ごきげんよう!
巷で「GTAの記事ならこの人」と噂の(自分で言う)ウェブライターです。
ええ、普段は真面目な顔して会社勤め、家に帰れば小学生男子の母、ついでに夫の両親と同居もこなす、どこにでもいる(?)40代主婦。
でもね、キーボードを握れば話は別。
今日は、あの超弩級ゲームシリーズ「グランド・セフト・オート」(GTA)の、そんじょそこらの解説じゃ物足りない、ディープで、ちょっとシュールで、でも本質を突く(はず!)ストーリー解説&考察をお届けしちゃいます。
GTA。
その名前を聞けば、多くの人が思い浮かべるのは、広大な街を自由に走り回り、やりたい放題できるクライムアクション、ですよね。
でもね、このシリーズの本当の凄みは、その骨太で、時に胸を締め付け、時に腹を抱えて笑える(ブラックな意味で)、濃密すぎる人間ドラマにあるんです。
野心、裏切り、友情、家族、そしてアメリカという国の、キラキラした表とドロドロした裏側。
この記事では、そんなGTAシリーズの全作品を、ゲームの中の時間の流れ、つまり「時系列順」に、初代から最新情報まで、情け容赦なく結末まで完全ネタバレで追いかけます。
ええ、容赦しませんよ?「ネタバレ? 望むところだわ!」という猛者の方、あるいは「もう全部クリアしたけど、改めて物語の繋がりを知りたい」という熱心なファンの方、大歓迎です。
さらに! ただストーリーをなぞるだけじゃ、私のライター魂が許さない。
各作品のテーマ性、キャラクターたちの心の叫び、ユニバースを超えた奇妙なリンク、そして開発元ロックスター・ゲームスが仕掛けた(であろう)意地悪な(?)メッセージまで、私なりの超俯瞰的&深掘り考察を、ユーモアとちょっぴりの毒を添えてお届けします。
長崎出身、東京在住歴ン十年の経験からくる(?)人間観察眼もフル活用しますよ!
あ、そうそう、GTAの物語を理解するには「ユニバース」って考え方が大事。
大きく分けて「2D」「3D」「HD」の3つがあって、基本的には別世界、パラレルワールドみたいなもの。
同じ名前の街が出てきても、前の世界の続きじゃないってこと。
ここ、テストに出ますよ(嘘)。
さあ、準備はいいですか? シートベルト締めて、心の準備もして。
これから始まるのは、栄光と破滅が渦巻く、GTAユニバースを巡る、ちょっと他では読めない禁断の旅。
後悔しても知りませんからね!
【超・重要】
この記事は、GTAシリーズ全作品のストーリーに関する、核心的なネタバレを、これでもか!というレベルで含んでいます。
未プレイ作品がある方、結末を知りたくない方は、今すぐブラウザバック推奨! マジで! 頼みますよ!
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1961年~1999年頃2Dユニバース:ドット絵の混沌、伝説はここから始まった
想像してみてください。
まだスマホもなければ、インターネットも普及していない時代。
ゲームセンターの喧騒か、家のブラウン管テレビの前で、私たちはドット絵のキャラクターがちょこまか動くのを見て熱狂していました。
GTAの歴史は、そんな時代に、見下ろし視点の2Dグラフィックから始まったのです。
今のリアルなグラフィックからすると、まるで原始時代のよう? いえいえ、とんでもない。
この混沌としたドット絵の世界にこそ、GTAの魂、そのDNAが凝縮されているんです。
後の作品のような複雑なストーリーはありませんが、自由という名の暴力、ブラックユーモア、そして「成り上がり」たいという人間の根源的な欲求は、既にこの頃からギラギラと輝いていました。
1961年:『グランド・セフト・オート・ロンドン1961』- ミニスカートとマフィア? 霧の都の裏稼業
時代と舞台: ビートルズがデビューする直前、1961年のロンドン。
シリーズ唯一の実在都市が舞台ってのが、今考えると逆に新鮮ですよね。
ミニスカートが流行りだし、街がなんとなく浮かれ始めてる、そんな時代の裏側を描きます。
初代GTAの無料追加パックでした。
太っ腹!
物語? それ美味しいの?: 主人公? いません。
選べるキャラクターの中から好きなチンピラを選んで、ロンドンの裏社会でミッションをこなすだけ。
銀行強盗、暗殺、車泥棒…メニューは豊富。
目的は「犯罪スコア」を稼ぐこと。
スコアが上がれば、裏社会でのランクも上がる。
ただそれだけ。
ストーリー? ドラマ? そんなものは後の時代の贅沢品です。
でも、これがGTAの原点。
何のしがらみもなく、ただひたすら「ワルいこと」をして成り上がる。
そのシンプルな快感が、ここにはありました。
結末は「俺、頑張った」感: ミッションこなしてスコア稼いで、「ふぅ、俺もロンドンのワルとして、ちょっとは名が売れたかな…」って自己満足に浸って終わり。
エンディングムービー? 感動の再会? ないない。
でも、それで良かったんです。
だって、自由だったから。
深読みコーナー: なぜロンドン? なぜ60年代? これはもう、開発者の趣味全開ですよね。
当時の英国ギャング映画とか、スパイ映画へのオマージュがプンプン匂います。
後のシリーズで見せる、映画や音楽への偏愛っぷりの片鱗が、既にここにあるわけです。
ある意味、一番ピュアなGTAだったのかもしれません。
1969年:『グランド・セフト・オート・ロンドン1969』- ヒッピーの隣でドンパチ騒ぎ
時代と舞台: 時代は少し進んで、ウッドストックが開催された1969年のロンドン。
フラワーパワー全開、愛と平和の時代…の、裏側! ヒッピーたちがラリってる隣で、ギャングたちは相変わらずドンパチやってます。
初代GTAの公式拡張パック第一弾。
物語はやっぱり…: 『1961』と基本は同じ。
プレイヤーは名もなき犯罪者。
ロンドンのギャングから依頼を受けて、護送車襲ったり、麻薬運んだり、敵対ギャング潰したり。
ミッション間の無線連絡とかで、ほんのりストーリーっぽいものが匂わされる程度。
結末も「俺、もっと頑張った」感: ミッションをこなしていくうちに、プレイヤーは腕利きのワルとして認められ、最終的にはロンドンの裏社会を牛耳るギャングのボスから「お前、なかなかやるじゃん」と認められ、組織内で高い地位をゲット。
ゲームとしてはここで終わり。
「やったぜ!」感はあるけど、やっぱり物語的なカタルシスは薄め。
でも、それでいい。
これがGTAだったんだから。
深読みコーナー: 60年代ロンドンという舞台設定は、後の架空都市中心のGTAとは一線を画しますよね。
この「現実と地続き感」が、逆に独特の魅力を生んでいた気がします。
後のシリーズで徹底的に架空の世界を作り込む方向性とは真逆のアプローチ。
でも、この「現実のパロディ」感もまた、GTAの重要な要素なんですよね。
1997年~1998年頃:『グランド・セフト・オート』(初代)- 三都物語、伝説の幕開け
舞台は架空都市へ: ここで大きな転換点! 舞台は架空の都市へ。
後のシリーズでお馴染みとなる、リバティーシティ(NYっぽい)、サンアンドレアス(カリフォルニアっぽい)、バイスシティ(マイアミっぽい)が、この初代で初めて登場します。
時代設定は、発売当時の現代(1997年頃)。
やることは変わらず?: いやいや、スケールがデカい! 3つの都市を股にかけて、成り上がりを目指します。
プレイヤーは相変わらず、複数の候補から選べる名もなき犯罪者。
