ドンキーコングシリーズは、1981年のアーケード登場から現在に至るまで、いくつもの開発体制やハードを経て多彩な進化を遂げてきた作品群です。
とりわけ初期アーケード期の
暴れゴリラ vs マリオ
というイメージを思い浮かべると、その後の作品でドンキーコングが
“島を守るヒーロー”
へと転身を遂げた流れはなかなか壮大で、ちょっと笑いを誘うところもあります。
ここではドンキーコングシリーズの主な作品を時系列順に整理し、その結末までをネタバレ上等で語り尽くします。
合わせて、公式設定の曖昧さから生まれるファン考察の余地や、それがシリーズ全体にもたらす面白みについても取り上げながら、余すところなく掘り下げたいと思います。
今回はあえて少しユーモアを交えつつ、しかし押さえるべき点はしっかり押さえる真面目さも忘れずに、文字通りバナナの皮を敷き詰めるくらいの勢いで徹底解説していきます。
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アーケード時代に始まったマリオとドンキーコングの対立
アーケード期の概略
まず、1981年のアーケード『ドンキーコング』。
ここで登場したのは「ジャンプマン」という名のヒゲの男(後のマリオ)と、そのジャンプマンのガールフレンドをさらったゴリラです。
プレイ画面だけ見ると、言葉少なに“ゴリラが悪役で人間がヒーロー”という印象を受けがちですが、のちに判明する設定によれば、ドンキーコング側にも
「マリオにペット扱いされ、サーカスのように見世物にされていた」
という動機があったとされます。
もちろん当時のアーケード筐体を遊んだ人たちにとっては、そこまで深い背景を想像する余地は少なく、「ヒロイン救出アクション」として絶大な人気を博しました。
しかしこの一見単純なゲームが、後の壮大なドンキーコング(以下DK)シリーズへ繋がっているわけですから、人生何が起こるか分からないものですね。
ヒーローのつもりだったマリオが、ドンキーコングの立場からすれば
檻に入れて酷使していた元飼い主
にもなるという、双方の視点からのドラマが実は隠されていたわけです。
論理的かつ俯瞰的に見れば、
「悪役だとされる者にも事情はある」
という典型的パターンにも見えます。
1981年ドンキーコングの結末
ゲームの結末としては、マリオが樽を避けながら上段を目指し、足場を崩してドンキーコングを転落させ、ポーリーンを救うというシンプルなものです。
マリオの勝利に終わりますが、後々のシリーズを振り返ると
「いやいや、ドンキーコングは初代=クランキーコングなので、あの時の敗北が、クランキーコングの長い人生の始まりだったんだ…」
と思うと感慨深いものがあります。
1982年ドンキーコングJR.で生じた逆転構図
翌年リリースの『ドンキーコングJR.』では、
逆にドンキーコングがマリオに捕らえられてしまい、息子であるドンキーコングJR.が父を助ける
という構図になります。
プレイヤーキャラがJR.で、マリオが敵役。
その理由としては
ドンキーコングを再拘束した
という段階で、マリオが
捕まえたゴリラをさらに見世物にしようとしていた、あるいは復讐を食らって怒った
という設定が推測されます。
ともあれこのゲームではJR.が父を解放し、マリオは下に突き落とされてしまう結末を迎えます。
マリオが悪役
というと、後の任天堂キャラクター像と比較してなかなかインパクトが大きいですが、これは当時アーケードの続編として自然な流れだったのでしょう。
人類とゴリラの対立の第二ラウンドは
ドンキーコング親子の勝利
という形で終了します。
1983年ドンキーコング3とスタンリー
1983年には『ドンキーコング3』が登場します。
ここでは
マリオの代わりにスタンリーという虫取り少年が主人公
で、温室で花を守るためスプレーを噴きながらドンキーコングを追い上げる内容です。
シリーズ中でも異色のゲーム性であり、ストーリーの連続性があまり強調されません。
ドンキーコングを倒して追い払うラストでは、初代とJR.の関係を深掘りすることもなく終了。
