拡散されているのです。
さらに面白いのは、
Armed Fantasiaを応援する=ワイルドアームズ復活につながるかもしれない
という思惑がコミュニティの一部で共有されていること。
つまり
「ワイルドアームズの魂を継ぐ作品が成功すれば、公式IPにもプラスになる」
という期待です。
もちろんSIEが「Armed Fantasiaが成功したからワイルドアームズもやるぞ」と直接言ったわけではありませんが、企業判断の背後に“ファンの熱量”や“海外でのJRPG需要”があるのは確か。
実際、3.8億円もの支援が集まった時点で
「荒野RPGにこれほどお金が集まるのか」
というインパクトは大なり小なり関係者に伝わっているはずで、そこに活路を見出す人もいるのです。
いくつかのシナリオ続編やリメイクが“もし実現するなら”
現時点で「ワイルドアームズ6」をやりますとか「初代リメイクを計画中」といった公式発表は一切ありません。
とはいえ、まったく芽がないわけでもない。
そのためファンの間では、以下のようなシナリオを議論することが多いようです。
- Armed Fantasiaの大成功シナリオ
海外含めて大ヒットし、
「荒野を舞台にしたJRPGって売れるんだ」
という事例をSIEや他のパブリッシャーが認識。
特にSIEが興味を示して
「それならワイルドアームズの新作を出してみよう」
という展開になる。
あるいはArmed Fantasiaで脚光を浴びた金子彰史氏らに“もう一度公式IPを扱ってほしい”という流れが生まれる。 - SIEによるPS1~PS2時代のIP復活プロジェクトへの便乗
既に噂されている
「SIEが古いフランチャイズを二つ三つリバイバルしようとしている」
という話の中で、ワイルドアームズが選ばれる可能性。
ひとまずHDリマスターやコレクションを出して様子を見て、好調であれば本格的なリメイクに乗り出す。 - メディア・ビジョン独自の再提案
メディア・ビジョンは最近も別作品でヒットを出しており、開発力はまだまだ健在。
そこで内々にワイルドアームズのプロトタイプを作成し、SIEに企画を再度売り込み、過去のように消滅することなく承認にこぎ着ける。
実際にスマホ版の前例があるため、全く不可能ではないかもしれない。 - アニバーサリーに合わせた復刻
ワイルドアームズも30周年を視野に入れられるようになってきました。
2016年前後の20周年ではスマホ新作という形で一応企画が出た実績があるため、次の節目で“据え置き機新作かリメイク”というサプライズが起こるのでは、と期待する声もあります。 - 意外なクロスオーバー企画
他のSIE旧IPとのコラボや、いっそ外部パブリッシャーとの共同プロジェクトという形で、一気に復活を果たすシナリオもゼロではないでしょう。
バンダイナムコやスクエニなどが協力して“ワイルドアームズクロス◯◯”というようなタイトルを出す可能性すら、ファンの中ではトークテーマになることがあります。
根強いファンの活動とSNSでの盛り上げ方
シリーズが長期休眠していると、ファンコミュニティはしぼんでしまうのが通例ですが、ワイルドアームズの場合は今でも熱心なファンが一定数存在し、SNSやブログ、Discordなどで定期的に話題が出ます。
たとえば
「◯月◯日は初代ワイルドアームズ発売日だから、みんなで口笛の動画をシェアしよう」
といった動きや、
「クラシックカタログで2nd Ignitionを遊び直す実況プレイをする」
という取り組みなど、ファン同士で盛り上がる場面がところどころで見られます。
また、
「新作は出ないのかな」
と嘆きつつ
「Armed Fantasiaを支援してみたらワイルドアームズにも波及するかも!」
というポジティブな発信をしているファンも多い。
特に海外のRPGコミュニティは、SNSでの発信力が大きく、英語圏でArmed Fantasiaやワイルドアームズを積極的にアピールするユーザーが増えれば、SIEが“市場の数字”だけでなく“コミュニティの熱”を意識する可能性もあるでしょう。
実際、Kickstarterの支援コメントには
「古き良きワイルドアームズへの愛が、Armed Fantasiaを応援する理由」
と書き込む人が多数見受けられました。
こうしたファンの盛り上がりは企業の決断を直接左右できるものではないかもしれませんが、
“IPの知名度が衰えていない”