各都市でミッションこなして、スコア稼いで、次の都市へ…という流れ。
結末は「三都制覇!」: 各都市で悪名を轟かせ、最終的にバイスシティをクリアすると、プレイヤーが3つの都市を牛耳る大物犯罪者になったことが示唆されて、スタッフロール。
やっぱり明確なエンディングストーリーはない。
でも、この「都市を渡り歩いて成り上がる」っていう構造が、後のシリーズの原型になったのは間違いありません。
ここからGTAの「世界」が始まったんです。
深読みコーナー: この初代GTAの時点で、後のシリーズの舞台となる3つの象徴的な都市が提示されていた、ってのが凄いですよね。
まるで壮大な物語の序章のよう。
開発者はこの時点で、既に未来のシリーズ展開を見据えていたんでしょうか? それとも偶然? いずれにせよ、この3都市には、アメリカという国の多様性と矛盾が象徴的に詰め込まれている気がします。
東海岸の金融都市、西海岸の自由な空気、南部のリゾート地…。
それぞれの都市が持つ個性が、後の物語に深みを与えていくことになります。
1999年頃(あるいは近未来):『グランド・セフト・オート2』- エニウェアシティとクロード・スピードの謎
時代と舞台はカオス: 2Dユニバース最後の作品。
舞台は「エニウェアシティ」という、なんだかよくわからない架空都市。
時代設定も「3週間後の未来」とか言われてて、1999年なのか、2013年なのか、意図的に曖昧。
この「どこでもない、いつでもない」感じが、逆に不気味で魅力的でした。
レトロフューチャーっていうんですか? 古臭いのに未来的、みたいな。
初の名前付き主人公!: ここでついに! 主人公に「クロード・スピード」という名前が付きました。
彼はプロの犯罪者で、とにかく寡黙。
7つの巨大ギャング(ザイバツとか懐かしい!)が覇権を争うこのカオスな街で、彼は生き残りと成功を目指します。
「評判システム」が導入されて、どっちのギャングに味方するかで状況が変わる、ちょっと戦略的な要素も加わりましたね。
結末は二つ?: ゲーム本編の結末は、やっぱり「クロードが街の頂点に立ったっぽい」感じでフワッと終わります。
スコアが表示されて終わり。
でもね、本作には実写のプロモーションフィルムがあって、そっちの結末が衝撃的! なんと、頂点に立ったクロードが、路上で敵のヒットマンに撃たれてあっさり死んじゃうんですよ! これが公式の結末じゃないとはいえ、「GTAってこういうゲームだよね」っていう、ブラックで容赦ないメッセージを感じさせました。
深読みコーナー(最重要!): さあ、出ました! クロード・スピードと『GTAIII』主人公クロードの関係! これ、GTAファンの間では永遠のテーマですよね。
『GTAIII』の主人公も名前はクロードで、やっぱり一言も喋らない。
おまけにロックスターが「IIIのクロードの苗字? Speedかもね(ニヤリ)」みたいなこと言うもんだから、もう!
これは同一人物なのか? それともパラレルワールドの別人? 公式な答えはないんです。
でもね、私はこう思うんです。
これはロックスター流の「神話作り」なんじゃないかって。
明確な答えを与えないことで、プレイヤーの想像力を掻き立て、キャラクターを伝説化する。
あるいは、GTAの世界では「クロード」という名前自体が、寡黙な復讐者、運命に翻弄されるアンチヒーローの「型」なのかもしれません。
そう考えると、ちょっとワクワクしません?
1984年~2001年3Dユニバース:ポリゴンの向こう側、物語が牙を剥く
さあ、ここからが本番! 2001年、『GTAIII』の登場で世界は変わりました。
カクカクしたポリゴンだけど、そこには確かに「世界」が広がっていた。
歩ける、走れる、車を盗める、そして物語に没入できる!
3Dユニバースは、単なるゲームの進化じゃなく、GTAが「物語」という名の翼を手に入れた瞬間でした。
1980年代から2000年代初頭のアメリカを舞台に、複数の作品が同じ世界観の中で繋がり、キャラクターたちは作品の枠を超えて生き(そして死に)、彼らの選択が次の物語へと波紋を広げていく。
ここからGTAは、忘れられないキャラクターと、心に深く刻まれるドラマを生み出していくことになります。
覚悟はいいですか? ここからは、血と硝煙と、そしてほんの少しの涙の匂いがしますよ。
1984年:『グランド・セフト・オート・バイスシティ・ストーリーズ』(VCS) - 太陽と裏切り、悲劇のフラグ乱立地帯
時代と舞台: 肩パッドとネオンの時代、1984年のバイスシティ(マイアミがモデル)。
3Dユニバースの物語は、ここから始まります。
主役はヴィクター・“ヴィク”・バンス。
後の『Vice City』に出てくるランス・バンスのお兄ちゃんです。
真面目な軍人がなぜ?: ヴィク、最初はなんと米軍兵士! しかも真面目! でも、病気の弟ピートの治療費と、もう一人のダメ弟ランスのせいで金に困り、悪い上官マルチネスにそそのかされて麻薬取引に手を出しちゃう。
…はい、お約束の罠ですね。
不名誉除隊させられ、裏社会へポイッ。
善良な市民が、いかにして悪の道に転がり落ちるか。
そのリアルな(?)プロセスが描かれます。
家族のため、ただそれだけだったのにねぇ…。
結末は一応ハッピー?: 裏社会で必死にもがき、弟ランスと合流し、なんだかんだで麻薬ビジネスでのし上がっていくヴィク。
でも心は常に曇り空。
最後は、自分を陥れたマルチネスと、街の麻薬王メンデス兄弟を壮絶な戦いの末にぶっ倒します! やったぜヴィク! そしてランスに「もう二度とドラッグには手を出すな!」と固く誓わせ、足を洗う決意をする。
…うん、ここで終われば、まあ、一種のハッピーエンドだったのかもしれない。
でもね、GTAはそんなに甘くない。
悲劇へのカウントダウン: このヴィクの決意、残念ながら守られませんでした。
野心家の弟ランスが、またしても危ない橋を渡ろうとするのを、優しいお兄ちゃんは見捨てられなかったのか…。
2年後の1986年、『GTA: Vice City』の冒頭、運命の麻薬取引現場にヴィクはいるんです。
そして、あっけなく射殺されてしまう。
ええ、3Dユニバース最初の主人公は、次の物語のオープニングで死体として登場するという、あまりにもあんまりな結末を迎えます。
ロックスター、鬼か! でも、この「報われなさ」こそが、GTAの魅力…いや、魔力なのかもしれません。
ヴィクの優しさが、彼の命取りになった。
なんとも皮肉な話です。
深読みコーナー: ヴィクの物語は、後のGTA主人公たちに共通するテーマ、「家族という呪縛」の原点かもしれません。
守りたい存在がいるからこそ、人は道を踏み外し、そして破滅していく。
また、彼の死は「主人公だからって安泰だと思うなよ?」という、ロックスターからプレイヤーへの挑戦状のようにも思えます。
GTAの世界では、死は常に隣り合わせ。
その緊張感が、物語に深みを与えているんですね。
ヴィク、安らかに…。
1986年:『グランド・セフト・オート・バイスシティ』(VC) - 帝国の夜明け、アロハシャツの伝説
時代と舞台: 80年代万歳! ネオンきらめく1986年のバイスシティ。
パステルカラーのスーツ、シンセポップ、そしてコカインの匂い(たぶん)。
この時代を完璧に再現した世界観は、もう、それだけで芸術品!