いわば「ゴリラがあちこちで厄介者扱いされている時代」だった、と大枠では捉えられます。
これらアーケード期には、のちのシリーズほど明確な物語の背景は打ち出されていませんが、クランキーコングが若き日に引き起こした騒動として後から見ると、
荒れていた青年期のエピソード
とも形容できるかもしれません。
妙にロマンがありますよね。
「若かった頃は勢いで人間に逆らったり温室を荒らしたりしたけれど、歳をとって改心し、今は悪態をつきながらも孫を応援する」
と考えると、ゴリラ界も人間界も似たような人生劇場だなあという気になってきます。
初代ドンキーコング=クランキーコングという設定
アーケード版を若き日のドンキーコングとし、それが後にクランキーコングとして再登場する――この仕組みがシリーズ最大の特徴です。
レア社が制作した『スーパードンキーコング』(SFC)でその“世代交代”が本格的に示唆され、初代は老人ゴリラとして
「昔はわしが主役だったんじゃ!」
と不満交じりに語りまくる形になりました。
クランキーコングは、孫である2代目ドンキーコングが冒険に出るたびに、プレイヤーに対しても嫌みを言いながら助言するポジションを担い、シリーズにひと味違うユーモアをもたらしています。
論理的に考えるなら、
「自身が引き起こした騒動を棚に上げて、孫に皮肉を言う祖父」
という存在ですが、そこがまたクランキーらしい愛嬌に感じられるわけですね。
三部作スーパードンキーコングでの大躍進
1994年スーパードンキーコング
スーパーファミコン用ソフトとして登場した本作は、DKシリーズにおける一大転機でした。
グラフィックの美しさ(3Dレンダリング)と軽快な2Dアクションが話題となり、初代アーケード時代から大幅に様変わり。
ここでは「ドンキーコング(2代目)」が主人公、クランキーコングが初代として登場します。
ストーリーは単純明快で、
ドンキーコングの大切なバナナホードが何者かに盗まれた
という事件を発端に、相棒のディディーコングとともに島中を大冒険する流れです。
犯人はクレムリン軍団と呼ばれるワニ系キャラの集団で、その首領がキングクルール。
ところで、ゴリラが山ほど集めたバナナをワニが盗むって、論理的に考えるとワニにバナナが必要かはやや疑問ですが、まあゲーム世界の話なのでそこはスルー推奨。
とにかくクルールが悪巧みでバナナを盗んだという事実があり、ドンキーとディディーは奪われた大好物を取り戻そうと駆け回ります。
最終ステージで海賊船に乗り込み、いかにも悪そうなキングクルールと対決。
偽エンディング(クレジット)が流れたと思ったらクルールが復活攻撃するという名物フェイントに惑わされつつも倒すと、バナナホード奪還に成功して晴れてエンディングとなります。
クランキーコングは文句とアドバイスを繰り返す“おじいちゃん”。
そして、若い2代目ドンキー&ディディーは軽快に活躍。
初代(アーケード時代)とは別人なのかどうかもやもやした人もいたようですが、ここで大々的に
「クランキーこそ初代DKだ」
と匂わされ、世代交代が確定的になりました。
1995年スーパードンキーコング2 ディクシー&ディディー
2作目では、なんとドンキーコングがキングクルール(今度は“キャプテンクルール”の名乗り)にさらわれる事件が発生。
助けに行くのはディディーコングと、新キャラのディクシーコングです。
クランキーは
「お前らにできるのか?」
と批判しながらも、若い二人を見送る形。
プレイヤー的には今度ディディーが主役に格上げされ、さらにディクシーの髪の毛旋回アクションで新たなゲーム性が加わっています。
最終的に、クロコイル島を舞台に海賊船や遊園地、溶岩洞窟など多彩なステージを経由し、クルールに誘拐されたドンキーを救うため奮闘。
最後は飛行船でクルールと対決してドンキーを取り戻すものの、さらに隠し要素ではロストワールドでクルールが再起を図っており、島の核を暴走させて最終的にクロコイル島全体を沈める大破局を迎えます。
クルールは小船で逃亡し、ドンキーは完全に解放されて、ディディー&ディクシーが島を救った英雄となる結末に至ります。
本作は「ドンキーコングを救う」という熱い展開がプレイヤーに受け、前作をさらに上回る高評価を獲得。