“海外にも待望する声がある”
という事実を積み重ねるうえでは有用です。
そもそも近年は、クラウドファンディングを成功させた後にメーカーと契約して大きく花開いたタイトルも存在するため、“ファンの支援という既成事実”は無視できない力として働くケースが増えています。
ワイルドアームズの「強み」とは何か
少し視点を変えて、
「なぜファンはこんなにもワイルドアームズ続編を待ち望むのか?」
という核心に迫ってみましょう。
RPGというカテゴリーで言えば、ファイナルファンタジーやドラゴンクエストをはじめ、数多のタイトルが存在します。
その中で“荒野”と“ファンタジー”を融合させた世界観こそがシリーズの核ともいえ、同時に“口笛”という音楽的アイコンが唯一無二のムードを醸しています。
さらに、初代から絶えることのない“ダンジョンの謎解き”という要素は、多くのRPGで軽視されがちな“頭を使う仕掛け”をゲーム体験の中心に置いている点が光ります。
物語面でも、
「魔族の侵略」
「世界の荒廃」
「仲間との旅」
といったおなじみのRPG要素を備えながら、“ガンマン”風のヒーロー像や、“フェルガイア”と呼ばれる土地が持つ歴史や荒涼感を深く描き、“荒野を渡りながら世界を救う”というロマンを貫いてきました。
シナリオによってはかなり重いテーマもあり、たとえばWA2では「英雄とは何か?」をプレイヤーに突きつける場面が多々あり、単なる勧善懲悪にとどまらない葛藤が描かれています。
このあたりの“ひと癖ある作風”は、あとから振り返るとワイルドアームズならではの魅力でした。
一方で、シリーズ後期には売上が下がってしまいましたが、それも“荒野RPG”というマニアックな世界観を突き詰めたがゆえの“ニッチ化”とも言えます。
しかし、今の時代、Indie系RPGが海外でブレイクする例を見てもわかるように、“大衆的には少しマニアックだけど、刺さる人には刺さる”ゲームが成功する土壌がかつてないほど広がっています。
そういう意味で、ワイルドアームズの強みは今こそ再注目されるべき要素を多分に含んでいるのです。
20年、30年という節目今後に向けた期待
ワイルドアームズは初代が1996年発売ですから、2026年には30周年を迎えます。
20周年のときは、スマホ新作『ワイルドアームズ ミリオンメモリーズ』でいちおう動きを見せたものの、ファンが期待したような本格新作やリメイクには繋がりませんでした。
あれからさらに10年。
もし仮にArmed Fantasiaが2025年にリリースされ、高評価を受けている頃に
「実は30周年記念でワイルドアームズの公式新作を考えています」
といった発表があったらどうなるでしょう?
おそらくファンは狂喜乱舞し、SNSは口笛の大合唱になるかもしれません。
もちろん、これはあくまで願望のシナリオではありますが、シリーズ30周年という区切りはメディアやゲーマーにも注目されるビッグチャンスのタイミング。
どんなに眠っていたIPでも、こうした“節目需要”で蘇ったりするケースも決して珍しくありません。
具体的には、たとえば“PS5/PS6世代向けにフルリメイクした初代+2ndをまとめたコレクションを発売し、追加要素も満載にする”なんて展開があれば、
「ずっと荒野を待ち焦がれていた層」が飛びつくことは間違いないでしょう。
なお、近年はレジェンド級のタイトルを幾度もリメイクする例が出ていますが、ワイルドアームズの場合、初代が好きな人、2ndが好きな人、3が好きな人…と多様なので、いっそ“リメイク2本立て”か“リマスターコレクション”という形もあり得ます。
需要が見込まれる作品から順番に手をつける戦略は、開発リスクを減らすのに有効です。
コミュニティができること
長年新作が途絶えているシリーズにとって、コミュニティの存在は命綱でもあります。
ファンが「荒野と口笛の思い出」を共有し続ける限り、少なくとも“完全に忘れ去られたゲーム”にはなりません。
SNSやブログ、YouTubeなどを活用してプレイ動画やファンアート、楽曲演奏などを投稿することで、熱量を可視化していくのは非常に有意義です。
SIEやメディア・ビジョンも、まったく見ていないわけではないでしょうから、そうした“声”や“数字”を目にするたびに、
「やはりワイルドアームズは愛されているんだな」
と再確認する可能性があります。