主人公は伝説の男: 主役はトミー・ベルセッティ! リバティーシティで15年のムショ暮らしを終えたばかりの、筋金入りのマフィア。
その名も"リバティーシティの虐殺者"! …なんか物騒な二つ名ですね。
でも、出所した彼を待っていたのは、ボスからの厄介払い同然の命令。
「バイスシティで麻薬取引してこい」。
ここから、トミーの、そしてバイスシティの伝説が始まります。
怒涛の成り上がり!: バイスシティ到着早々、麻薬取引は襲撃されて失敗。
取引相手のヴィク・バンスは死亡(!)。
トミーは金もブツも失い、絶体絶命。
でも、ここからがトミーの凄いところ。
彼は諦めない。
襲撃の黒幕を探し、失ったものを取り戻す過程で、兄を殺されたランス・バンスと手を組みます。
そして、街の麻薬王リカルド・ディアスを襲撃して殺害! 彼の豪邸と帝国を丸ごと乗っ取っちゃう! このスピード感、ハンパない!
帝国の完成、そして裏切り: ディアスを倒したトミーの野心は、もう誰にも止められません。
印刷所、タクシー会社、ナイトクラブ、ポルノ映画スタジオなど、様々なビジネスを手中に収め、街の裏社会を文字通り掌握していきます。
まさに『スカーフェイス』! でも、成功には妬みがつきもの。
故郷のボス、ソニー・フォレッリが、トミーの独立を許さず、大軍勢で攻めてきます。
そして、最終決戦の場で、信じていたはずの相棒、ランス・バンスが金と嫉妬心からトミーを裏切る! 「なんでだよランス!」と叫びたくなりますが、これがGTA。
友情なんて、砂上の楼閣なんです。
結末は血塗られた玉座: 激しい銃撃戦の末、トミーは裏切ったランスを冷徹に射殺。
そして、かつてのボスであり、自分を陥れようとしたソニー・フォレッリをも自らの手で葬り去ります。
全ての敵を排除し、文字通り血の海の上に、トミーはバイスシティの新たなキングとして君臨するのです。
エンディングで、生き残った弁護士ローゼンバーグと共に夜景を見下ろす彼の姿は、まさに帝王の風格。
彼の野望は完全に達成され、物語は最高潮で幕を閉じます。
深読みコーナー: トミー・ベルセッティは、GTA史上最も「成功した」主人公かもしれません。
彼は目的を達成し、頂点に立ち、そして(おそらく)その地位を守り抜いた。
彼の物語は、アメリカン・ドリームのダークサイド版、つまり「力こそ正義、欲しいものは奪い取れ」という価値観を体現しています。
でも、その成功の裏には、多くの血と裏切りがあったことも忘れてはいけません。
彼の孤独な玉座は、何を語りかけてくるのでしょうか? そして、彼が君臨し続けたとされるバイスシティは、その後どうなったのか…『GTA VI』で再び訪れる(であろう)バイスシティに、トミーの影は残っているのでしょうか? 気になりますよね!
1987年:サンアンドレアス州ロスサントス – 悲劇の引き金、逃亡者の烙印 (『GTA:SA』前日譚)
時間と場所: 物語は少し時間を遡り、1987年のロスサントス(L.A.がモデル)。
次に登場する超大作『GTA: San Andreas』の主人公、カール・“CJ”・ジョンソンの人生を狂わせた、悲しい出来事が起こります。
何があったのか: CJは当時、地元のストリートギャング「グローブストリート・ファミリーズ」の一員でした。
しかし、ある日、敵対ギャングとの抗争か襲撃事件で、彼の弟ブライアンが殺されてしまうのです。
心の傷と逃亡: 問題は、その時CJが現場にいながら弟を守れなかった(あるいは恐怖から逃げ出してしまった)と、兄でありギャングリーダーでもあるスウィートに激しく責められたこと。
「お前のせいだ!」と。
弟を失った悲しみと、兄からの拒絶。
ダブルパンチに耐えきれず、CJは故郷ロスサントスを捨て、東海岸のリバティーシティへと逃亡します。
家族も、仲間も、自分の居場所も、全てを置き去りにして。
物語への影響: この「弟の死」「兄からの非難」「故郷からの逃亡」という過去のトラウマは、CJの心に深い影を落とし、『San Andreas』の物語全体を貫く重要なテーマとなります。
彼が5年後に故郷へ戻る時、この過去とどう向き合い、乗り越えていくのか。
それが物語の核になっていくのです。
たった一つの出来事が、人生をここまで変えてしまう。
リアルですよね…。
1992年:『グランド・セフト・オート・サンアンドレアス』(SA) - ストリートの詩、家族と裏切りのグランド・セフト・叙事詩
時代と舞台: 90年代初頭、ヒップホップとギャングスタ・ラップが席巻するアメリカ西海岸。
架空の州「サンアンドレアス」が舞台です。
ロスサントス(L.A.)、サンフィエロ(S.F.)、ラスベンチュラス(Las Vegas)という個性的な3つの巨大都市と、それらを繋ぐ砂漠、田園、山々…そのスケールは、当時のゲームの常識をぶち破るものでした!
主人公CJ、故郷へ: 主人公は、5年前に故郷を捨てたカール・“CJ”・ジョンソン。
母ビバリーが殺害されたという報せを受け、彼は意を決してロスサントスへと戻ります。
しかし、兄スウィートは冷たく、かつての仲間だったビッグ・スモークやライダーとの間にも微妙な空気が流れます。
それでもCJは、弱体化した自分たちのギャング「グローブストリート・ファミリーズ」を再興させるため、再びストリートでの戦いに身を投じることを決意します。
これは、過去の罪と向き合い、家族と仲間との絆を取り戻す、CJの再生の物語です。
衝撃!まさかの裏切り: 序盤、CJたちは力を合わせ、少しずつファミリーの勢力を取り戻していきます。
兄との関係も修復の兆しが見え、「よし、これからだ!」と思った矢先…GTA史上、最もプレイヤーの心を抉ったであろう衝撃の裏切りが! なんと、CJが心の底から信頼していた幼馴染のビッグ・スモークとライダーが、敵対ギャングや悪徳警官テンペニーとグルだったのです! 金と権力のために仲間を売った二人。
その事実が明らかになるシーンは、何度見ても胸が締め付けられます…。
どん底からの反撃: この裏切りにより、兄スウィートは逮捕され、CJは悪徳警官テンペニーに脅され、ロスサントスから追放。
全てを失い、サンアンドレアス州の広大な大地を放浪することになります。
しかし、CJはここで終わりません! 妹の恋人シーザー、盲目のトライアドボス・ウージー、ヒッピーのトゥルース、謎の政府エージェント・トレノといった新たな仲間たちとの出会いを通じて、彼は心身ともに成長していきます。
裏切り者ライダーを討ち、麻薬シンジケートを壊滅させ、カジノ強盗を成功させ、そしてついに兄スウィートを救い出す! この中盤の展開は、まさに冒険活劇!