クランキーコングは相変わらず
「大して大変でもないだろう」
みたいな憎まれ口を叩きますが、ディディーやディクシーの躍進ぶりはまさに目覚ましいものでした。
1995年ゲームボーイ版『ドンキーコングランド』
SFC版とほぼ同じ構成ですが、クランキーが
「お前らはスーパーファミコンの性能で助けられただけ!」
と難癖をつけ、わざわざゲームボーイ(8ビット相当)環境で冒険を再現させるストーリー仕立てになっています。
これはまたメタな設定で面白いですね。
「グラフィック性能の違いで活躍が左右されるのか?」
という懐疑を盛り込み、最後にはやはりクレムリン軍団を倒してバナナを守りきるという流れです。
1996年スーパードンキーコング3 謎のクレミス島
三部作の締めくくり。
北のクレミス島へ行ったドンキーとディディーが行方不明となり、ディクシーが赤ちゃんゴリラ「ディンキーコング(Kiddy Kong)」とタッグを組んで救出に向かいます。
今度の黒幕はキングクルールが科学者姿で名乗る「バロンクルール」および巨大ロボ“カオス”。
実はドンキーとディディーはカオスの動力源として利用されていました――というややSFチックな展開も含め、これまでとは違う雰囲気が漂う作品です。
最終的にはバロンクルールを倒してドンキー&ディディーを救出。
隠し要素をすべて集めるとロストワールド「クレマトア島」が出現し、潜水艦で逃げようとするクルールをバナナバード女王の力でタマゴの殻に閉じ込めるという完膚なきまでの制裁が下されます。
クランキーコングは相変わらずあまり前線には出ずにアドバイスだけ。
こうして三部作を締めくくる形で、「クレムリン軍団との長年の戦いに一応の終止符が打たれた」と見てとれます。
1999年ドンキーコング64
レア社制作の3Dアクションゲームで、NINTENDO64の拡張メモリパック必須という大がかりなタイトルです。
ここではキングクルールが
巨大兵器“ブラストマティック”を引っさげてDKアイランドを吹き飛ばそう
と企むため、ドンキーと仲間たちが阻止に乗り出します。
序盤で仲間(ディディー、ランキー、タイニー、チャンキー)が監禁され、黄金のバナナも奪われるなどクルールの策にハマりますが、ドンキーだけは初動で捕まっていないため1人スタート。
各ステージで仲間を解放しながら、膨大な収集要素をこなし、最終的には要塞に潜入して爆破兵器を止める展開です。
ラストバトルは妙にコミカルで“ボクシング形式”となり、コングファミリー5人が順番にクルールを痛めつけてKO。
ファンキーコングが砲撃でクルールを吹き飛ばして終了します。
クランキーコングはここでも毒舌で
「次はもっと難しくしろ」
と言わんばかりですが、プレイヤー視点ではシリーズ最大級のマップを探検する楽しさと、3Dアクションへの進化が印象的でした。
キングクルールとの確執はここで再度決着に見えましたが、その後の展開でクルールは姿を消すことが多くなっていきます。
ポストレア期スピンオフや別路線が花盛り
レア社がマイクロソフト傘下になった後、任天堂はさまざまな会社と協力しつつ、新しいドンキーコング作品やスピンオフを展開していきました。
クレムリン軍団やクルールが不在のタイトルも増え、一方で新しいアイデアや操作方法を取り入れる実験的作品が次々と生まれます。
2004年ドンキーコングジャングルビート
タル型コントローラ“タルコンガ”を叩いてキャラを操作するゲームキューブ用アクション。
一見して「音ゲー」と思いきや、横スクロールアクションで、ドンキーコングが異世界のジャングル各地を冒険しながらボスを倒してフルーツ王国を解放するという流れです。
従来のストーリーやクレムリン軍団は登場せず、ファンタジー度が大幅に増しています。
世界観的には他シリーズとほぼ繋がっていないので、パラレル的な立ち位置と見なされることが多いですが、ドンキーが豪快にコンボを決め、太鼓コントローラを叩く快感などプレイ感は高く評価されました。
『DK: キングオブスウィング』(2005年)、『DK: ジャングルクライマー』(2007年)