また、Armed Fantasiaの続報が出た際には、その話題に便乗して「ワイルドアームズシリーズとの関係性」を紹介していくことも効果的でしょう。
Kickstarterでは既にキャンペーンが終了しましたが、今後の開発進捗報告や、完成後のレビューなどにおいて、ファンが率先して盛り上がることで「荒野RPGの人気」をさらに印象づけられます。
こうした動きが結果的に公式続編やリメイクへの道を切り開くかもしれません。
荒野に吹く口笛は、まだ終わっていないまとめ
ここまで、ワイルドアームズの魅力と歴史、そして続編やリメイクの可能性について多角的に考察してきました。
最大のポイントは、2007年以降、据え置き機向けの新作が出ていない現状でありながら、シリーズの“火”は完全には消えていないということ。
スマホ向け新作『ワイルドアームズ ミリオンメモリーズ』は早々に終了してしまいましたが、そこでも確かにファンの熱が垣間見えました。
さらに大きな一歩としては、金子彰史氏らが立ち上げた新プロジェクトArmed FantasiaがKickstarterで3.8億円を集める快挙を成し遂げ、改めて“荒野RPGへの需要”が世界規模で存在することを証明してみせました。
SIEがワイルドアームズというIPをどう扱うかは、いまのところ不透明です。
公式な続編計画もリメイク計画も、表立っては出ていません。
けれど、“昔のIPを復活させる”というブームがJRPG界隈で続いているなか、
「SIEがもし本気でリバイバル戦略を進めるなら、ワイルドアームズも候補に挙げられるのでは?」
と期待する向きが出てくるのは自然な流れです。
競合他社がFFVIIやペルソナ3といった大作を積極的にリメイクしている今こそ、中規模のJRPGにも光が当たりやすい時期と言えるでしょう。
ファンにできることは、シリーズへの愛を語り続けること、過去作を遊んで周囲に布教すること、そしてArmed Fantasiaなど“荒野RPG”の盛り上がりに積極的に参加していくことです。
こうした草の根活動が、やがてはSIEやメディア・ビジョンの意思決定に影響を与え、
「あの荒野と口笛のRPGをもう一度……」
という企画が動き始めるかもしれません。
あるいは30周年という大きな節目で、思わぬサプライズが飛び出す可能性も否定できないでしょう。
少なくとも、ワイルドアームズというタイトルが今なお多くのファンに愛され、語り継がれているのは揺るぎのない事実。
あの砂っぽい空気とどこか寂しげな荒野、胸にしみる口笛のメロディ、仲間との旅路で見える人間模様――それらをもう一度、最新のグラフィックや遊び心たっぷりの謎解きで体験できる日が来たら、きっとかつてのファンも新規のプレイヤーも入り乱れて大いに盛り上がるでしょう。
そう考えれば、長い沈黙は必ずしも絶望ではなく、いつか大きなリバイバルを巻き起こす“呼吸の溜め”なのかもしれません。
最後にあえて言葉を尽くすなら、“荒野と口笛のRPG”が持つ可能性はまだ尽きていません。
アニバーサリーや海外市場の動き、ファンの継続的な盛り上がりなど、多くの要素が組み合わさることで、次なるワイルドアームズの物語はいつでも始まる準備ができるのです。
かつてPS1で荒野に心奪われた人も、いまクラシックカタログで初めて触れる人も、みんなが口笛の音色を耳にすれば、同じ“荒野の冒険心”に胸を高鳴らせられます。
そこにこそ、シリーズの本質的な魅力が宿っているといえるでしょう。
続編やリメイクの情報はないとはいえ、先にも述べたとおり“火は消えていない”。
むしろ、ファンが待ち焦がれているからこそ、いつか新たな形で荒野に口笛が響き渡る可能性は十分に残されています。
JRPGが再評価されている今、そんな奇跡の瞬間が突然訪れるかもしれません。
そのときには、きっと多くの人が
「待ってました!」
と荒野を駆け巡り、乾いた空気の中であの口笛にまた心を打たれることでしょう。
ぜひ、みなさんも気が向いたら過去のワイルドアームズ作品を遊び返して、砂埃の匂いとともに遠い旅の記憶をたどってみてください。
“いつでもここで待っている”
というシリーズの奥底のメッセージを、きっと感じ取れるはずです。
荒野は広大で、口笛を奏でる風はまだ吹き止んではいません。
かつての冒険者たちも、新たに荒野へ踏み出す人たちも、いずれ再び同じ地平で出会う――そんな日が来ることを信じて、この愛すべきシリーズをこれからも応援していきたいと思います。