ロスサントス奪還、そして伝説へ: 兄と共にロスサントスへ帰還したCJ。
しかし街は麻薬に汚染され、バラスが支配していました。
折しも悪徳警官テンペニーの無罪判決に端を発するロスアンゼルス暴動(がモデル)が発生! 街中が炎に包まれる中、CJは最後の戦いに挑みます。
かつての親友ビッグ・スモークとの悲しい対決。
「何が悪かったんだ、CJ…?」 スモークの最期の言葉が重い…。
そして、宿敵テンペニーの自業自得の死。
全てのケリをつけ、CJとスウィートはグローブストリートを取り戻します。
エンディング、仲間たちが集うジョンソン家。
一時の平和。
でもCJは言う。
「ストリートに戻る時間だ」。
彼の戦いは終わらない。
彼は、ストリートの日常を守る「伝説」になったのです。
深読みコーナー: 『San Andreas』の物語は、単なるギャング抗争を超えた、普遍的なテーマに満ちています。
家族の絆とは何か? 友情とは? 裏切りとは? そして、人は過去を乗り越えて成長できるのか? CJの物語は、これらの問いに対する一つの答えを示してくれます。
また、90年代アメリカの社会問題(ギャング抗争、麻薬、警察の腐敗、人種間の緊張)を生々しく描き出した点も重要です。
ゲームでありながら、一つの時代を切り取ったドキュメンタリーのような側面も持っています。
そして忘れてはいけないのが、広大な世界に散りばめられた無数の都市伝説(ビッグフットとかUFOとか!)。
これらは物語の本筋とは関係ないけれど、『SA』の世界に、現実とは違うもう一つのレイヤー、つまり「神話性」を与えているように思えます。
だからこそ、このゲームは今でも多くの人を魅了し続けるのでしょうね。
CJ、あんた最高だよ!
1998年:『グランド・セフト・オート・リバティーシティ・ストーリーズ』(LCS) - マフィア社会の歯車、忠誠の値段
時代と舞台: 時は少し進んで1998年。
舞台は再び東海岸、リバティーシティへ。
『GTAIII』の3年前の世界です。
主役はトニー・“トニ”・シプリアーニ。
『GTAIII』ではマフィアの幹部として登場しますが、本作では彼がいかにしてその地位に上り詰めたかが描かれます。
帰ってきた男: トニは過去にマフィアの幹部を殺した(!)とかで、しばらく身を隠していましたが、ほとぼりが冷めた(?)ということでリバティーシティに帰還。
しかし、彼が所属するレオーネ・ファミリーは、他のマフィアファミリーやギャングとの抗争の真っ只中。
トニは、ボスのサルバトーレ・レオーネへの忠誠を示すため、汚れ仕事を引き受けることになります。
下っ端からのし上がる!: 最初は使い走りみたいな仕事ばかり。
でもトニは文句も言わず、黙々と任務をこなします。
敵対ファミリーの幹部を暗殺したり、縄張りを奪ったり、裏切り者を始末したり…。
その忠誠心と腕っぷしの強さが認められ、徐々にボスからの信頼を得ていきます。
途中、ボスの叔父が裏でファミリー乗っ取りを企んでいることが発覚! トニはこの陰謀を阻止し、さらにボスのピンチ(逮捕!)を大胆な救出作戦で救ったりもします。
まさに忠犬! いや、猛犬?
結末は幹部昇進!: これらの功績が認められ、トニはついにレオーネ・ファミリーの正式な幹部「メイドマン」の地位を手にします! エンディングでは、ボスと一緒にリバティーシティの夜景を見ながら「街は俺たちのものだ!」と勝利宣言。
よかったねトニ! …と言いたいところだけど、彼が忠誠を誓ったボス、サルバトーレって、『GTAIII』であんなことになる人なんですよねぇ…。
そう考えると、この結末もどこか物悲しい。
深読みコーナー: トニの物語は、「組織への忠誠」というテーマを強く描いています。
彼は自らの手を汚し、危険を顧みず、ただひたすらボスとファミリーのために尽くす。
その結果、彼は地位を得ますが、それは同時に、マフィアという非情な世界の歯車として、自らの意思を殺して生きることを意味するのかもしれません。
そして、本作で最も注目すべきはドナルド・ラブの最初の失踪! 彼が師匠を殺してその肉を食べた(!?)という疑惑と共に姿を消す…この謎、深すぎます。
GTA世界の闇を象徴するようなエピソードですよね。
2000年:『グランド・セフト・オート・アドバンス』(GTA Advance) - 携帯機の中の裏切り地獄
ハードと時代: ちょっと毛色が変わって、ゲームボーイアドバンスで発売された作品。
グラフィックは懐かしの2D見下ろし視点ですが、物語は3Dユニバース、『GTAIII』のわずか1年前(2000年頃)のリバティーシティが舞台です。
夢破れた男の復讐劇: 主人公はマイク。
相棒のヴィニーと一緒に裏稼業から足を洗い、新しい人生を始めるはずでした。
でも、出発直前にヴィニーが車の爆発で死んじゃう(ように見える)。
おまけに貯めた金も消えた! 怒りに燃えるマイクは、相棒の仇を討ち、金を取り戻すため、リバティーシティの裏社会を駆けずり回ります。
またしても裏切り!: 調査を進めるマイク。
頼れるのは爆弾屋のエイトボール(そう、『GTAIII』の彼!)くらい。
そして判明する衝撃の真実…死んだはずのヴィニーが生きていた! しかも、マイクを裏切って金を独り占めしようとしていた! もう、GTAの裏切り描写は徹底してますね! 怒り心頭のマイクはヴィニーを追い詰め、射殺! 復讐は果たします。
孤立無援の逃亡劇、そして…: でも、ヴィニーは死ぬ前に「お前はもう終わりだ」と呪いの言葉を。
その言葉通り、マイクは街中のギャングから命を狙われるハメに。
ヤーディーズのボス、キング・コートニー(彼も『GTAIII』に出てくる)とか、カルテルのボスとか、次々襲いかかってくる!
絶体絶命の中、マイクは必死に戦い抜きますが、その過程で、唯一の仲間だったエイトボールが警察に逮捕されてしまうのです! これが、『GTAIII』冒頭でエイトボールが囚人護送車に乗っている理由だったんですね! 繋がった!