PAON社が開発したアクションパズルで、L/Rボタンで左右の手をつかんでは移動するという独特の操作を特色としています。
ストーリーは『キングオブスウィング』でバナナメダルをクルールが盗み、『ジャングルクライマー』では宇宙から来たバナナ星人ザナナブのクリスタルバナナをまたもクルールが盗むという、いわゆる小競り合い的内容。
ここでキングクルールが再登場する点が注目ですが、本編ほどの深刻な戦いではない印象があり、コミカルな外伝として捉えられています。
ドンキーが高難度のアクションでクルールを追いつめて倒す結末に至り、クレムリン軍団との因縁は細々と続いていることを伺わせます。
2007年ドンキーコング たるジェットレース
タル型ジェットで空を飛びながらレースするWii用ゲームです。
ドンキーやディディーのほか、なんとキングクルールやクリッター(クレムリン軍団の部下)まで一緒にレースに参加。
もはや敵同士というより、レーサー同士としてわちゃわちゃ競争しているだけ、というパーティゲーム色が強い作品。
ストーリー性は希薄で、時系列にも絡まないと考えるのが自然でしょう。
2003~2005年『ドンキーコンガ』シリーズ
ナムコ(現バンダイナムコ)との協業による音楽ゲームです。
タルコンガコントローラをポンポコ叩いて演奏し、ドンキーコングたちがノリノリで楽しんでいる、というだけの世界観。
物語らしい物語は無く、いわゆるパーティリズムゲーとして人気を博しました。
「バナナを奪われたら大騒ぎだけど、奪われてないときは音楽三昧で暮らしているんだろうなあ」
と想像すると、コングたちの休日っぽさがあるかもしれません。
Retro Studiosによる新時代
「スーパードンキーコング」三部作や64のような正統派2D/3Dアクションは長らく続編が途絶えていましたが、2010年代にアメリカのRetro Studiosが新たな2D路線作品を制作し、シリーズ本編が復活します。
2010年ドンキーコング リターンズ
Wii用ソフトで、スーパーファミコンの2Dアクションを現代に蘇らせた一作。
ここでは新しい敵「ティキタク族」が登場。
彼らは火山の噴火によって覚醒した木製の音楽的モンスター集団で、島の動物たちを催眠術で操り、ドンキーコングのバナナを大量に強奪します。
ところがドンキー自身は
“バナナへの執着”が強すぎて催眠が効かない
という面白い設定。
ディディーコングとともに怒涛のバナナ奪還ツアーが繰り広げられます。
クレムリン軍団は登場せず、ステージもSFC時代を踏襲したジャングルやトロッコなどをモチーフにしながら、火山エリアの最終面で「ティキトング」という巨大ボスと戦う、という流れ。
最後にドンキーコングが月を殴り飛ばして火山にぶつけるという派手な演出が話題を呼びました。
ストーリーは相当シンプルですが、「往年のDKCを現代にブラッシュアップした」感はファンにも受け、クランキーコングがショップ店員として登場している点もどことなく和みます。
2014年ドンキーコング トロピカルフリーズ
Wii U(のちSwitch)向けタイトルで、リターンズの続編。
今度は北の海から来たバイキング集団「スノーマッズ」が敵で、ドンキーコングアイランドを氷漬けにして乗っ取ります。
ドンキーやディディー、ディクシー、クランキーらは遠くの島へ飛ばされ、そこからまた大冒険して凍りついた故郷を取り戻すという筋書きです。
ロードフレドリックというセイウチ風の王様が最終ボスで、アイスドラゴンを操ったり氷を放って攻撃してくる中、ドンキーが力技で吹き飛ばし、奪った角笛を鳴らして氷を溶かすハッピーエンド。
クレムリン軍団はいないものの、ドンキーコングらしさ満載の2Dアクションとして完成度が高く、「南国対寒冷地」のコントラストや音楽の良さが際立ちます。
こうしてRetro Studiosの手で2D本編が復活し、新たな敵が連続して登場する形になりました。
「クレムリン軍団よ、いずこへ…?」
というファンの声もありますが、開発者コメントによれば「新鮮さを出したかった」とのこと。
ティキ族もスノーマッズも、シリーズ伝統の
“バナナが奪われて始まる騒動”