結末は南米へ?: 仲間を失いながらも、マイクは最後の敵を倒し、プライベートジェットを奪ってリバティーシティからの脱出に成功! エンディングでは、彼がコロンビアあたりで新しい人生を始めることを匂わせて、物語は終わります。
生き延びたけど、失ったものも大きかった…。
深読みコーナー: マイナーな作品と思いきや、『GTAIII』の物語の「ミッシングリンク」を埋める、めちゃくちゃ重要な作品ですよね、これ。
エイトボール逮捕の謎が解けた時の「おおっ!」感は格別でした。
マイクという主人公は、後のシリーズには登場しませんが、彼の孤独な戦いがなければ、『GTAIII』の物語は始まらなかったかもしれない。
そう考えると、彼の存在は決して小さくありません。
裏社会の片隅で、名もなき男が必死に生きた証。
それがこの物語なのかもしれません。
2001年:『グランド・セフト・オートIII』(GTAIII) - 沈黙が語る復讐、雨のリバティーシティ・ノワール
時代と舞台: そして、ついにこの作品へ。
ゲームの歴史を変えた、2001年のリバティーシティ。
陰鬱な雨が降りしきる、コンクリートジャングル。
3Dユニバースの物語は、ここで一つの頂点を迎え、そして幕を下ろします。
主人公は喋らない男: 主人公はクロード。
そう、あのクロードです(たぶん)。
彼が寡黙なのは、ただの演出じゃない。
それは彼の内に秘めた、燃えるような復讐心の現れなのかもしれません。
物語は、彼が恋人であり共犯者でもあるカタリーナ(『SA』のあの女!)に、銀行強盗の真っ最中に裏切られ、撃たれ、全てを奪われるという、最悪のドン底から始まります。
復讐への道、血塗られた階段: 奇跡的に生き延び、刑務所護送中に脱走を果たしたクロード。
彼の目的はただ一つ、カタリーナへの復讐。
エイトボール(『Advance』で逮捕された彼!)と共に裏社会に足を踏み入れた彼は、レオーネ・ファミリー(トニやサルバトーレがいる)、ヤクザ(アスカやケンジがいる)など、様々な組織を利用し、時に裏切り、邪魔する者は容赦なく消しながら、カタリーナへと迫っていきます。
彼がリバティーシティの裏社会を駆け上がる様は、まるで血塗られた階段を登っていくかのよう。
途中、かつて世話になったサルバトーレ・レオーネをも自らの手で暗殺するという、非情な選択も迫られます。
復讐の果て、そして伝説の銃声: 多くの血を流し、クロードはついに宿敵カタリーナを追い詰めます。
彼女はヤクザのボス、アスカをも殺害し、さらにサルバトーレの妻マリアを人質に取るという悪あがき。
最後の決戦の舞台は巨大なダム。
クロードはカルテルの大軍勢を突破し、ヘリで逃げようとするカタリーナを、ロケットランチャーで木っ端微塵に! 復讐は、完遂されました。
結末は…?: 夜が明け、クロードは救出したマリアと共にダムを後にします。
そこでマリアが、マシンガンのように喋り始める。
「あなた最高! 私たちこれからどうする? ねえ聞いてるの!?」 …その瞬間、パン! という乾いた銃声。
画面はブラックアウト。
そして静かに流れるスタッフロール…。
え? 終わり? 何が起きたの? マリアは? クロードは? …このあまりにも有名で、あまりにも謎めいたエンディング。
3Dユニバースの物語は、この大きな「?」を残して、静かに幕を下ろしたのです。
深読みコーナー(最終章!): さあ、どう解釈します? このエンディング。
一番有名なのは「クロードがうるさいマリアを撃った(黙らせた)」説。
GTAらしいブラックユーモアですよね。
ロックスターも半分冗談で認めてるような節があるし。
でも、他の可能性だってある。
「近くで別の銃撃があった」「威嚇射撃だった」「マリアが何か致命的なことを口走った」…真実は、闇の中。
でも、この「わからなさ」こそが、『GTAIII』を伝説にしたのかもしれません。
プレイヤーに解釈を委ねる、究極のオープンエンディング。
そして、クロード自身のその後も謎。
「彼は死んでない」と公式は言うけれど、じゃあどこへ? 何をした? クロード・スピードとの関係は? ドナルド・ラブは結局どこへ消えたの? …3Dユニバースは、多くの謎と、尽きない考察の種を残して、私たちに別れを告げたのです。
でも、それでいい。
完璧な答えなんて、つまらないじゃないですか?
3Dユニバース総括:物語の爆発、忘れられないキャラクターたち
1984年のバイスシティのネオンから始まり、1992年のサンアンドレアスの広大な大地を経て、2001年のリバティーシティの冷たい雨で幕を閉じた3Dユニバース。
ヴィクの悲劇、トミーの帝国、CJの伝説、トニの忠誠、マイクの脱出、そしてクロードの復讐。
それぞれの物語は独立した輝きを放ちながらも、同じ世界、同じ時間軸の中で複雑に絡み合い、一つの巨大なタペストリーを織りなしました。
キャラクターたちは作品を越えて影響を与え合い、時に協力し、時に裏切り、そして多くが非業の死を遂げていきました。
この時代に描かれた生々しい暴力、深い人間ドラマ、そして強烈な個性を持つキャラクターたちは、GTAシリーズが単なるアクションゲームではなく、記憶に残る物語体験を提供する存在であることを決定づけました。
3Dユニバースの物語はここで一旦の区切りを迎え、ロックスター・ゲームスは次なる次元、HDユニバースへと歩を進めます。
ありがとう、3Dユニバース。
君たちがいたから、今のGTAがあるんだ。
2008年~現代HDユニバース:高解像度の現実、現代社会を抉る物語
そして時代はHD(ハイデフィニション)へ。
2008年、『GTAIV』の登場は、再びゲームの世界に衝撃を与えました。
まるで現実かと見紛うほどのリアルなグラフィック、物理演算、AI。
それは、ゲームが現実を模倣するだけでなく、現実そのものを批評し、映し出す鏡となり得ることを示した瞬間でした。
HDユニバースでは、舞台となる都市(リバティーシティ、ロスサントス)は3Dユニバースから名前こそ引き継いでいるものの、全く新しく、より緻密に、そして現代的に再構築されました。
物語もまた、現代社会が抱える複雑な問題(移民問題、格差社会、テロの脅威、ソーシャルメディアの功罪など)を色濃く反映し、登場人物たちの心理描写はより深く、より繊細に描かれます。
3Dユニバースとの直接的なストーリー上の繋がりはないけれど、GTAの魂である「自由」「暴力」「社会風刺」そして「人間の業」というテーマは、より鋭利な刃となって現代を切り裂いていくのです。
ここからは、高解像度で描かれる、私たちの生きる「今」と地続きの物語です。
2008年:『グランド・セフト・オートIV』(GTAIV) - 錆びついた自由の女神の下で、夢と現実の狭間
時代と舞台: リーマンショック前夜、2008年のリバティーシティ。
3Dユニバースのそれとは違う、もっとリアルで、もっと大きく、そしてどこか物悲しい雰囲気が漂う街。
主人公は夢見る男…と復讐者: 主役はニコ・ベリック。
東ヨーロッパ(紛争があった国)からの移民です。
彼がアメリカに来た理由は二つ。
一つは、従兄弟ローマンが語る「成功者の暮らし」への憧れ、いわゆるアメリカン・ドリーム。
もう一つは、故国の戦争中に仲間を裏切った男を見つけ出し、復讐すること。
希望と憎しみを胸に、彼は自由の女神が立つ街へと降り立ちます。
夢、破れる: でも、現実は甘くない。
ローマンの生活は、成功とは程遠い借金まみれの悲惨なもの。
ニコは落胆しながらも、唯一の家族であるローマンを守るため、そして復讐の標的を探すため、再び裏社会の汚い仕事に手を染めることになります。
ロシアンマフィア、イタリアンマフィア、怪しい政府機関…ニコは様々な勢力に利用され、翻弄されながら、この街の冷たさと、アメリカン・ドリームの虚しさを痛感していきます。
「自由の国」? 彼にとっては、見えない檻に過ぎなかったのかもしれません。
復讐の果ては…: ニコは執念で裏切り者、ダルコ・ブレヴィッチを見つけ出します。
しかし、目の前にいたのは、過去の罪に苦しみ、薬に溺れた哀れな男。
ニコは彼を殺すことも、見逃すこともできます。
どちらを選んでも、物語の結末は変わりません。
でも、この選択はプレイヤーに問いかけます。
「復讐とは何か?」と。
虚しいですよね、結局。
究極の選択、そして喪失 (正史はRevengeルート): 裏社会で生きるニコにも、ささやかな幸せがありました。
ローマンとの絆、そしてアイルランド系の女性ケイトとの純粋な愛。
でも、GTAは幸せを許してくれない。
物語のクライマックス、ニコは大きな選択を迫られます。
金のために宿敵ディミトリと手を組むか(Deal)、それとも信念を貫きディミトリに復讐するか(Revenge)。
正史とされるのはRevengeルート。
ニコは復讐を選び、ディミトリを討ち果たします。
しかし、その代償はあまりにも大きかった。
逆恨みした別のボス、ペゴリーノの襲撃によって、最愛の恋人ケイトが命を落としてしまうのです。
ニコはペゴリーノを殺し、復讐を完了させますが、彼の心には深い喪失感だけが残りました。
アメリカン・ドリームも、復讐も、結局は何ももたらさなかった。
それが、ニコがこの街で得た、あまりにも重い答えでした。
深読みコーナー: 『GTAIV』は、シリーズの中でも特に異質な、重く、暗く、そして深い物語です。
移民問題、戦争のトラウマ、資本主義社会の矛盾といったテーマを、ニコ・ベリックという一人の人間の視点を通して、痛々しいほどリアルに描き出しました。
「成功」が約束されない、むしろ喪失で終わる物語は、従来のGTAファンを戸惑わせたかもしれませんが、同時に多くのプレイヤーに強い感動と考察のきっかけを与えました。
ニコはGTA史上最も「人間らしい」主人公かもしれません。
彼の苦悩は、どこか私たちの日常のやるせなさとも繋がっている気がします。
そして、彼が最終的に裏社会から足を洗い、静かに生きている(らしい)という後日談は、ささやかながらも救いのように感じられます。
彼にはもう、銃ではなく、穏やかな日々が似合うはずですから。
2008年:『GTAIV: The Lost and Damned』(TLAD) - 革ジャンの下の脆さ、バイカーたちの鎮魂歌
視点変更! バイカーギャングの内情: 『GTAIV』と同じ時間、同じ街リバティーシティで起こっていた、もう一つのドラマ。
主役はバイカーギャング「ザ・ロストMC (The Lost Motorcycle Club)」のNo.2(当時)、ジョニー・クレビッツ。
ニコの物語とは180度違う、汗とオイルと革ジャンの匂いがする、荒々しいバイカーたちの世界を描きます。
自由という名の不自由: ジョニーは、ギャングのリーダー、ビリー(これがまた問題児)のやり方に疑問を感じつつも、「兄弟」の絆と掟に縛られています。
ビリーの暴走、ライバルギャングとの抗争、そしてあの「ダイヤモンド」騒動への関与…。
ジョニーはギャングのために尽くしますが、状況は悪化するばかり。
内部崩壊、そして裏切り: そしてついに、リーダーのビリーがジョニーたちを裏切るという最悪の事態が発生! ロストMCは仲間同士で殺し合う、泥沼の内部抗争へ。
ジョニーは親友を失いながらも、なんとか裏切り者のビリーを討ち果たします。
結末は灰燼: でも、勝利の代償はあまりにも大きかった。
ギャングは壊滅状態、仲間はほとんど死に、クラブハウスは燃え落ちる…。
エンディング、全てを失ったジョニーが、麻薬中毒の恋人アシュリーと共に当てもなく走り去る姿は、あまりにも物悲しい。
自由を求めたはずのバイカーが行き着いたのは、破滅と絶望だけでした。
そして、さらなる悲劇へ…: これだけでも十分に悲劇的なのに、ジョニーの物語はこれで終わりません。
5年後の『GTAV』冒頭、彼はサンアンドレアス州の荒野で、見る影もなく落ちぶれた姿で登場し、なんと『GTAV』の主人公の一人、トレバーに、文字通り踏み殺されてしまうのです! ええええ!? 前作主人公がそんな…!
この衝撃的すぎる展開は、ファンの間で大きな物議を醸しました。
「トレバーのヤバさを表現するため」という理由はわかるけど、あんまりじゃない? ロックスターさん! ジョニー…君のことは忘れないよ…。
深読みコーナー: TLADは、「自由」という言葉の裏に潜む「不自由さ」や「破滅」を描いた作品と言えるでしょう。
バイカーという存在は、社会のルールから外れた自由の象徴のように見えますが、実際にはギャングの掟や暴力の連鎖に縛られている。
ジョニーの悲劇的な末路は、その矛盾を突きつけてきます。
そして、『GTAV』での彼の死は、HDユニバースが過去の主人公にさえ容赦しない、非情な世界であることをプレイヤーに叩きつけました。
これは、物語の連続性を重視するファンにとっては辛い現実ですが、同時にGTA世界の厳しさをリアルに表現しているとも言えます。
合掌。
2008年:『GTAIV: The Ballad of Gay Tony』(TBoGT) - 夜の蝶と用心棒、ネオン街の奇跡?
今度はセレブなナイトライフ!: 『GTAIV』エピソード第二弾は、打って変わってキラキラした世界へ! リバティーシティの華やかなナイトクラブシーンが舞台です。
主人公はルイス・フェルナンド・ロペス。
彼は伝説的なクラブオーナー、“ゲイ”トニー・プリンス(ゲイだけど、それが名前の一部みたいになってる)の右腕であり、用心棒であり、親友でもある男。
トラブルだらけのボスを守れ!: トニーは才能あるけど、借金まみれで薬物依存、おまけにトラブルメーカー。
ルイスの仕事は、そんなダメダメなボスを守り、彼が引き起こす厄介事を解決すること。
本作は、このデコボココンビの、主従を超えた熱い(?)絆の物語です。
またまたダイヤモンド! そして派手なアクション!: やっぱりここでも「伝説のダイヤモンド」騒動に巻き込まれます。
というか、元々はトニーが借金返済のために仕入れたものだった! でも、ニコやジョニーたちのせいで(?)失っちゃう。
おまけに、ダイヤモンドの元の持ち主、凶悪なロシアンマフィア、ブルガーリンに命を狙われるハメに!