をベースにしている点は同じで、結果的にDKのアイデンティティを保ちつつも、新しい風を吹かせるのに成功したわけです。
マリオvs.ドンキーコングという並行世界
1994年ゲームボーイ版『ドンキーコング』
アーケード版をリメイク&拡張した本作では、前半がポーリーン救出のリメイク、後半はドンキーコングが再度逃げ回り、JR.も登場して父を助けるなどの展開が追加されました。
マリオが追いかけ、最終的にはドンキーコング親子を倒してポーリーンを救う形です。
この作品の路線が「マリオvs.ドンキーコング」へと受け継がれ、アーケード時代のようなライバル関係を現代に蘇らせるパラレル的シリーズが確立します。
2004年以降マリオvs.ドンキーコング
ミニマリオ(おもちゃ)を大量に盗んだドンキーコングをマリオが追いかけるという構図で、
『マリオvs.ドンキーコング2 ミニミニ大行進!』
『マリオvs.ドンキーコング ミニランド・メイヘム!』
なども共通して、ドンキーコングがポーリーンやミニマリオを巡ってトラブルを起こし、最後に和解する形で終わります。
こちらでは現役ドンキーが
わがままでおもちゃを奪う乱暴者
として描かれ、初代DKとの世代交代の話もほぼ出てきません。
本編とは異なるキャラ立ちのため、多くのファンは「パラレルワールド」という見方をしています。
明るくコミカルな騒動劇で、マリオとドンキーコングの関係を再びアーケードライクに楽しめるシリーズ、と割り切ると分かりやすいです。
とはいえ、
「同じ任天堂のドンキーがなぜこんなに性格違うの?」
と気になってしまう人もいるかもしれません。
その曖昧さを含めて、ドンキーコングの多元的な在り方が形成されている、と超俯瞰的に解釈すると面白いかもしれません。
時系列の曖昧さがもたらす魅力とファンの考察
ドンキーコングシリーズでは、公式で厳密な年表が提示されていないため、作品間のつながりや設定には多少の矛盾やパラレル要素があります。
例えば、
- ドンキーコングJR.はどう成長したのか?
「JR.が現役ドンキーコングにそのまま繋がるのか、クランキーの息子なのか孫なのか?」
など、作中で確たる説明がないため、ファンが推理を膨らませる余地があります。 - ヨッシーアイランドDSに出たベビィDK問題
マリオと同時代に赤ちゃんドンキーコングが存在するという設定が
「え、それだとクランキーとの世代交代論はどうなる?」
と矛盾するため、パラレルやお祭り要素だとみなす人が多いです。 - マリオvs.DKシリーズ
ドンキーコングがマリオの敵として再登場している世界を、本編とは別軸で考える方が自然、という声が支配的です。
こうした設定の曖昧さは、ある意味“突っ込みどころ満載”なのですが、同時にファンによる考察・推測を盛り上げる土壌にもなっています。
「クランキーがこんなにも毒舌なのは昔のトラウマのせいなのか?」
「キングクルールは船長や科学者などペルソナを変え続けるが、その真意は?」
といった想像をめぐらせる楽しさが、シリーズを一層奥深いものにしているわけです。
シリーズ全体の共通テーマバナナと仲間の絆
ストーリーラインを大きく俯瞰すると、ドンキーコングシリーズには何度も繰り返されるエッセンスが存在します。
それは
大事なバナナを奪われる
仲間(家族)が誘拐される
というピンチを救うため、コングたちが一丸となって立ち向かう――という王道パターンです。
いわば
“バナナ・ファミリー・冒険”
の三拍子がシリーズの根幹。
ゲーム的にはバナナを集める行為がスコア要素やライフ要素に直結し、ストーリー的にも
コングにとってバナナは命の糧
という最重要モチーフになります。
クレムリン軍団にしても、ティキ族にしても、スノーマッズにしても、とにかくバナナを奪うのが大好き(?)で、そこからドンキーコングの怒りが爆発する…という図式が成立するわけです。
さらにコングファミリーの絆も、プレイヤーキャラとして複数コングを操作したり、救出劇として仲間を助け出したりというゲームシステムに反映される点が特徴。
ディディーやディクシーが主役になる
クランキーも老体に鞭打って参戦する