でも大丈夫! ルイスにはアラブの陽気な大富豪ユーセフっていう強力な(そして変な)味方がいる! 黄金のヘリとか戦車とか、もうやりたい放題! 本編やTLADのシリアスさとは真逆の、ド派手で爽快なアクションが満載です!
結末は…まさかのハッピーエンド!?: クライマックス、ブルガーリンに人質に取られたトニーを、ルイスが映画ばりのアクションで救出! 逃げるブルガーリンをミサイルでドカン! これで一件落着! クラブは失ったけど、二人は生き残り、絆を再確認。
そしてエンディング、道端であのダイヤモンドを拾って大金持ちになったホームレスとすれ違う! 皮肉! 最高!
全てが丸く収まったわけじゃないけど、GTAにしては珍しいくらい、明るく、前向きで、なんだかホッとする結末です。
たまにはこういうのもいいよね!
深読みコーナー: TBoGTは、GTAシリーズの持つ「エンターテイメント性」を前面に押し出した作品と言えるでしょう。
シリアスな物語もいいけど、時には頭を空っぽにして楽しめるド派手なアクションと、ハッピーエンド(風)の物語も欲しくなる。
そんなプレイヤーの気持ちに応えてくれたのが本作です。
ルイスとトニーの絆は、血生臭い裏社会の中の一筋の光のように感じられます。
そして、『GTAオンライン』でトニーが再登場し、今も元気にクラブ経営をしているという事実は、ファンにとって嬉しいサプライズでした。
ダイヤモンドを拾ったホームレスのその後も、ちょっと気になりますね(笑)。
2009年:『グランド・セフト・オート・チャイナタウンウォーズ』(CTW) - 見下ろし視点の裏切り劇、トライアドの後継者
携帯機でHDユニバース!: ニンテンドーDSとPSPで登場した、これまたユニークな作品。
グラフィックは昔懐かしい見下ろし視点。
でも、物語の舞台はHDユニバースの2009年リバティーシティです。
お坊ちゃま、裏社会へ: 主人公はホァン・リー。
香港のトライアド(中国系マフィア)のボスの、甘やかされて育った息子。
父が暗殺され、彼は遺言に従って、一族に伝わる宝刀「Yu Jian(玉剣)」をリバティーシティの叔父ケニーに届けに来ます。
この剣、トライアドの権力の象徴で、次のボスへの献上品でもある超重要アイテム。
いきなりピンチ! そして裏切り!: でも、空港に着いた途端、襲われて剣を奪われ、瀕死の状態に! 叔父ケニーからは「役立たず!」と罵倒され…。
ホァンは、奪われた剣を取り戻し、父の仇を討つため、そして一族に認められるため、リバティーシティ・トライアド内部のドロドロした跡目争いに巻き込まれていきます。
麻薬取引のミニゲーム(これがまた儲かる!)で資金を稼ぎながら、ホァンは少しずつ裏社会の現実を知り、成長していくのです。
まさかの黒幕…: 調査を進めるうち、ホァンは内部に裏切り者がいることを確信します。
そして、最後にたどり着いた真実は…なんと、一番頼りにしていた叔父のケニーが、父殺しと剣強奪の黒幕だった! 自分がボスになるために、兄を殺し、甥を利用していたという、まさに外道! もう、GTAの裏切りパターン、恐れ入ります…。
結末は新たなリーダーへ?: 真実を暴かれ、追い詰められたケニーは逮捕されます。
父の仇を討ち(間接的にだけど)、宝刀を取り戻し、組織の膿を出し切ったホァン。
エンディングでは、彼がリバティーシティ・トライアドの新たなリーダーになることを強く示唆して、物語は終わります。
世間知らずのお坊ちゃまが、裏切りと試練を経て、巨大組織のトップに立つ(かもしれない)。
これもまた、GTA流のダークな成り上がり物語ですね。
深読みコーナー: 見下ろし視点という制約の中で、ここまで骨太な裏切りと権力闘争の物語を描いたのは見事。
特に「叔父が黒幕」という展開は、プレイヤーの意表を突きました。
ホァンが本当にリーダーになったとして、あの若さで、あの巨大で腐敗した組織を率いていくのは、相当な困難が伴うはず。
彼のその後の苦労を想像すると、ちょっと同情しちゃいますね。
彼の物語はここで終わっていますが、HDユニバースのリバティーシティの裏社会に、大きな変化をもたらしたであろうことは間違いありません。
2013年:『グランド・セフト・オートV』(GTAV) - 三位一体の狂騒、ロスサントス狂詩曲
時代と舞台: そして、ついに現時点での最新ナンバリング作へ! 2013年のサンアンドレアス州。
太陽が降り注ぐ巨大都市ロスサントス(L.A.)と、その北に広がる荒涼としたブレイン郡が舞台です。
前代未聞! 主人公が3人!: 本作最大の特徴は、なんと言っても主人公が3人いること! しかも、プレイヤーは彼らの視点を自由に切り替えられる!
- マイケル・デサンタ: 過去に大強盗をやらかしたけど、仲間を裏切ってFIBと取引。今は死んだことにして、ロスサントスの豪邸で裕福だけど退屈な隠居生活を送る中年オヤジ。家庭は崩壊寸前、心は虚無感でいっぱい。
- フランクリン・クリントン: ストリート育ちの若き黒人。ギャングの世界から足を洗い、もっとデカい成功を掴みたいと願う野心家。今は怪しい車のディーラーで汚れ仕事中。
- トレバー・フィリップス: マイケルの元相棒。9年前の事件でマイケルは死んだと信じている、ガチでヤバい奴。ブレイン郡で麻薬や武器密売を営む、予測不能な狂気の塊。
出会い、再会、そして最悪のチーム結成: 物語は、フランクリンが仕事でマイケルの家に行ったことから始まります。
二人は奇妙な師弟関係を結び、マイケルは再び犯罪の世界へ…。
そして、彼らが起こした宝石店強盗のニュースが、トレバーの耳に! 死んだはずのマイケルが生きてる!? 激怒したトレバーがロスサントスに現れ、9年ぶりの再会は最悪の形に!
この全く噛み合わない3人が、FIBに脅されたり、自分たちの野望のためだったり、なんだかんだでチームを組んで、次々と危険なヤマに挑んでいくことになります。
連邦準備銀行の金塊強奪なんて、もうメチャクチャ!
それぞれのドラマ: 3人それぞれが抱える問題も見どころ。
マイケルは家族との関係修復と映画製作の夢。
トレバーは過去のトラウマと制御不能な暴力衝動、そしてマイケルへの愛憎。
フランクリンは二人の間で揺れ動きながらの成長と、ストリート時代の仲間との決別。
彼らの個人的なドラマが複雑に絡み合い、物語に深みを与えます。
最後の選択、そして「第三の道」 (正史!): 全てをやり遂げた(?)3人。
しかし、FIBと悪徳大富豪デビンは、彼らを危険視し、フランクリンに「マイケルかトレバー、どっちか殺せ」と非情な命令を下します。
ここでプレイヤーは究極の選択を迫られる!
- A: トレバーを殺す。
- B: マイケルを殺す。
- C: どっちも殺さねえ! 全員で反撃だ! (Deathwish / これが正史!)
そう、公式な正史は、フランクリンが仲間を裏切ることを拒否し、3人で協力して全ての敵をぶっ潰す「第三の道」ルート! これは本当に胸が熱くなる展開! ストレッチ、チェン、ヘインズ、そしてデビン…邪魔者は全員消し去り、3人は完全勝利!
結末はGTA史上最もハッピー!?: 全てのしがらみから解放された3人。
エンディングでは、夕陽をバックに、なんだかんだ言いながらも互いを認め合い、それぞれの道へ。
誰も死なず、友情(?)を確認し合う。
こんなに後味の良いエンディング、GTA史上初めてじゃない!? もちろん、彼らが聖人君子になったわけじゃないけど、それでも、この結末には救いがありました。
深読みコーナー: 『GTAV』は、GTAシリーズの集大成であり、同時に新たな方向性を示した作品と言えるでしょう。
3人の主人公システムは、物語に多層的な視点とダイナミズムをもたらしました。
そして、「仲間を裏切らない」という選択肢が正史となったことは、これまでのGTAの非情な世界観に、一石を投じたと言えるかもしれません。
もちろん、社会風刺の切れ味は健在。
拝金主義、セレブ文化、ソーシャルメディア依存、政府の腐敗…現代アメリカ(ひいては現代社会)の病理を、これでもかと皮肉たっぷりに描き出しています。
そして、忘れてはいけないのがマウント・チリアドの謎! UFO! ジェットパック! 壁画! この壮大な謎解きは、世界中のプレイヤーを熱狂させ、ゲームという枠を超えたコミュニティ現象を生み出しました。
これもまた、『GTAV』が伝説となった理由の一つですね。
HDユニバース総括:リアルな世界の痛みと、それでも続く物語
『GTAIV』の重苦しくも深遠な移民の物語から始まり、外伝作品でその世界観を多角的に描き、そして『GTAV』で3人の主人公が織りなす壮大な群像劇と、オンラインによる持続的な世界の拡張へと至ったHDユニバース。
テクノロジーの進化が可能にした圧倒的なリアリティの中で、現代社会が抱える矛盾、人間の複雑な感情、そしてGTAシリーズの根幹である自由と暴力、社会風刺といったテーマが、より鋭く、より巧みに描かれました。
3Dユニバースとは異なる歴史を歩みましたが、その根底に流れる精神は一貫しています。
そして今、HDユニバースの集大成とも言える『GTAV』の成功を経て、シリーズは次なる地平線、『GTA VI』へと向かっています。
2025年以降未来の地平線:『グランド・セフト・オートVI』への狂想曲
さあ、過去を巡る旅はここまで。
ここからは、未来の話をしましょう! 2023年12月、ついに! ついに! 『グランド・セフト・オートVI』(GTA VI) の公式トレーラーが公開され、世界中が沸騰しましたよね! 私も通勤電車の中で見て、思わず「キター!」って叫びそうになりましたよ(心の中で)。
リリースは2025年予定。
もう、指折り数えて待ってる状態です!
トレーラーから垣間見えた情報だけでも、期待は爆上がり!
- 舞台は再びバイスシティへ! 正確には、フロリダ州をモデルにした架空の州「レオナイダ州」の一部として、あのネオンきらめく罪の都が帰ってきます! しかも現代! どんな風に変わってるんだろう? トミーの影は…?
- 主人公は男女二人組!? ルシアという女性と、名前不明の男性。まるで「ボニー&クライド」!? シリーズ初の女性主人公(ちゃんと操作できる形では)というのも大きな話題。二人の関係性、どんなドラマが待っているのか…想像が膨らみます!
- 現代社会への風刺も健在! トレーラーには、SNSのライブ配信、バイラル動画、奇抜すぎる人々(フロリダ名物?)がてんこ盛り! 現代のインターネット文化や社会の歪みを、またロックスター節で痛烈に皮肉ってくれること間違いなし!
- グラフィックは異次元レベル!? もう、実写かと思うほどのリアルさ。水の表現、街のディテール、キャラクターの表情…技術の進歩って凄い!
これまでのシリーズが築き上げてきた壮大な歴史を踏まえると、『GTA VI』がどのような物語を紡ぎ、どのようなゲーム体験を提供してくれるのか。
新たな主人公たちは、何を求め、どんな運命を辿るのか? バイスシティという街は、どのように変貌しているのか? そして、過去作のキャラクターや出来事への言及はあるのか…? 想像は尽きません。
一つ確かなことは、『GTA VI』が再びゲーム業界、そしてエンターテイメントの世界に、計り知れないほどのインパクトを与えるであろうということ。
期待しかありません!
盗んだ車で走り出す、人生という名のオープンワールドおわりに
ふぅ…長旅お疲れ様でした! 2Dの混沌から、3Dの叙事詩、HDのリアリズム、そして未来への期待まで、GTAシリーズの壮大な物語を駆け足で(いや、かなりじっくり?)巡ってきました。
こうして振り返ると、GTAって本当に奥が深いですよね。
単なる「悪いことするゲーム」じゃない。
そこには、人間のどうしようもない業(ごう)や、社会の理不尽さ、そして、そんなクソみたいな世界でも確かに存在する、愛や友情や、ちっぽけな希望が描かれている。
だからこそ、私たちは登場人物に感情移入し、彼らの運命に一喜一憂し、そして自分の人生について、ちょっとだけ考えさせられたりするのかもしれません。
私だって、満員電車に揺られながら「ああ、今すぐこの電車ジャックして、どこか遠くへ…」なんて妄想しちゃうこと、ありますもん(しませんよ!絶対に!)。
ロックスターが仕掛ける数々の「謎」や、考察の余地を残すストーリーテリングも、このシリーズを特別なものにしている要因でしょう。
完璧な答えがないからこそ、私たちは想像力を働かせ、コミュニティで語り合い、GTAの世界をより深く愛していく。
まるで、解けないパズルを楽しむように。
ヴィクの悲劇、トミーの帝国、CJの伝説、ニコの苦悩、3バカトリオ(失礼!)の友情…そして、これから始まるであろうルシアたちの物語。
GTAサーガは、これからも私たちを魅了し、驚かせ、そして時には心を抉りながら、続いていくのでしょう。
この記事が、あなたのGTAライフを、ほんの少しでも豊かにするお手伝いができたなら、徹夜で書き上げた甲斐があったというものです。
さあ、コントローラーを握りますか? それとも、次なる情報(と有給休暇)を待ちますか? いずれにしても、人生という名のオープンワールドは、今日も明日も続いていきます。
どうせなら、GTAの主人公たちみたいに、ちょっとくらい破天荒に、自分らしく駆け抜けてやりましょうよ! ね?