チャンキーやタイニーといった新顔が登場
など、世代と個性が多岐にわたる家族/仲間関係が楽しく描かれます。
愛嬌ある動物キャラたちがワイワイ協力する姿は、どこかホームコメディ的な雰囲気を漂わせているとも言えます。
メタ要素と4次元的アプローチ
ドンキーコングシリーズを語るうえで外せないのは、クランキーコングをはじめとする“メタ発言”の数々です。
スーパードンキーコングのエンディングでスタッフロールへの言及をしたり、ゲーム画面を覗き込みながらプレイヤーを批評するような態度をとったり――これはゲーム内キャラクターが自分の存在がゲームであると認識しているかのような態度で、当時としては斬新な演出でした。
他にも、キングクルールが倒された振りをして偽スタッフロールを流すネタや、64でのラストがいきなりボクシング試合になるという突拍子もない展開など、ドンキーコングシリーズはときどきプレイヤーをくすっと笑わせる“外し”を仕込むのが大好きなようです。
これは、キャラクターたちが私たち人間の視点を意識しているかのようなメタ的な層を付与する効果もあります。
今後の展望
ドンキーコングはスマッシュブラザーズシリーズやマリオカートなどにも登場し、任天堂の顔キャラクターの一角として定着しました。
テーマパーク「スーパー・ニンテンドー・ワールド」ではドンキーコングエリアが拡張される予定があり、実寸大(?)のジャングルに入ってタルやバナナを目の前で見られる日は近いかもしれません。
今後、新作が出ればクレムリン軍団の復活があるのか、ティキ族やスノーマッズの再登場はあるのか、それともまったく新しい種族がバナナを奪いに来るのか――ファンの期待は尽きません。
とにかく言えるのは、「ドンキーコングはバナナを守り、仲間とともに冒険し、最後には豪快なフィニッシュを決める」王道スタイルはこれからも続くだろう、ということでしょう。
初代ドンキー(クランキー)が生きた時代からすれば、予想外すぎるほどの大出世振りです。
そんなこんなで、ドンキーコングシリーズは数十年にわたりバナナの皮をめくり続けてきた歴史と言えます。
ひとくちに「ゴリラとバナナのゲーム」と思うなかれ、その背景にある家族ドラマや世代交代、因縁の宿敵クルールや突拍子もない新敵などを見渡すと、まるで壮大なアニマルサーガを眺めるような楽しさがあります。
公式設定の甘さや矛盾も含めて、ファンの考察と愛情が注ぎ込まれ続けているのは、シリーズならではの懐の広さではないでしょうか。
総合まとめ
- 1981年『ドンキーコング』:マリオ(ジャンプマン)とゴリラの対決。ゴリラ側には「見世物にされていた」という動機があった。
- 1982年『ドンキーコングJR.』:マリオが父ドンキーを監禁、息子JR.が救出。マリオが逆に悪役となった珍しい作品。
- 1983年『ドンキーコング3』:温室を荒らすドンキーコングをスタンリーが撃退。ストーリー連続性は薄い。
- 初代=クランキーコングの設定:アーケード期のDKは後にクランキーとして登場し、孫の2代目ドンキーが現役ヒーローに。
- 『スーパードンキーコング』(1994年):2代目DKとディディーがバナナホードを取り戻す。キングクルールとの初対決。
- 『スーパードンキーコング2』(1995年):ドンキーが誘拐され、ディディー&ディクシーが救出。クロコイル島を沈めクルールを追放。
- 『スーパードンキーコング3』(1996年):ドンキー&ディディー行方不明、ディクシー&ディンキーが救出。バロンクルール(キングクルール)を捕獲。
- 『ドンキーコング64』(1999年):クルールの巨大兵器から島を守る。5人のコング+クランジーの活躍でクルールをボクシングKO。
- ポストRare期スピンオフ:
- 『ドンキーコングジャングルビート』:タルコンガ操作、異世界的冒険。
- 『DK:キングオブスウィング』『ジャングルクライマー』:クルールと再小競り合い。
- 『ドンキーコング たるジェットレース』:レースゲームで敵も味方も混ざってワイワイ。
- 『ドンキーコンガ』:音ゲー。ストーリーなし。
- Retro Studios期:
- 『ドンキーコング リターンズ』(2010年):ティキタク族がバナナを略奪、ドンキー&ディディーが奪還。
- 『ドンキーコング トロピカルフリーズ』(2014年):スノーマッズの侵略で島が氷漬け、ファミリー総出で追い返す。
- 並行世界:マリオvs.ドンキーコング:アーケード版に近い構図で、ドンキーがわがままにおもちゃを盗む→マリオが追う。
- 公式設定の曖昧さと考察:ベビィDKやJR.の行方、マリオvs.ドンキーコングとの整合性など、無数の議論がある。
- 共通テーマ:バナナを守る、仲間を救う、家族愛、悪役のバリエーション(キングクルール、ティキ、スノーマッズ)。
- メタ演出:クランキーの毒舌、偽スタッフロール、ボクシング最終戦など、プレイヤーを巻き込むユーモア満載。
- 今後の期待:テーマパークや新作展開、クレムリン軍団復活の可能性など。ドンキーコングがバナナを巡る冒険をやめることはおそらくないだろう。
ここまでで、ドンキーコングシリーズにおけるアーケード期から現代に至るストーリーや結末をくまなく網羅し、あわせてシリーズの魅力や曖昧な時系列が生む考察ポイントについて掘り下げてみました。
超論理的に、そして超俯瞰的に眺めるならば、マリオやドンキーコングの関係は長い時間をかけて変質していく不思議なドラマでもあり、各作品の物語を単純に時系列に当てはめるのが難しいからこそ、プレイヤーの想像を刺激してやまないとも言えます。
結局のところ、ドンキーコングシリーズの核となるのは
“バナナへの深い愛”と“仲間と協力して困難を乗り越える”
という要素。
ストーリー面では荒唐無稽なバナナ強奪戦が繰り返され、
「一体そんなに大量のバナナをどう消費しているの?」
と突っ込みたくもなりますが、それは逆に言えば何十年もファンを楽しませるだけのエネルギー源をバナナが持っているということかもしれません。
さらに、アーケード時代の若きドンキーがクランキーとして登場するという世代交代構造は、他の任天堂キャラ(マリオやカービィ、リンクなど)にないユニークさです。
そのおかげで
「初代ドンキーコングの動機は…」
「クランキーがアーケード期にこういう目に遭ったから今こうなった」
など、多層的なストーリー解釈が可能になり、今もなお語り草が絶えないのだと思います。
もしまだ未プレイの作品がある場合は、時系列に沿って遊ぶもよし、発売順に楽しむもよし、あるいは最新の『トロピカルフリーズ』から入って、後からレトロ作品にさかのぼるのも一興です。
どんな順番で遊んでも、クランキーの意地悪い嘲笑やキングクルールのズッコケぶり、ドンキーとディディーの豪快なアクションにはきっとワクワクさせられることでしょう。
「あんなゴリラとワニが戦ってどうするの?」
と突っ込みつつも、気づけば画面いっぱいのバナナを頬張るドンキーにほっこりしている自分がいるのではないでしょうか。
今後もシリーズが続けば、新たな勢力や設定が加わり、
「また時系列がややこしくなるじゃないか!」
と嘆きつつも、結局はファンが大喜びする展開が待っているだろうと期待せずにはいられません。
ドンキーコングシリーズは、どこかシュールでユーモラスな世界観を大事にしつつも、しっかりアクションゲームとしての骨太さを持ち続けてきました。
その両立がある限り、私たちがバナナを巡る物語に熱中する日は当分終わらないでしょう。
以上、ドンキーコングシリーズのストーリーを時系列順に見渡しながら、各作品の結末とシリーズ全体の特徴を超論理的かつ超俯瞰的にまとめました。
訪問者にとって必要な情報はすべて網羅したつもりですので、読み終えたあとはぜひご自身でシリーズに触れてみて、あのゴリラ&コングファミリーが繰り広げる壮大かつお茶目な冒険を存分に味わってみてください。
もし、その先で謎や違和感を覚えたら、それはもうファン考察の入り口です。
クランキーおじいちゃんが
「お前はよくやった」
と言ってくれるかもしれませんし、キングクルールが意外な姿で再び現れて、またバナナを盗むかもしれません。
そんな想像をめぐらせながら、バナナの皮を踏まないよう、でもバナナの甘さを堪能するようなDKライフを楽しんでいただけたら幸いです。